終章「創世神話」
「……こうして。船は2つに割れ、人は耳のあるものと耳のないものに別れてしまいました」
暖炉の前で寝転ぶ幼い娘に、母は語る。
「耳のあるものたちの乗る船は、やがてこの星へと辿り着きました。それが、お月さまになったということです」
「……耳のないひとは、どうなったの?」
幼い娘が、狐耳をひくひく動かしながら母親に尋ねる。
「……それはきっと、もうすぐわかるわ」
母親は娘の頭を優しく撫で、空を見上げる。
夜空に浮かぶのは、半月型の船。遥か昔。見かけの通り『半月』と呼ばれる、神話の時代に『誰か』が作った遺物(オーパーツ)。
「それが、耳のない人と。最初の『おきつねさま』との約束だから」
そして、闇夜に紛れて光る、月へ掛かる梯子(ムーンレイカー)。衛星軌道までのびる、ながいながいきつねのエレベーター。
遠い約束なんてものは、もしかすると口実に過ぎないのかもしれない。
ただ、この広い空の下で。自分達が独りではないと信じたい。それが、真実の動機なのかもしれない。
人も狐も。結局のところ、そういうものなのじゃろうて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます