第2話 彼女の秘密

やがて始業式が始まった。

体育館には全校生徒が集まった。あまり多くはない。

各学年2クラスしかないので同じ学年の人は、ほとんど知っていた。


彼女はあれ以来、何も話さず俯いたままだった。


そして校長先生の話が始まる。

『皆さん、おはようございます。春休みは楽しく過ごせましたか?』

それから校長先生は長々と話を続けた。この校長先生の話は長い。とても退屈な時間だった。

すると、

『なぁお前、佐久野さんと何かあったのか?』

自分の後ろにいた羽野光馬(はのこうま)が話しかけてきた。

『別に。ただ自己紹介しただけだよ』

『じゃあ何で?』

『知るかよ』

羽野は、ふ~ん。と言うと考えこんでしまった。

俺は佐久野の方を見た。しかし、彼女はまだ俯いたままだった。


やがて校長先生の話が終わった。

そして、生徒指導の須尾(すお)が話始めた。

須尾はそろそろ皆が疲れているのだと思い、すぐに話を終わってくれた。

そして始業式が終わった。


教室に戻るとクラスの女の子達が佐久野の周りに集まっていった。

『佐久野さん。何かあったの?』

すると、数人の女の子が俺の方をチラッと振り向き、

『もしかして、新瀬に何か言われたの?』

佐久野は俯いたまま黙っていた。

『何か言われたんだったらすぐ言いなよ。私達がとっちめてやるから』

俺は特別なことは何も言っていない。ただ自己紹介しただけだ。

俺が失礼な奴らだなと思いながら座っていると、

『新瀬!あんた、佐久野さんに何言ったのよ!』

一人の女の子が恐い顔で言ってきた。

『いや、俺は何も…』

そう答えようとした時、佐久野が突然顔を上げて口を開いたのだ。

『新瀬君は何も悪いことは言ってない。私がただ一方的に怒鳴っただけなの』

彼女の周りにいた人皆が驚いた顔をした。

『え、じゃ、じゃあ新瀬は何も言ってないの?』

『うん、自己紹介してくれたんだ。それなのに…ごめんなさい』

彼女はまた俯いてしまった。

すると、俺の前にいた女の子は『ごめん』と一言うと佐久野の方に向きを戻した。

そして一人が佐久野に聞いた。

『こんなこと聞くの失礼かもしれないけど、どうして怒鳴ったの?』

佐久野は少し考えるそぶりを見せて、

『私には関わらないでほしいんだ。でないと…』

佐久野はまた黙り込んでしまった。

その様子を見た一人が、

『黙っていたらわからないじゃない。どうして?』

少し怒った口調で言った。

すると、

『私、呪われてるかもしれないんだ』

今度は周りの皆が黙ってしまった。

横に座っていた俺にもはっきりと聞こえた。

呪われてる?どういうことだ?

そして、佐久野はまた黙り込んでしまった。

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