第7話 関わり

教室に入ると佐久野は自分の席に着いていた。

当然だが、俺の席は佐久野の隣だ。俺は自分の席に向かった。

そして、席に着こうとした時にチラッと佐久野の方を見た。すると佐久野と目が合ってしまった。

しかし、佐久野はすぐに目を逸らした。俺は胸が痛くなった。


佐久野に話しかけようと思ったが、状況が悪化するだけだと思ったので、何も言わずに席に着いた。

すると、突然後ろから、

『おはよう、新瀬!』

少しびっくりして振り向くと、そこには羽野がいた。手をあげて『よっ』と言っていた。

『お、おはよう…』

『ん?何か元気ないぞ。どうした?』

『いや、何でもない』

そう言うと、俺の目は無意識に佐久野の方を向いてしまった。すると羽野は、何かを察したかのように俺の側によってきて耳元で、

『佐久野さんと何かあったんだな?』

そう囁いた。その通りである。だから俺は小さく頷いた。

『ふ~ん。まぁ相談ならいつでものってやるからな。じゃあ』

そう言うと羽野は自分の席に戻っていった。


それからは俺の周りは何とも言えない気まずさが漂っていた。

授業が始まっても佐久野と不幸のことが気になり全く集中できなかった。

先生に当てられていることも気付かず、

『新瀬!新瀬!聞こえてるのか?』

気付いたら先生が目の前に立っていて、

『すいません、聞いてませんでした』

と、謝ってばかりだった。

さらには、立っとけと言われ立たされたりもした。

俺はその時ふと思った。これも不幸なのか・・・と。

その後も何もない廊下で躓いたり、歩いていると目の前に柱などがあってぶつかりそうになった。

俺はあれ以来佐久野と話してすらいない。しかし、細かな不幸。いや、俺の不注意なだけだが、そういうことが続いた。

あげくの果てには、

『痛っ!』

本の端で指を切ってしまった。

佐久野は偶然みたいな不幸が続くとも言っていた。

これはもう関わったことによる不幸なのか、それとも俺の不注意なのか、どっちかわからなくなってしまった。


学校の帰り道、俺は周りを常に警戒しながら歩いていた。

もし本当に不幸なら何かが起こるかもしれない。そのことが頭から離れなかったのだ。

いつの間にか、何が起こるかわからない恐怖に怯えていたのだ。

しかし、帰る途中にある店のガラス越しに映る何かに怯える自分の姿を見てふと気が付いた。


俺は自らこの道を選んだのではないのか?自分に不幸が降り懸かるかもしれないけど、それを覚悟して飛び込んだのではないのか?そんな考えが頭を貫いた。

それに比べて今の自分の姿が惨めに思えた。

『情けないな…』

そう呟いくと両方の頬をバチンと叩いた。

確かに恐怖はある。でもそれに立ち向かって、乗り越えて佐久野を助ける覚悟を最初に俺はした。

そして、俺はもう一度ここで覚悟を決めることにした。


よし!明日、もう一度佐久野に話しかけてみよう!

そう思って歩き始めようとしたその時、

『新瀬君』

俺は呼び止められた。

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