第5話 ミッション終わって1
『ろばた焼き 酔慶』
僕の大学から歩いて15分位の所にある居酒屋だ。
1階が花屋で左脇の扉から入り階段で2階に上がった所にある。
扉に張り紙と歩道の端に置かれた電光掲示式の看板だけが目印の目立たない店だ。
しかし、いつ行ってもお客さんが居ないという日は無い。
知る人ぞ知る地元民ご用達の店といった処か。
その中に僕等ゲーム研の連中も含まれる。
代々先輩から後輩へと教えられ定番のお店となっている。
オープンな厨房をL字にカウンター席が囲い、その外側に2つのテーブルと大きな座敷がある。
座敷はちゃぶ台が8つ程並んでおり大人数の宴会も可能な広さを有している。
流行の掘りごたつ式ではなく畳の席だが、まあ僕は気にしていない。
「では、春イベクリアを祝して、乾杯」
「「「「乾杯」」」」
僕の乾杯の音頭に皆がビールのジョッキを軽く当て合う。
そして間髪入れずビールを飲む。
よく日本人の取り合えずビールってのは乱暴だとか言う人がいるけど、やっぱり皆がやるだけの理由がある。
乾いた喉に最初の一口は暴力的なまでの美味さがある。
この店の生は中ジョッキなのだが一気に半分まで飲んでしまった。
他の連中も似たようなものだ。
特に高久などは残り4分の1位しかない。
高久隆志(たかく たかし)。
少し天然パーマが入った黒髪にたれ目がちなせいで全体としては細面の2枚目なのにちょっと弛めな2.5枚目な感じのする男だ。
僕と同じ高校出身のゲーム研の仲間だ。
同学年で現在20歳。
DAT(デイアフタートゥモロー)でチームを組んでいる。
というか、この席にいる5人全員チームメンバーなんだけど。
ゲームアバターはバウンサー(用心棒)のクラス(職業)でバックアップ(後方支援)担当。
主に狙撃を担当している。
名前は霧風烈(きりかぜ れつ)。
中二病全快のアバター名だが、中身の人は外見と違いおっさんくさい。
特に酒や食べ物的に。
ジョッキを置くや山芋の千切りに手を伸ばし、隣の席のゲンさんに醤油かけて良いか聞いてる。
ゲンさんこと中山先輩は1つ上の学年の先輩で高校も同じで、当時から親しくさせてもらっている。
中山元(なかやま はじめ)。
呼び名のゲンさんは名前をもじったもの。
身長は余り高くないのだが、ガッシリした体型なせいで余計低く見える。
丸顔でどちらかというと濃い老け顔なせいで高久と1学年差には見えにくい。
空手が趣味でサークルには入っていないが、周一で近所の道場にかよっているらしい。
ゲーム研の会長、サトさんこと佐藤先輩の幼馴染で、その関係でゲーム研に引き込まれた。
ゲームアバターはバウンサーでフロント(前衛)担当。
名前は元老師(げん ろうし)。
老人キャラで空手の経験を生かした近接格闘を得意としたキャラを演じてる。
僕の隣ではカールが山芋の千切りの器から自分の分を取り皿に分けている。
ワサビの苦手な彼は醤油かけて混ぜられる前に自分の分を救出する必要があるのだ。
そして、枝豆をくわえてた更に隣にいるシモンにお子ちゃまとからかわれている。
カールこと柏倉努(かしわぐら つとむ)は高久同様高校時代からの付き合いだ。
1年の時、同じクラスで知り合った。
そして、シモンはカールとは小学校から同じという幼馴染だ。
高校では同じクラスになった事は無いが、その関係でよく行動を共にしていた。
カールのアバターはハスラー(山師)のクラスで担当はフロントよりのランナバウト(遊撃)。
名前をカールグスタフ・レオンハルト。
これまたいい具合に中二だ。
シモンこと下之園純也(しものその じゅんや)のアバターはランドブラスター(輸送屋)のクラスで担当はバックアップ。
名前はシモン・モンデール。
ここでDATのアバタークラスについて説明しよう。
DATの冒険者には4つクラス(職業)がある。
1番多いのがバウンサー(用心棒)。
所謂ファンタジー世界での戦士。
軍で歩兵、機装兵として訓練を受け銃器、格闘、サバイバル等のスキル(技能)を入手したクラス。
スタート時点で最も高い戦闘力を持っているのが特徴。
次にランドブラスター(輸送屋)。
こちらは兵士は兵士でも輸送部隊や戦車兵などで、各種操縦、整備等のスキルを入手したクラス。
スタート時点では最低限の戦闘スキルしか無いが、整備スキルもあるためそっちで資金調達も可。
そしてネットランナー(電脳技術士)。
ある意味最も過酷なクラス。
元軍のホワイトハッカー。
ネットワークにダイブしたり某甲殻機動的な事が出来るクラス。
しかし、ネット接続のインプラント処理が必要な為、初期装備ポイントが少なく戦闘スキルも最低限なせいでスタート時は最も苦労が多い。
まあ、一緒にプレイしてくれる仲間がいればどうとでもなるけど。
ソロプレイ希望の方には絶対勧めない。
最後がハスラー(山師)。
元軍の情報部の工作員。
その為全てのスキルの収得が可能な赤魔道士。
ただし、課金が必須なクラス。
初期装備ポイントでネット接続のインプラント処理をすると殆ど残らない為、事実上スタート時点で詰んでしまう。
そうなると課金で装備ポイントを増やすしかない。
ソロプレイ希望者が多いクラスなので最低限の武装も無しでスタートは有り得ない。
よって課金必須のクラスだ。
運営も商売が旨い。
スタート後にクラス変更は基本的に出来ないが、スキルの収得は出来る。
成長のさせ方しだいでは戦闘力がやたら高いネットランナーやレーサー並みに最速のバウンサーも在り得る。
しかし、ネット接続のインプラント処理は行政府が管理している為、軍属であるスタート時のみ可能だ。
尤も最近課金で可能になっちゃったんだよな。
この運営の商売主義は正直好きになれない。
最後に僕の名前は大西健一(おおにし けんいち)
アバターはハスラーでバックアップよりのランナバウト担当。
アバター名は四谷弘(よつや ひろし)。
とりあえず春イベクリアに喜ぶちょっとオタクな工業系大学の学生だ。
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