第2話

卒業式から2週間ほど過ぎた。

「シャウラ、いつまで寝てるの?今日はギルド探しに行くんじゃないのー?」

「うーん、いま起きる…」

そう言って二度寝を始める。全くもってダメニートまっしぐらなシャウラ。

「こら、シャウラ!」

と声を荒らげ始めた母親に、うーんと生返事で返し、もそもそと布団から這い出る。

「ふぁぁ」

大きな欠伸をして、パジャマに手を突っ込んでお腹をかきながら階段を降りていく。

昨日は夜遅くまで調べ物をしていたせいで今日は寝不足だ。

「はい、朝ごはん。」

「うーん…」

テレビをつけてもふもふとご飯を咀嚼する。

今日も今日とて朝のニュースは辛気臭い。

また神隠しがあったらしい。

またか、と昨日調べた事と照らし合わせながらニュースを聞く。

次のニュースです、3月27日に予定されている首脳会談では、吸血種、有角種、有翼種の不参加が――

「ふぅん、なるほど」

「ん?何か言った?」

いや、何もないと軽く返事をしてお茶碗とお箸をダイニングに置き、部屋に戻る

「あ、そういえば本屋から電話あったよ。本が届いたって」

去り際に母親の声がする。

「はーい」

ギルドを探すついでに本屋に行こうか。

そんなことを考えながら階段を上る。

机に向かって昨日調べたノートを見返す。

[神隠し事件]

〇被害者の共通点、完全感覚GOLDENのプレイヤー

〇完全感覚GOLDENは生産中止

〇神隠しから帰ってきた人は遺体もしくは記憶喪失


「うーん、明らかに情報が少なすぎるな。隠蔽しているとしか考えられない。」


「シャウラー、ギルド探しに行くならここに紹介状置いとくよ。」

「ありがとう」

取り敢えずギルドを探しに行くか、と席を立って着替える。


「いってきます」


電車で2駅のその場所。

えっと、地図の通りだとこの辺り…

「これじゃないよな」

シャウラの目の前にはツタがビッシリと絡まった、まるでアフロのような居酒屋。オルレーヌ。その看板の下に小さくジュリヴァギルド紹介所と書かれている。

「ここなのか…」

カランカランと風情のあるドアを開ける。

「いらっしゃい」

色黒の厳ついスキンヘッドのおっちゃんが出てきた。

「よう、坊主、ここはにーちゃんみたいな奴が来る場所じゃねぇぜ」

と親指で後ろをクイッと指さす。

確かに、おっちゃんと同じような強面の人達がシャウラを睨んでいる。

「あ、えっと、これ…」

とコミュ障を発揮しながら母親に貰った紹介状を見せる。

「ほう、坊主、今いくつだ?」

「えと、今16です。」

「へぇ16ね。学校は行かなくていいのか?」

「あ、はい、学校はこの間卒業しました」

「高校は行かねぇのか?」

「この間大学校を卒業しまして」

「大学校!?どこのだ?」

「ヒバリ学園です」

「ほう、あの進学校をね。」

そう言ってシャウラをジロジロと見てくる。

「あ、そうか、ジュリヴァに用があるんだったな。ジュリヴァはそこのエレベーターを降りたところだ。頑張れよ坊主」

ニカっと笑うおっちゃんに

「はい、ありがとうございます!」

と笑顔で応える。


エレベーターを降りると

「いらっしゃいませ」

と今度は綺麗なお姉さんが迎えてくれる。

「あれ?シャウラ君?」

と、唐突に名前が呼ばれる。声の主を探すシャウラ。

「こっちだよ。いらっしゃい、シャウラ君」

とカウンターで手を振る、活発そうなお姉さん。

「あ、ナミさん。こんにちは」

「どうも。リサは元気?」

ナミはシャウラの母親(リサ)の友達である。

「はい。お陰様で」

そう言うシャウラを見ながら、他人行儀だなぁとナミは苦笑いする。

「で、ギルドを探しに来たの?」

「はい」

「へぇ、じゃあ学校は卒業出来たんだ」

「はい。お陰様で」

やっぱり他人行儀なシャウラ。

「よかったじゃん。ギルドを探すなら、書類を用意するから、空いてる席に座っといて」

そう言ってナミは店の奥に消えていく。


まぁ、この辺に座っとくかと、適当に座る。

ナミさんはよく俺を他人行儀だと言う。でも、そんなに付き合いが長くない人にタメ語で喋るのはなぁ…

などと思いながらナミを待つ。

「お待たせ、じゃあこれ書いてね」

と書類を机に置いてシャウラの正面に座る。

「はい」

この書類は会員登録のものだ。

氏名や性別、種族、生年月日、住所、電話番号など、何処の会員登録でも書かされる内容。

そして、利用規約として、紹介させていただいたギルド、クエスト中の怪我、死亡事故は一切責任を負いません。と書かれている。


「書けた?」

「はい、書けました」

ちょうどいいタイミングで声を掛けられる。

「おっけー、じゃあちょっと待っててね」

と、今書いた書類を持ってまた店の奥に消える。

5分程して、

「お待たせ、はいこれ」

と渡されたのは白いカード

「これは会員証ね、これがあればどのギルド紹介所でもギルド紹介やクエスト受注ができるからね」

「はい、ありがとうございます」

「今日はギルドを探すんだよね」

「はい」

「じゃあ、あっちの掲示板か、パソコンで入りたいギルドを探してきてね」

と指さす先には大きなコルクボードに所狭しと貼られたギルドメンバー募集の紙と3台のパソコンがあった。

「入りたいギルドがあったらこのかみにギルド番号書いてフロントに出してね、じゃあまた後で」

と軽く手を振って別のお客さんの所へ行ってしまうナミ。


取り敢えずいろんなギルドを見てみようと掲示板の前に立つシャウラ。

うーん…どれがいいんだろう…

と重なっている募集の紙をペラペラと捲りながら募集要項を読む。

すると、他の募集の紙に殆どが隠れてしまっている紙を見つけた。

「ん?これも募集の紙か?」

と他の紙のピンを外し少し横にずらす。


――面白い人募集


隠れていた紙には、そう書かれていた。

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