第2話 とある戦場2
「次」
俺の呟きに応える様にスコープ内に誘導の矢印が表示される。
誘導に従い視界を移すとワームがいた。
スコープ内視界の縁が赤から緑に1瞬の間をおいて変わる。
それを確認すると同時に引き金を引く。
縁の表示は射撃調整データの更新が出来ているかどうかの表示だ。
赤は計算中。
緑で調整が終了。
標的が変われば距離等の数値が変わる。
当然それを調整しなければ射撃精度は落ちる。
「次」
命中確認もそこそこに誘導を要求する。
俺が今使用している狙撃銃はシャイアン2500。
アメリカの新興銃器メーカー、シャイアン社が対機装兵用に開発した狙撃銃だ。
元々アンチマテリアルライフルとして狙撃には大口径の12.5mm弾が使用されて来た。
これは、銃弾が重いほど風の影響を受けにくくなる事による。
しかし、人間相手なら過剰ともいえる12.5mm弾も装甲強化服をまとった機装兵相手となると確実性にかける。
素体スーツなら7.62mmの徹甲弾ならほぼ確実に装甲を撃ちぬける。
数十mmの複合装甲に衝撃吸収機能もある形状記憶合金製人工筋肉を外骨格フレームと共に素体に追加した装甲強化服。
これが相手だと12.5mm弾でも命中の仕方によっては弾かれる。
装甲強化服は全体的に曲線の多いデザインが採用されている。
生産性を考えると効率の悪い方向だ。
だが、これにより銃弾がはじかれ易くなる効果がある。
装甲板に銃弾が命中した際、入射角が浅いと兆弾し易くなる。
そこで、曲面を多用し入射角が浅くなり易くしてるのだ。
これにより装甲強化服の生存性は非常に高くなっている。
その分値段も高くなっているが。
そこで開発されたのがシャイアン2500を始めとした20mm弾を使用した狙撃銃だ。
さすがに20mm弾相手では機装兵もひとたまりも無い。
以前は対ハイジャック用などで極一部にのみ存在した20mm口径の狙撃銃。
これを期に数多く出まわる事になった。
余談だが、軍隊によっては20mm以上の口径は銃ではなく砲と呼ばれる事になっている。
しかし、なぜかシャイアン2500を始め皆、狙撃銃と呼称されている。
機装兵でもひとたまりもない20mm弾。
きちんと命中すればワームなど1発で行動不能となる。
淡々とすばやくワームを破壊する。
ミッション開始時間になると同時にチ-ム本隊の乗った装輪装甲車と軽装甲車両が移動を開始したはずだ。
突入前に現在いるワームをしとめる必要がある。
こういった作戦において一番無防備になるのが突入直後の部隊を展開させる時だ。
その為に警備のワームを事前に全滅させ、増援が出てくるまでの間隙をついて突入と展開を行う作戦なのだ。
最後の4機目のワームを破壊した直後、ユニットからメッセージだ。
「インフォメーションメッセージ、本隊の敷地内侵入を確認。
部隊員の降車が開始されました」
とりあえず作戦通りだ。
後は展開完了まで増援の警戒だ。
「アラートメッセージ、敷地内より飛行物体が離陸。
トラックナンバー5から8を割り振り。
誘導を開始します」
今度は飛行型戦闘機械、ドローンか。
誘導にしたがい視界に入れると円盤状の物体の上に三脚の様な支柱に支えられた複合センサーらしき箱を乗っけたドローンがいた。
シコルスキー社製偵察ドローン、サイファーのシリーズか。
円盤状部分の側面にはアサルトライフルらしき物とアサルトライフルに装着するタイプのグレネードランチャーらしき円筒が確認できる。
素早く円盤の中心を狙い射撃。
こいつは円盤の内部に2重反転式のローター(回転翼)がある。
ここが破壊されれば落ちるだけだ。
ローターの片方が破損しただけでもバランスを崩し墜落する。
命中を確認。
煙を薄くあげながら落ちていく。
「次」
誘導に従い次のドローンを視界に入れる。
「アラートメッセージ、敷地内建造物より移動物体出現。
トラックナンバー9から20を割り振り。
ホスト側とのデータリンクアップロード。
以降のトラックナンバーはホスト側指示に」
いよいよ忙しくなりそうだ。
そう思いながら引き金を引く。
中心から少し上にそれたがローターが破損したのかバランスを崩した後落ちていく。
「ルート権限による送信、烈は引き続き飛行型に対処。
右翼伝三郎班、左翼老師班共にブリーフィングに従いグレネード、ロケットは温存で対処。
まだ序盤戦よ。
返信は不許可、以上」
チームリーダー、アデリシアの声だ。
了解、了解。
「次」
誘導を指示する。
きっちりお仕事しましょうか。
先はまだ長い。
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