第5話 つぼみをつけました

 さて、キャラはこんな感じでいいとして、問題はこの作品の核となる、キャノンボールシステムのこと。


「自分で思いついといて何だけど、かなり無茶な設定よのう……」


・照射された高密度の指向性電磁波を空間上に結節させて、“幽体”を閉じ込める檻にする


「そこまではいいとして、どうやってレースさせるんよ、これ……」

「そういや、他の幽体離脱関係の本に『幽体は、肉体から離れても銀の糸で肉体とつながってる』とか書いてあったなあ。何とかそれで説明つかないかなあ……無理か」

「要は、夢を見てるのと区別がつかない状態だろ? 物凄くリアルな夢を見てると思えばいい」

「そういえば、どっかの大学が『被験者が何の夢を見ているか、かなりの確度で解析できるシステムを開発した』って記事を読んだな……まあ、それはあらかじめ、どんな情報に対してどんな脳波が現れるか、個々人の登録が必要らしいが……」

「未来の話だし、脳の視覚野の信号を取り出してスクリーンに投影できることにしよう。だが幽体の見てる情報はどうやって肉体の大脳に返ってくるわけよ。そこの説明がまだついとらん……」

「まして、ナビコンとの双方向での情報のやり取りだし……」


「……まあ、作中でなんか新しい言葉をそれらしく使おうとして思いついた“電自我”っていうこけおどしの単語があるよな。『ネットは広大だわ……』の一言で、インターネットのなかを意識が自在に動けるっていうなら、電磁波の結節点に発生した電磁場内で、電磁的に再構成された意識の塊=“電自我”があってもいいじゃん」

「で、①その“電自我”を構成している電磁気の乱れを、電波を使ってモニタリングしてナビコンは幽体の視覚情報その他を取得でき、かつ、②プレイヤーの幽体は電磁的存在になっているので、ナビコンから電波で飛ばされた情報もそのまま理解できる、て事にしちゃおう。もうそれでいいや。文系の俺の脳みそじゃ、電磁波の性質についていくら調べたって、このへんがもう限界だよ……ぼくもう疲れたよ、パトラッシュ……」


「ええい、あとはヤケに頼もしい我が文章力で押し切ってくれる! 俺は学者じゃない、書き手だ! 司会に何か屁理屈叫ばせて、そういう世界だってことにしてやるわ!」

   

 てな具合に開き直りました。

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