第4話 接近
学校が終わり、皆が下校をしている。その中で佐久野はたった一人で下校していた。
俺は佐久野に近寄り声をかけた。
『佐久野さん』
佐久野は振り向いた。
『新瀬君。どうしたの?』
佐久野は不思議そうな顔をしていた。俺は答えた。
『一緒に帰らない?』
佐久野は一瞬嬉しそうな顔をした。しかし、すぐにその顔が曇っていった。
『ありがとう。でも…ごめんなさい、一緒には帰れない』
佐久野は一緒に帰ることを拒んだ。
『新瀬君も聞いてたでしょ?あの話』
俺はもちろん聞いていた。呪いの話だ。
『聞いたよ』
『じゃあ何で?』
『よくわからないけどさ、俺は自分で体験してみないとわからない性質でね』
『そんなの危険すぎる!』
佐久野は必死で反対した。でも、俺も食い下がる気はさらさらなかったので、
『もしかしたら本当に偶然だったかもしれないじゃないか。今日一緒に帰って俺に何も起こらなかったら、呪いは偶然だったってことだろ?』
『そ、そうだけど…』
佐久野は少し顔を横に向けて考えるような仕草をした。
『だから一緒に帰ろうよ』
『…わかったわ。でも、もし何かあったら今後私には』
佐久野がそう言いかけた時俺は口を挟んだ。
『俺は死なない。絶対、何があっても。最初にこれだけは言っておくよ』
『え?』
突然の俺の言葉に佐久野は驚いた顔をした。
『そんなのわからないじゃない!』
『それはお互い様だろ?』
佐久野はまた驚いた顔をした。
『佐久野さんの言う通り、死ぬかどうかなんてわからない。でも、死ぬようなことが起こるかどうかもわかないじゃないか』
『そんなの屁理屈よ!』
『屁理屈だって何だっていいさ、君が寂しい思いをしなくて済むならね』
佐久野の顔が赤くなった、気がした。そして、黙り込んでしまった。
お互い2分くらい黙っていた。先に口を開いたのは佐久野だった。
『とりあえず一緒に帰りましょう。でも、何が起こってもその後どうするかは新瀬君が決めていいよ』
『ありがとう』
俺と佐久野は歩き出した。呪いが本当なのか偶然なのかはわからなかったから、細心の注意を払って歩くつもりだ。まだ学校の中だったけど気は抜けない。
すると佐久野が声をかけてきた。
『今日はごめんなさい』
何故謝られるのかわかなかった。
『どうして?』
『せっかく自己紹介してくれたのに怒鳴っちゃって…』
『あぁ、気にしなくていいよ。ちょっとびっくりしたけど』
『本当にごめんなさい。でも、ありがとう』
何だか嬉しくなった。さっき聞いたありがとうとは、また違う感じがした。
門のところまでやってきた。そして、俺と佐久野は一旦立ち止まった。
今のところ何も起こってはいない。
俺は唾を飲み込んで、
『さて、帰りますか!』
『うん』
佐久野は小さな声で答えた。そして、さらに小さな声で、
『何も起こりませんように』
と言ってるように聞こえた。
そして、俺と佐久野は門を出た。
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