第3話 呪い
佐久野が訳を話してから周りには誰もいなくなった。
『え?呪われてるって、どういうこと?冗談でしょ?』
一人がそう言うと、佐久野は首を横に振って答えた。
『ううん…私に関わった人は皆、不幸なことが起こったの』
『不幸なことって?』
『最初は軽い病気にかかったりしただけだから何も気付かなかった…でも、関わりが深くなればなるほど不幸は強くなっていったの…』
佐久野の声は話す度に少しずつ震えが大きくなっていった。
『それで気付いた。私の周りの人が、大切な人が次々に不幸になっていってるって』
俺は佐久野の周りにいた女の子達の顔が段々怖がってきているのに気付いた。佐久野は話続ける。
『それで友達にそのことを話したら、最初はそんなはずない。ただの偶然だと言ってくれた…でも!』
佐久野の声が突然大きくなった。少し驚いた。
『何か悪いことが起こるたびに私の周りから人が消えていった。最初は辛かった。寂しかった。でも段々それでいい。その方がいいと思うようになっていったの』
佐久野は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
『最終的には誰もいなくなったわ。毎日学校に行っても一人で椅子に座ってるだけだった』
いつの間にか教室にいた全員が佐久野の話を聞いていた。
『でも、ある日一人の男の子が声をかけてくれたんだ。自分でよければ力になってあげるよって。私は嬉しくて思わず泣いてしまった。でも彼が不幸になるかもしれないって思ったから断ったの。それでも彼は私を助けたいって言ってくれた…』
佐久野は顔が見えなくなるくらい俯いた。
『でも、やっぱり彼には悪いことが起こった。それでも彼は気にするなって言って、いつも側にいてくれた。私はそんな彼を段々好きになっていった。なってしまった…』
『なってしまった?』
不思議に思った一人が思わず聞き返してしまった。そして、慌てて口を押さえた。佐久野は彼女の方を向き、
『うん…それがいけなかったの。私が彼を好きになってしまったばかりに…』
佐久野の声が止まった。それを見た一人が恐る恐る佐久野に尋ねた。
『彼はどうなったの…?』
少しの沈黙が教室を支配した。
それに皆唾を飲み込んだ。
佐久野はいったん下を向き、そしてもう一度顔を上げると、
『死んだわ…交通事故で』
教室の空気が急に変わった気がした。そして突然座り込む者、教室を出ていく者がいた。
『そして、私はあの学校にいれなくなってここに転校してきた。だからもう、私の周りの人が不幸になるのは見たくないの…』
佐久野は両手で顔を押さえて泣き出してしまった。
教室は佐久野の泣き声だけが響いていた。
突然その声を遮るように、
『佐久野さん。御両親は?』
遠くで聞いていた羽野が言った。すると、佐久野は泣くのをやめ、
『元気だよ。何故か親だけは何もないんだ。だから皆、私には関わらないで。お願い』
そう言うと佐久野は深く頭を下げた。
それ以降、佐久野の周りには誰もいなくなった。
ああ言ったが佐久野は寂しそうに座っていた。
そんな彼女の姿を見て俺はある決意をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます