第4話 とある戦場4

一気にグダグダな感じになってしまった。

せっかく命がけで対空火器を破壊したのに。


「じゃあ、一気に決めるぜ。

FCSデータリンク。

アプローチデータダウンロード。

ファイナルアプローチ、ゴー」


ブリーフィングにそっているなら、周囲の建物の陰になる南側から進入する事になる。

近くに聞こえていた音楽と爆音が遠ざかる。

敷地の東側に位置するこのビルの側方をフライパスして南下。

その後反転して上空から攻撃を加えるのだ。

所謂トップアタックと呼ばれる攻撃だ。

戦車はその役割上正面と砲塔の装甲が一番厚い。

戦車同士の撃ち合いがメインの役割だからだ。

その分、側面や上方の装甲が薄くなっている。

全部が厚く無いのは重量が重くなって運動性が低下するからだ。

特に攻撃を受けにくい上方は一番薄くなっている。

対戦車攻撃ヘリがタンクキラーと呼ばれるのはこの為だ。


「LOSAPZ(高速徹甲誘導弾)セーフティ解除。

データリンクによるターゲットマルチロック」


四谷が淡々と攻撃準備を整えていく。

まだ視認出来ていないはずだが、地上のメンバーからの情報でジャガーノートは既にロックオンされているようだ。


「まもなくターゲットインサイト。

インサイトと同時にリリース。

カウントダウン開始。

5、4、3、2、1、リリース」


リリースの声と同時に大きな轟音が響く。

そして、わずかな間隔を置いて先ほどとは違う轟音が響いた。

LOSAPZ(高速徹甲誘導弾)。

元はアメリカが1980年代後半に開発を開始したLOSAT対戦車ミサイルだ

それの発展形がLOSAPZ。

原理は質量を高速であてて撃ち貫くという非常に男らしいものだ。

他のミサイルやロケット弾が化学反応(炸薬による高熱ジェット流)によって装甲を焼き貫くのに対し、これは高速と弾芯のタングステンの硬さで物理的に貫くのだ。

ヘルファイヤー等の対戦車ミサイルの多くが亜音速なのに対し、LOSAT対戦車ミサイルはマッハ4で飛行する。

その為、誘導が非常に困難になり完成まで約10年かかったとの事だ。

四谷がブリーフィングで得意げに説明していた。

それが発展、改良が加えられてヘリ搭載可能なLOSAPZが誕生したのだ。

まあ、スカイハウンドはヘリじゃなくオートジャイロだけど。

特徴としては非常に高速な為、回避が困難。

そして撃ち貫く兵器なのでケージ装甲や爆発反応装甲では対処出来ないという事だ。

まあ、物理でぶん殴るは単純だけに対処が難しいって事だな。



数秒後、視界にメッセージが表示された。


ミッションコンプリート。

春のイベントシナリオ『暁の車』クリア。

おめでとうございます。


視線でクリックすると獲得経験値、ボーナスポイント、ゲーム内通貨による報酬が表示されだす。


「はぁ、やっぱり最後までシリアスは無理か。

火薬の匂い染み付いて咽…ねえなあ、俺達」


カッコイイとかハードボイルドてのは遠いなあ。

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