第3話 物語のタネに手持ちの肥料と水をまく
ところで、私は十代の頃、けっこうなオカルトオタでした。
ええ、『ムー』なんて毎号買ってましたよ。我がソウルマガジンでしたがそれが何か。
ちなみに、今では立派に黒歴史です。リアルではそんな過去、誰にも知られないように日々努めています。
そんなわけで、その手の知識が頭のなかにはけっこう残っていました。
そしてふいに、私は思いだしたのです。ロバート・A・モンローという方のことを(Robert A. Monroe、作中で出てきたRAMテクニカル社の名前の元ネタです)。
この方はアメリカ人。もう亡くなられましたが、ある日とつぜん幽体離脱を体験し始めた方です。
幽体離脱というのは、肉体から魂がすっぽ抜けてふらふら放浪するというものです。わたしは経験ないのでよくわかりませんが。
彼は、もちろん最初はその体験をどう考えてよいかわからなかったのですが、やがてアメリカ人らしい合理主義でもって、自身の幽体離脱現象を科学的に解明しようとしました。
いろいろな科学者を巻き込んで数百回も実験を繰り返し、何冊かの本も出されています。
実際にそんなことが可能かどうかは置くとして、私もその本を読んでいました。オカルトオタにとってのエチケットのようなものですから。
そして、その本のなかの記述も、いくつか記憶に残っていました。
曰く、
「幽体は、会いたいと思った人のところへは一瞬で移動できる」
「幽体になって空中を飛んでいると、高圧電線に引き寄せられる感じがする。磁場の関係か?」
「上記にヒントを得て、試しに壁に高圧電流を流した部屋のなかで幽体離脱してみた。するといつもなら簡単に壁抜けできるのに、大きなゴムのボールのなかに閉じこめられたようになって、どうしても壁を抜けることができなかった。これを応用すれば、幽霊の捕獲が可能かもしれない」
それを思い出したとき、閃きました。
「瞬間移動するのではレースにならない。でも、電磁波で包んでやれば、幽体の移動速度を制限できるんじゃね?」
「生身でないなら、マッハ数十で移動も問題なくね?」
「これ、全く新しいレースゲームシステムとして、作品設定のコアにできるんじゃね?」
加えて、その前に書いた『闇を駆ける』が
「意気揚々とやってきた主人公が、ぼろぼろになって帰っていく」
という物語だったため、
「やっぱり挫折から復活する主人公が王道だってばよ! 次はそれでいくぞ!」
と決めていたこともあり、
「マッハ数十で行われるレースから足を洗った負け犬主人公が、ふたたびレースに復帰して勝つ」
という基本のストーリーラインと、キャノンボールシステムの大元の設定が出来上がりました。
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