非才の賢人 田中正義

 HP:4000 MP:0 役職:侍 種族:人間 性別:男

 装備:鋼鉄の剣         固有能力:たったひとつの賢人の知恵  

    請負人のスーツ

    古びた手袋

    銀のロケット


 取り立てて特徴の無いその男は、父親に憧れて15歳で請負人になった。それが田中正義せいぎの始まりである。

 剣士としての実力は並で、父親のような巧者になることを期待されたが、彼は父親のような才能には恵まれず、ゆえに心無いものは彼を嘲笑った。少ない彼の友人たちも請負人になることに反対した。彼にとって父親という存在は同時に、呪いのようなものでもあった。

 それでも彼が請負人を続けてきたのは、ひとえに父親への憧れと、幼いころ、母を殺した魔物への恨みからであろう。

 彼を衝き動かしていたのは、憧れと恨みだった。

 そんな生活が10年続き、ついに彼は父親をも失う。魔物の手によるものだった。彼は文字通り独りになったのだ。


 しかしその時、父親に助けられた女性が正義の運命を大きく変えた。


 半龍であるその女性はいつしか彼の愛すべき人となり、彼の生きる糧となった。

 剣士としての実力は思うように伸びなかったが、請負人としての実力は他の追随を許さないまでに彼は成長することとなる。

 非才ながらも経験、勘、度胸、そして知識を身に着けた彼は、あらゆる任務をこなす、父親と同等以上の請負人となった。それは彼が憧れていた父親そのものであり、父親を知る、当時の古参の請負人たちは正義に彼の父親の姿を重ね、涙ながらに喜んだという。そして、子宝に恵まれた時、彼は自身の呪いを完全に払拭する。憧れよりも、恨みよりも強いもの、それは、家族愛だった。

 そんな正義を、誰が言ったか、人は賢人と呼ぶようになった。

 もっとも、正義は自身が目立つのを嫌ったため、そのあだ名を知っているのはほんの一握りだが。古来より能ある鷹は爪を隠すものだ。


 非才とは才能が無いのではなく、ただ身に着いていない状態のことであり、そんなものは、あとでどうとでもなる。

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