第3話 とある戦場3

ミッション開始から30分。

最初の増援から数えて3回の増援による波状攻撃が終了した。

戦術的に考えるとお粗末としか言いようがない。

アデリシアあたりなら膝を突き合わせてお説教したくなっているだろう。

戦力の逐次投入。

やってはいけない作戦の典型だ。

アデリシア曰く


「戦力は基本的になるべく早期に投入出来る最大戦力をもってあたる様にするべき。

勿論、戦力差が余りに大きい場合は経費を考えて数を減らすのも必要だけど。

これは事務仕事も一緒。

某侵略企業のA級戦艦の経理部長も言ってたわ」


いや、経理部長って何?

ともかく通常なら駄目な戦術だ。

こっちはそれに助かっているけど。

しかし、そろそろ危険になってきた。

弾薬の手持ちが心許無い。

俺のシャイアン2500の装弾数は8+1の最大9発だ。

マガジンに8発装填可能。

マガジンをセットしてコッキングハンドルを引いてチャンバーに銃弾を装填後、マガジンを取り出し1発追加する事で9発となる。

これが8+1の意味だ。

当然、戦闘中にこんな事していられない。

その為、今日も最初のみ9発装填だが、後は8発だ。

尤も、マガジン内に弾が残っていても戦闘の流れで交換していたので、傍らに落ちているマガジンのいくつかには1、2発入っている物もある。

とはいえ、強化服のポーチにあるマガジンはあと1つ。

チャンバーに装填されている状態でマガジンチェンジしたので銃に9発。

マガジンに8発。

合計17発。

下の連中だって恐らく似たようなものだろう。

きつくなってきた。


「アラートメッセージ、敷地内建造物より移動物体出現。

脅威判定最大規模、車両サイズ2確認。

サーバよりトラックナンバー、車両サイズをアルファ1、2と割り振り。

他98から110を割り振り」


おいおい、いよいよ来たか。


「ルート権限により送信。

いよいよラスボスよ。

各員ブリーフィングどおりに対応しなさい。

最後よ、出し惜しみ無しになさい、以上」


アデリシアから指示がとぶ。


「コマンド、誘導、アルファ1、2発後アルファ2、マーク」


すかさず誘導され視界に入れる。

小型の戦車のような車体が目に入る。

これが今回のミッションの目的、対機装兵用無人戦闘車両ジャガーノートだ。

事前に入手した情報によると推測される性能は以下だ。

全長5520mm

全幅2330mm

全高2230mm

戦車として考えるとかなり小さい。

小さい戦車として有名な自衛隊の10式戦車ですら全長9420mm、全幅3240mmだ。

第2次大戦時の中戦車クラスの大きさだ。

主武装として砲塔に40mm速射砲。

砲塔上部に近接、対空用を兼ねたブローニングM2重機関銃の自動銃座。

砲塔後部に50mm迫撃砲。

これは対歩兵、機装兵を大きく意識したものだ。

迫撃砲とは大きく弓なりな弾道で砲弾を飛ばす砲で、主に榴弾を飛ばす。

着弾時に炸裂して破片と爆風で殺傷する兵器だ。

これを戦車に搭載した例はイスラエルのメルカバを除けば例が無い。

仮想敵が戦車では無く歩兵、機装兵である証拠だ。

正面装甲は複合装甲で50mm。

RHA換算では120から160mm位と推測されている。

ちなみにRHAとは均質圧延装甲のことで、第2次大戦以降に主流となった装甲板の事だ。

ちなみに、みんな大好きミポリン愛用の4号戦車は最終型で正面装甲が80mm。

ティーガー1で100mm程である。

現在の戦車には全然及ばないが、歩兵の武装では歯が立たないのはあきらかだ。

対パンツァーファウスト用ケージ装甲も装備されている。

ケージ装甲とはカゴ状の金属柵で、装甲に当たる前にロケット弾やパンツァーファウストを起爆させて威力を大きく弱める物だ。

下には機装兵装備の者もいるが、このクラスの相手をしとめられる武装を装備している奴はいない。



ここからは時間との勝負だ。

ブリーフィングに従いM2に2発撃ち込み、すぐさま次の標的のM2に2発撃ち込む。

すぐさま立ち上がるとシャイアンと観測ユニットを抱え建物の奥へと逃げる。

直後、先ほどまで居た窓の辺りの壁が崩れる。

ビルの5階から狙撃をしていたが、距離が1キロ程度離れていた為、地上用の低仰角の砲でも十分に砲撃できる位置だったのだ。

さらにビルの奥へと逃げる。

何故なら俺の仕事はきっちり終わったのだから。


「ルート権限により送信。

四谷、出番よ。

進入を開始しなさい。

ケイは標的位置情報と進入誘導を開始。

最終局面よ、以上」


すぐさま上空からヘリのローター音の様な騒音が聞こえ始める。

しかし同時に軽快な音楽も聞こえだした。

エアーウルフのテーマか。


「四谷、テメー戦闘中に何やってんだ」


無線封鎖中なのに思わず無線で叫んでしまった。


「そうだぞ、四谷」


老師か、言ってやれ、言ってやれ。


「ここは様式美としてワルキューレの騎行だろ」


いや、老師、突っ込む処がちがうでしょう。


「いや、老師、四谷のスカイハウンドはオートジャイロなんだから、それもちがうでしょ」


シノさん、あんたまで何言ってんのよ、もう。

さっきまでのシリアス、どこ行ったんだよ。

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