最終話「狐の星」

「……これで、妾の話はじゃ」

 そうして、妾は語りを終えた。

 吹き渡る草原の風が、林の中に移りゆく木漏れ日を運んでくる。

 草の上の木陰では、頭に狐耳の生えた子供達が、既に話に飽きておったのか気持ちよさそうに寝転がっておる。

 空に浮かぶのは、黄色みがかった太陽と。半月のような形の星船。

 それが、この小さな星のはじまりの話。悠久の時をいきようと。空の果てに届こうと。最後に残るものは、決まっておるという、寓話のような話じゃ。


 妾は狐の姿で、限りない大地を歩む。

 ……妾はもはや、神でもなく、人でもなく、もしかすると狐ですらないのやもしれぬ。

 それでも、これで、よい。社の軛から解き放たれ。妾はこの星に、根を張って生きてゆく。

 それで、よい。


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 斯くして、蒼く小さな星で生まれた生命は。別の世界へと根付く。

 しかしそれはもう、人類には関わりのない話である。


おきつねさま in space



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