第13話

雲の彼方から薄墨のような夜が近づき…

オレンジ色の風景に浸透していくように暗く広がる…


優吾「いつの間にかこんなに遅くなってたのか」


佳穂「みんなそろそろお兄ちゃんのいるログハウスに行こうか?」


彰美「そうですね、今日はすっごい楽しかった」


優子「楽しいのはまだまだこれからっすよー」


大平が遅くなって坂から滑って降りてきた。

途中でいきなりジャンプして、両手と両足を広げた。


昌幸「どうよ!さっきのスプレッド・イーグル!」


少なくなった周りのgalleryギャラリーが拍手する。


佳穂「大平君ってスキー上手いんだね」


昌幸「ふっ、惚れんなよ。予約は満室だゼ」


優吾「危ないから、そういうことはもうやめろよ。

何かあった後じゃ遅いんだぞ、お母さんが悲しむぞ」


昌幸「何、非行に走った少年諭す刑事みたいなセリフほざいてんだYO☆」


彰美ちゃん達が楽しそうに笑っていた…


スキーを終えた俺たちは、

久一さんのいるログハウスに佳穂の案内で向かった。


歩きながらの雑談で大平が熱弁していた…

カメラ以外で熱くなれるものが、

他にあるのが羨ましかった…


昌幸「いいか!賄賂を貰ってパトカーでドーナツばかり食べてる優吾巡査…

さっきのはな、一見簡単なように見えて…

なかなか技術がいる trickトリック 何だゾ☆」


優吾「…刑事じゃなかったのか?」



彰美「あはははっ!降格されちゃいましたね!」


佳穂さんが、あっ、そうだよね!って大平の話に入る。


佳穂「きちんと前傾や後傾なく飛ばないといけないし、

重心の位置に気をつけないと、

ジャンプの高さを感じられないし、

足も広げるタイミングも間違っちゃうんだよね。

スプレッド・イーグルは

フリーライドの一番初歩的な練習だけど、

初歩が上手い人は上達も早いし凄いんだよね」


優子「おおっ!詳しいですねー」


ああ、そういえば言っていなかった…

佳穂は自分からそういうことは言わないしな…


優吾「佳穂は高校時代にハーフパイプのスノーボーダーとして、

オリンピック出場候補だったんだよ」


彰美「えっ!凄い!道理で上手いはずだよー。…あっ、上手です」


佳穂「敬語なんて無理に使わなくて良いですよ。

それに長く続けても…記録が伸び悩んで辛いことばかりで止めちゃったけどね。

それで良かったと思ってるよ」


優子「な、なんと佳穂さんのお兄さんも凄いけど、

佳穂さんも凄い!優吾さんって凄い知り合い多いですねー」


昌幸「つーか、みんなスキー上手いんだな…

俺と佳穂さんと久一さんクラスじゃないけどさ」


大平がちょっと天狗になってるが、そっとしておこう…


優子「ひどいなー私もそれなりにやってたっすよー」


昌幸「まー、優子ちゃんも後2、3年滑ればだいぶ良くなるよ」


彰美「あははっ!調子乗りすぎー面白いなー」


昌幸「優吾君、君はスキーではやればできる子なんだから精進しなさい」


肩をポンポン叩いて、ドヤ顔だが気にしないことにした…

でも、一番地味だったかもしれない…

しかし、少し悔しい…


優吾「………」


彰美「あ、優吾さん怒ってる?」


優子「ふふっ、可愛いですね♪」


…俺はひたすら思ってた…

目の前で煽ってくる大平がいる…


安っぽい挑発…


売り言葉でに買い言葉でbattleバトルは始まる…

だがそれは馴れ合いの儀式みたいなもの…


simpleシンプルな理由…


目の前で吠えた奴の言葉に…


ムキになるのは…

俺が子供だという…licenseライセンス…



佳穂「あ、ここだよ」


話題を変えるように佳穂が指差した先は、

二階建ての大きなログハウスだった。


雪が降り、吹雪が強くなってきた頃に着いたので、

俺達はさっさとログハウスに入った…


広い玄関に入り、雪を落として板を置くと…

風呂に入ったのか、着替えて首にタオルを巻いた久一さんが来た。


優吾「おじゃまします」


久一「やあ、外は寒かったでしょ?

奥にお風呂があるから入ってきなよ。

それに外は凄い吹雪だし、

今日はここで泊まっていきなよ。

女子の服も余ってるから人数分あるよ」


佳穂「私達から入ってもいいかな?」


昌幸「もちろんLadiesfirstレディファーストだゼ」


優吾「ゆっくり入っていきなよ…」


玄関前の矩形くけいの小窓から夜の景色を見る…

雪が降り、吹雪が激しくなった…


久一「着替えはあるかい?

あ、日帰りの予定だったんだっけ?

オーナーには言ってあるから料金は大丈夫だよ。

今の服は洗濯機と乾燥機がある部屋があるからそこに入れて来なよ」


昌幸「何から何まで…すまねーっす!」


久一「まぁ、みんなの着替えは実は佳穂が用意していたんだ」


優吾「そうだったんですか?」


久一「みんなここに来るだろうって佳穂が予想してたんだ。

もしかしたら話が弾んで泊まることがあるかもしれないって…

大当たりだったみたいだね」


居間に入ると


大学時代の久一さんの言っていた後輩が3人いた…

女性が二人と男性が一人…


男の人は俺と同い年で野球部の後輩らしい。

大学時代に久一さんと仲が良かったらしく、

帰ってきたことで付いてきたらしい。


2人の女性は年下の女性で茶髪のショーヘアーの子と

黒髪のポニーテールの子だった…

後輩の紹介で久一さんに会いに来たらしい…


久一さんが昔からモテるのは相変わらずだった…


久一「はは、着替えなんだが…全員ジャージになってしまったよ。

すまない、何かないかなって思ったらこれくらいしかなくて…」


優吾「いえ、お気持ちだけでも嬉しいですよ」


昌幸「そうですよ!良いじゃないですか、ジャージ!

ログハウスに全員ジャージってのも、

修学旅行みたいで面白そうっす」



みんながお風呂から上がり、

9人全員がジャージの奇妙で面白いひと時がログハウスで流れた…


女子で冷蔵庫から料理を作り、豪華な夕食が出来上がった…


しっかりビールとワインも置いてあり、

みんなで楽しく飲んだ…

ちなみに彰美ちゃんはグレープフルーツになった。


久一さんと大平と男子の後輩は馬が合うのか楽しそうだった。

俺も話に何だかんだで乗っていて、


女子は女子で華やかだった…


大平も後輩の女子二人にビールが回って、ちょっと、

いや、かなり悪ノリしている…


昌幸「へー、真由ちゃんってテニスやってるんだ!

スコート姿も見てみたかったなー」


後輩女子2「真由、大平さん酔ってるから真面目に答えちゃだめだよ」


昌幸「そんあ、かとは、ねいっすよー、

俺写真でー、綺麗な、一枚をー撮るんダゾ☆」


由香と呼ばれた後輩「あの…呂律回ってないみたいなんで、お水どうぞ…

あと私、彼氏いますんで、そういうのは…」


男の後輩「あ、ちなみに俺が彼氏っす」


昌幸「なにー、いけしゃあしゃあとぉ!本村殿!裏切りでゴワスかぁ!」


彰美「何故に時代劇調なんですか?」


久一「はい、お待たせ…タンドリーチキン出来たよ」


優子「ありがとうございます」


佳穂「お兄ちゃんも飲みなよ」


優吾「あいつ、合コンのノリ以上に酷い酔い方しているな…」


彰美「合コンしたことあるんですか?

東京に行くと優吾さんも変わっちゃいますねー」


楽しい時間だった…



昌幸「こんや じゅうに じ だれかが 王様ゲームを提案するー」


優子「懐かしいネタっすねー、最後の方勝手にアレンジされてるしー」


佳穂「えっ!じゃあ割り箸持ってこようか?」 


久一「はは、真に受けちゃ駄目だよ佳穂」


いや、ああなった時のあいつはマジでやりそうなんだけどな…


優吾「こらこら無茶ぶりな提案すんなよ」


昌幸「何だ?優吾ー、

俺が可愛い子たちとtalkingトーキングってるときに何用?」


優吾「用なんかない…時間の空白を埋めに来ただけさ…」


昌幸「んもー優吾ちゃん呼びかけといて理不尽対応で酷いのなー」


みんな笑って…しばらくそこで時間を過ごした…



久一「そろそろ女性陣の肌にも悪い時間だし、部屋に戻ろうか?」


女子の後輩2人が女性陣に部屋を案内してくれた。

彰美ちゃんは先に部屋で寝るそうだ…


佳穂と優子は楽しく話しながら食器洗いを行ない…

俺と後輩くんと久一さんはテーブルを片付けた…


女性陣は先に部屋に戻らせた。


優子さんと佳穂さんが部屋に戻るときに、

冷蔵庫から、こっそりとビールとおつまみを持って行ったので…

久一さんは苦笑いだった…


男の後輩と二回戦をやろうと騒ぐので片付けが終わって、

男同士の飲み会になった…

女子がいないことに今更気が付いた大平は不満タラタラだった…


昌幸「ねんがんの にかいせん が はじまらないぞ!」


優吾「男同士でよかったな…

お前、あのまま飲んでたら真由さんに手を出しそうだったしさ」


後輩男「マジですか!もしそうなったら、俺の真由を守るために、

昌幸さんころしてでもうばいとるっすよ」


昌幸「えー、ダイレクトにリアルソウルスティールとはやめてほしいっすよ!

俺の流し切りが完全に入る前にLP0になるじゃないっすか…

アバロンの平和は俺が守るんだからさ」


作品のナンバリング違うし…そのセリフだと死亡するし…


久一「何の話なんだい?」


優吾「ゲームの話で例えてるんですよ…ほっときましょ」


久一「ゲームかぁ、僕は野球ばかりしてたからなー」


優吾「stoicストイックでカッコいいですよ」


そう言っているとメールが来ていた、優子さんからだ…


おやすみ優吾君。

今日はあんまり話せなかったけど、凄く楽しかったよ。

明日の夕方でいいよ大事な話があるんだ


大事な話…なんだろう…


久一「そうだ!冷蔵庫にまだつまみとかがあるんだ、食べるかい?」


昌幸「さっすが久一さん!

俺たちに出来ない追加イベントをさわやかに提案する!

そこに痺れる!憧れるぅ!」


後輩男「最高っすよ!ツーアウト満塁サヨナラホームラン逆転勝ちっすね!」


二人とも仲が良くなってる…


久一「そういう試合もあったなぁ…懐かしい」


優吾「それって高校2年の時の甲子園四回戦の試合ですか?」


久一「よく覚えてるね」


後輩男「あ、あの試合って確か…

相手が鹿児島の期待された選手で…」


優吾「そうそう、テレビで見て、試合録画してたから覚えてるよ」


久一「ははっ、なんだか照れるな。

あの頃はまだ荒削りだったころだからさ。

彼は…彼らは強かったよ」


昌幸「なんすかそのepisodeエピソード!聞かせてくださいよ!

久一さんー!俺聞かないと眠れないっすよー!」


久一「ははっ、いいよ。長くなるから、その前に飲もうか?」


久しぶりに旨いお酒が飲めた気がする…



久一「それじゃ彼を頼むよ、

僕は後輩を部屋まで送らなきゃいけないからね…」


優吾「はい、今日は楽しかったです。おやすみなさい…」


酔っぱらっている大平を部屋まで運んでベッドに寝かせた。


昌幸「おおっ、このアングルは…いい…シャッター、チャンス…zzz…」


夢の中まで撮影しているとは…

こいつのカメラマンとしての熱さは本物だ…


寝てはいるが…お前にカメラマンとしてのR…

Respectリスペクトを送るよ…


俺は薫の指輪が入っているペンダントを見て…布団に入った…



吹雪の音が聞こえる静かな時間の中で微睡む…


唇に何かが入ったような感触があり、うっすらと目を開ける…


暗くて良く見えないが女性が俺の上にまたがっている…


俺は起きたばかりの頭を動かして今の状況を考える…


優吾「…大平か?」


いや、違う…この口に残った感触は…

上にまたがる女性がうっすらと見えた…


?「ゆ、優吾さん…私…」


彰美ちゃんだった…

俺は彰美ちゃんにキスされていた…


…どうして?

そう思いながらも、口に出せず…

その口はまた塞がれた…


甘い味がした…


彰美「今ここで言わないと…

これから先、妹のままで優吾さんを東京に返してしまいそうで…

だから言います…

好きです、兄としてでなく…男性として付き合ってください」


優吾「俺は…」

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