大阪王将で餃子定食を食べる話

会長

第1話餃子定食

 今日の昼食は餃子定食ぎょうざていしょくだ。


 私が餃子定食を食べる時は、大阪王将と決まっている。大阪王将は、全国的に展開されている「餃子の王将」とはまったく別の中華チェーン店であり、王将という名前こそ同じだがメニューも違えば看板も違う、そして何より餃子が違うのだ。


「餃子の王将」の餃子は皮がもちっとしており柔らかい。「大阪王将」の餃子はこんがりとキツネ色に焼かれており、とても香ばしいのだ。そして何より餃子に羽根がある。餃子のキツネ色面の外側を踊る、あのチリチリとした部分の事だ。


 餃子定食は、まず中央にドカンと置かれた12個の餃子。どれもしっかりと焼かれておりとてもうまそうだ。それと、脇を固めるごはん、中華スープ、漬物というシンプルなメニューだ。

 このシンプルさがたまらない。

 中央に置かれた12個の餃子が、「俺を食ってくれ!」と語りかけてくる。妄想だ。だが、それがいいのだ。


 餃子をつけるタレも重要だ。お酢派や醤油派もいるが、私はテーブルに置かれている普通のタレにラー油をたっぷりと入れた物が好きだ。餃子の油味とラー油の辛味が混ざり合ってとてもうまい。


 餃子を箸でカスカスと分けていく、この作業が楽しいのだ。

 分けた餃子を1つ摘み、タレにつける。餃子の面にしっかりとタレをつけたら、1度ごはんでバウンドさせて口の中に放り込む。餃子をごはんでバウンドさせることで、ごはんがタレで化粧される。化粧されたご飯をかき込むのがまたうまいのだ。


 餃子を噛むと、皮のモチッとした部分と、底面のカリッとした部分、両方の食感を同時に味わう事ができる。モチッ、カリッ。同時に味わった次の瞬間!餃子に閉じ込められていた肉汁が口の中に広がる。肉餡にくあんのうま味と、タレのしょっぱさ、ラー油の辛味が一体となって口の中で踊る。脳に幸せパルスが送られる。油ハッピーだ。とにかく餃子は最高だ。


 ここで慌ててごはんをかき込んではいけない。まだ我慢だ。タレで化粧されたごはんを見ながら想像を掻き立てる。この餃子とごはんが出会った時にどうなるのか。まだまだあせる必要はない、1つしか餃子を食べていないのだ。まだ11個もある。すごい。


 2個目の餃子をいただく。今回は半分ずつ食べるのだ、ごはんが入るスペースを用意しておかなければならない。餃子を半分食べる時、中の肉餡が口の中でホロリとほどける時がある。あれがまたうまいのだ。ホロリととけた肉餡がじっくりと口の中に広がって、口の中に花を咲かせるようだ。たまらない。


 半分の餃子を少し味わったら、ごはんを食べる。そして出会った2人を噛み締めるのだ。ありがとう餃子、ありがとうごはん。ありがとう餃子定食。

餃子とごはんを同時に食べる事で、またうま味が増すのだ。幸せだ。餃子が輝いている。油で。


 餃子に少し疲れたら中華スープだ。油に慣れた口をリセットしなければならない。この中華スープがまたうまいのだ。

私の行く店の中華スープは、溶き卵が浮いたとろみのあるものだ。しかし、味はあっさりとしていてうまい。油を堪能した口を休めてくれる名脇役だ。中華スープも餃子定食には欠かせない。


 口をリセットしたらまた餃子をいただく。新しい気持ちで餃子を味わうのだ。タレとラー油、皮と肉餡。そして全てを繋げるごはんを味わう。

餃子。ごはん。餃子。ごはん。餃子定食は最高だ。止まるわけがない。どんどん食べるのだ。気分は中華の皇帝だ。はるかな万里の長城の上を、餃子に乗って飛んでいくのだ。もちろん手にはごはん。餃子定食を食べながらの中国旅行だ。

 嘘だ、こんなこと考えた事も無い。食べる時は餃子に集中しているものだ。


 忘れてはならないものがある。漬物だ。この店は大根の酢漬けを出してくれる。ほどよく酸味の効いた、コリコリという食感が楽しい、とてもうまいものだ。この漬物も重要だ。餃子は強いのだ、中華スープだけでは口をリセットできなくなる時がある。そんな時この漬物を食べるのだ。言わばハーフタイムだ。あせるんじゃない。餃子に真摯でありつづけるのだ。そんなことを確認させてくれる漬物。これも餃子定食には欠かせない。


 至福の時間は終わった。12個あった餃子は全て腹の中だ。うまかった。餃子定食は最高だ。


 幸せをまったりとかみ締めていると、店員のおばちゃんがウーロン茶を持ってきてくれる。これがまたうまいのだ。

 熱々のウーロン茶が小ぶりな湯飲みに少しだけ。この按配がとてもいい。餃子定食の余韻をさらに引き立ててくれる。ウーロン茶を手にしながら大きく息をつく。うまかった。やはり餃子定食は最高だ。

 来週また食べに来よう。

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