♪Ⅳ

 「ついてこい。見せてやる。本当のヲタクって奴を。」


そう言った地球人テラホモー軍の指揮官は、俺をあいつらが乗ってきた宇宙船に乗せた。


第3話【心】


 ブチャッという音を立てて宇宙船は飛び立った。筒状の内部は小さな丸い窓があるだけの小さなものだった。兵士達が乗っていた所は着陸時に潰れたという。帰りは迎えが来るらしい。


「どうだ。座り心地は。」


俺が座っている、いびつな長細い茶色のソファーについてだろう。


「柔らかい。なのに座りにくい。なんだか体が座るのを避けようとしている。その為、脚が痛い。」


「ハハハ。そうか。じゃあ立ってろ。そっちのほうが楽だ。もう、着くしな。」


ハンドル上の表示には「【地球てら-秋葉原あきはばら上空】3km先を右に その次5km直進 目的地はすぐ下」と、表示されていた。どうやら大気圏はとっくに抜けたらしい。速すぎて暑さも感じなかった。


「ほら、下を見ろ。ここが秋葉原、地球のヲタクの聖地だ。ちょうど今日は初子ミクの限定品発売の日だ。個数は200個。買う為にはネット、又は現地での抽選が必要だ。抽選程平和に限定品を買う方法は無い。」


「抽選...とはなんだ。どんな戦いなんだ。」


「戦いでは無い。抽選っていうのは、くじと同じで第三者が当たりを決める事だ。」


「抽選…なら戦いも無くなる。王にそう言ってみよう。」


「そうだ。それでこそヲタクだ。では帰るとするか。」


「ああ。ありがとう。」


「礼には及ばない。私達はこの為に来たんだ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る