ザ・蛇足
超番外編「おきつねさま in キュッチャニア・上」
※キュッチャニアコラボ回。本編8~9話前後の話と思いねぇ。
「なんじゃここは」
目を覚ますと、あたり一面ドングリ畑じゃった。
「妾は確か、宇宙に出たと思ったんじゃが」
『この手の理不尽は、貴方の方の専門だと思いましたが』
「おんしもおったのかや。うぅむ……言われてみれば何やら、まじないの力を感じるのぅ」
『冷蔵庫』に言われるまま、辺りを探ってみると……ほんの僅かじゃったが、得体の知れん力が土地に混じっとった。
それはそうと、ここは何処なんじゃ。
『衛星座標、照合完了。現在地は『キュッチャニア』だそうです』
「きゅっ……ちゃにあ、じゃと?」
『旧CIS圏にある独裁国家です。国民の大多数がモモンガ、総統はキュッチャンと呼ばれる謎生物。国土は岐阜県の多治見市からワームホールで徒歩十分。何故かローカルに情報がありました。外部からの干渉が疑われます』
「よくわからんが……きゅっちゃにあ、と言ったかや?」
『ご存知で?』
「狐の間では有名じゃぞ……一度足を踏み入れれば、生きては帰れん魔境じゃとか」
『総統本人が、きつねさんを嫁にしたがっていると。その関係で噂が広まったのでは?』
「ぶっ」
『永住されるなら、ここで別れしょうか?私は、ここのマザーコンピュータをシメに行きますけど。私をハッキングした罪を償わせます』
「人の子など孕みTo nightで熱唱した日を思い出すのう……」
人ならまだ考えなくなくなくもないが、謎生物の嫁になるのは御免被るのじゃ。
まさか、狐を嫁にしたがる謎生物がおるとは。世界は広い、というのをこのところ嫌というほど思い知らされとったとはいえ、妾の知る世界は思っていたよりもずっと狭いのやもしれん。
などと黄昏れておると。
『現実逃避はそれくらいにしてください。周囲に生態反応。先程から囲まれています。住民のモモンガでしょうか?』
「あれモモンガかや!?」
どんぐり畑から顔を出すのは、四本足の動物……動物?頭っぽいところに星の模様がくっついとる、やたらと硬そうな生き物じゃった。
絵に書くと……こんな感じかの→┌(┌ ★)┐
『機体種別照合。キュッチャニア軍の保有する多脚戦車、『ソビエトマシン』です』
「おんし、本当に何でも知っとるの……」
『誰かがネットワーク経由で情報を流し込んでるんですよ!』
『そびえとましん』とやらはガシャーン、ガシャーン、と何やら愉快な音を立てながら、こちらへ近付いてきよる。
「なんか冷蔵庫っぽい外見じゃし、話とか通じんか?」
『駄目ですね。中枢はどうも生身っぽいです。そちらこそ、何とかできないですか?』
「この土地は、駄目じゃ。妾の力がほとんど通らん」
先程から色々試しておったんじゃが、狐火すらろくに点かん。
『どうしてこんなことに……』
「妾も普段なら、こんなとこ近づかんわ!」
『しかし、何故局所的にそのような現象が?』
「地下に邪神でも埋まっとるんじゃないかのぅ……どのみち手詰まりじゃな」
『相手は戦車ですが、曲がりなりにも知性体。取り敢えず、話しかけてみましょう』
妾も冷蔵庫の提案に頷く。
『いいお天気ですね』
そう話しかける冷蔵庫。
「ソウデスネ シンンニュウシャハッケン ハイジョシマス ハイジョシマス」
すぐさま応じる『そびえとましん』とやら。
「駄目ではないかや!」
『言語コードが違いましたかね?』
向こうの言葉は、妾達普通に分かるんじゃが。
「逃げるのじゃ!」
『どうやって逃げる気ですか?』
妾達の現在の状態。妾のお社と、冷蔵庫一台(すごく重そう)。
「……おんし、気合で手足が生えたりせんか?」
『無理ですね。でも、逃げる方法なら思い付きましたよ』
「はよ教えんか!」
『私の筐体とあの機体をケーブルで繋いで、制御を乗っ取ります』
「……そのケーブルとやらは何処にあるんじゃ?」
『……ああ!しまった!』
何やら、こやつまで抜けてきておる気がするの。
「シンニュウシャ ショウゴウ……ショウゴウチュウ……」
「時々止まっとるのが腹立つの」
『完全にオフラインですね。遠隔での乗っ取りは無理そうです』
「ショウゴウカンリョウ フォックス ワン マシーン ワン」
「ふぉっくすってなんじゃ」
『狐のことですよ』
「ましーんってなんじゃ」
『私のことですよ?』
この国では、冷蔵庫のことをましーんと言うらしいの。
「タイショウ ヲ カイシュウ シマス」
じゃが、そこで『そびえとましん』とやらから、手のようなものが出てきおった。
「わ、妾の社がー!?」
『私の筐体が……』
「カイシュウカンリョウ キトウシマス」
『そびえとましん』とやらに摘み上げられ、動体の上へ運び上げられる妾の社と冷蔵庫。そのまま妾達は何処とも知れぬ場所へ運ばれて行くのじゃった……
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