五支目*白帝(午)
『簡単な事や。ねーちゃんと白夜が性交渉すれば、力が復活するんや』
何を言われたのか苦慮している。せいこうしょう……? 成功賞? って、つまんねーよ、馬鹿か! と、自分にツッコミを入れていると、白虎が更に追い討ちをかける。
「なんや、ねーちゃん、性交渉も知らんのか? 現代風に言うと、セックスって言うんや」
「ハッキリ言うな!! それくらい私も知ってるし!! って言うか、ずっと封印されてた癖に、どうしてそういう言葉は分かるのよ! 信じられない!」
「まぁ、そこら辺は……な」
何やら意味深な言い方で言葉を濁している。怪しい。
「主よ。奴の言うことは、嘘です。惑わされてはいけません」
「あーあ。白夜のアホ。折角騙せると思ったのに」
「やっぱり嘘ついてたのね?! 最っ低!!」
「いやぁ、ねーちゃんの反応がおもろくてな。騙しがいがあるで。ところで、真っ赤な顔しとるって事は、あんさん処女やろ?」
「んなっっ!!!」
どこまでも失礼極まりない白虎に、雪は狼狽すると、今度は怒りで真っ赤になる。
「いやいや、大事な事なんやで? 処女や無かったら、白夜の力取り戻せんからな」
「え? な、なんで?」
「純潔な乙女の血が必要なのです。本当はこんな事、貴方に話すつもりは無かったのですが。我は別に元の力など要らないのです」
「またまた〜。強がり言うとらんと、さっさとねーちゃんの血頂いたらええやん」
「白虎! 口を慎め」
「おー、コワッ! 白蛇さんは怒らすといつまでも根に持つからな。ワイ、ちょっと久しぶりに外の空気吸ってくるわ」
そう言うと、白虎はフワリと浮いて、スルリと天井をすり抜けて行った。
「さて、と。邪魔者はいなくなりましたし、今日はゆっくりお休み下さい」
「い、いや! まだ貴方の力を元に戻す話、終わってないよ!?」
「ですから、我は力が戻らなくとも、構わないのです。貴方に危害が及ぶ事など、したくはない」
「危害って……。そんな、大げさな。ただ血をあげればいいんでしょ?私は全然いいよ。白夜には、送り迎えとか、いろいろお世話になってるし」
「ですが……。結構な量の血を頂くことになりますよ?」
「いいよ! つべこべ言わずに、さっさと済ませちゃおう!」
「白夜殿! ご主人様がここまで仰るんですから、好意を無にする訳にはいきませんよぉ!」
「そうですわ。わらわが君主様の血を頂けるなら、絶対遠慮は致しませんわ」
二人に抗議され、白夜は考え込むと、納得した様だった。
「わかりました。そこまで言うなら、主よ。貴方の血を頂いてもよろしいでしょうか?」
「いいわよ。で、どうやって、あげればいいの?」
「手っ取り早いのは、我が蛇の姿になり、貴方に噛み付けば良いのですが……。痛いと思いますよ?」
「うー。や、やる前から言わないでよ!! どんと来いだよ!!」
「それだけの威勢があれば、大丈夫そうですね。では、失礼します」
白夜は、雪の服を肩まで下ろすと、首筋に噛み付いた。鋭い痛みを感じると、次第に噛まれている部分がジンジンしてくる。
どれ位吸われていただろう。意識が朦朧としていて、あまり覚えていない。白夜に声をかけられるまで、頭がボーッとしていた。
「主よ。……主よ! 少し、吸い過ぎてしまったかもしれませんね。やはり申し訳無い事をした」
「ん……。私は、大丈夫だよ。力はどう?」
「ええ。お陰様で、身体の底から力が湧き上がってくるようです。貴方の力は本物ですよ」
「そっか。それなら、よかったよ。ごめん、さすがにもう眠い……や」
そうして雪は深い眠りに入ってしまった。
---翌朝。思いきりドアを叩く音で目が覚めた。
「雪! 雪や! ええ加減起きないと、大阪来た意味がなくなるぞい! 早く出掛けるぞ!」
「んん〜。身体が……怠い」
「主よ。おはようございます。やはり血を吸い過ぎてしまったせいでしょう。動けますか?」
「ん。大丈夫。お腹空いたし、出掛ける準備する」
「ねーちゃん、ついに白夜に血を分け与えたんやな。白夜も昔と同じくらい、いや、それ以上の力がついとるのがわかるで。やっぱあんさん陰陽師の末裔なんやなぁ」
いつの間にか戻って来ていた白虎は、勝手に納得したようで、うんうんと頷いていた。改めて白夜を見てみるが、外見はいつもと変わらない様だった。
「とりあえず、着替えたいから、貴方達、何処かで待機しててくれないかな?」
皆口々に気にせず着がえろというが、無理に決まっている。無理矢理追い出すと、急いで着替えた。権蔵は待たされて少し機嫌が悪かったが、朝食を食べる終えると、機嫌が良くなっていた。
それからは、あっという間の二日間だった。観光地を巡ると、お土産を買って、荷物を送り、次の日は午前中に権蔵と梅の初デートの地を巡り、午後から東京行きの新幹線に乗った。
家に着いたのは、夕方だった。雪は連日移動ばかりでヘトヘトだったが、権蔵は疲れなど微塵も感じられなかった。本当に90歳なのかと疑ってしまう。
「つ、疲れた。足が痛いー!! おじいちゃん元気過ぎてびっくりだよ!」
「ふぉっふぉ。お前の体力が無さすぎるんじゃ。もっと鍛えろい。わしゃ、毎日朝の散歩と、その他諸々の健康づくりをしとるんじゃぞ」
一体、どんな健康づくりをすれば、そんなに元気でいられるのか。不思議に思いながらも、雪は自分の部屋に戻るのだった。
「ここがねーちゃんの部屋か。なんや、えらいせっまいなぁ。ワイの住んでた屋敷と大違いやなぁ」
「白虎よ。住まわせて頂くのに、失礼ですよ。それに、貴方は住んでいたのではなく、展示されていたのではないのですか?」
「まあ、正確にはそうやけど、前の主人の家かて広かったやないか。お前らよくこんな狭い部屋で寝れるな」
「狭い狭い言わないでよ! 嫌なら出てって頂戴! 貴方達が居なければ一人で十分なスペースなんです!」
「まあ、寝れんことはあらへんから、ええけどな。なんか、落ち着くし」
そう言うと、白虎はゴロンとベッドに寝転がる。寝心地がいいようで、そのまま眠ってしまった。
「ちょ、ちょっとぉ! ここは私の眠る場所なのに〜!」
十二支は意外と自分勝手というか、自由気ままな性格の者が多いのかもしれない。
「ところで主。そろそろ敵も、我ら十二支が集まって来ている事を気付いているでしょう。これから更に、仲間を見つけにくくなるに違いない」
「ええ!! も、もしかしてまた、悪霊に乗っ取られたりしてるかもしれないって事?!」
「最悪の場合、そう考えておいた方が良いかと。恐らく、更に強い敵も出てくるかと。覚悟して下さいませ」
「か、覚悟って……。私、わかんない」
雪はどうすれば良いのか、わからなかった。十二支達の様に、必殺技を持っている訳でもなく、印を結ぶ事すら出来ない。一体どうすれば良いというのだ。
「主は、主の思ったまま行動すれば良いのです。我らが、貴方の行動を妨げることは、出来ない。主の命令は、絶対ですから」
「そっか。とりあえず、ゆっくり考えるよ。でも、これからどうやって仲間を探したらいいの?」
「我の力が、以前より更に増幅したので、遠くまで移動することが出来ます。これからは範囲を広げて散策してみましょう」
「え、それって、全国津々浦々どこでも行けるってこと?!」
「左様。主の行きたい国があれば、仰って下さい」
「いや、特に無いけど、出来れば探すのは土日にして欲しいな。平日は学校あるし」
「承知致した。では、土曜日までに行きたい場所を探しておいて下さい」
*
---「とは言ったものの……。どこにしよう。やっぱり上から攻めるか」
大阪から帰って来てから、なんだか久しぶりの学校な気がする。一人でこれから行く場所を考えていると、香澄が声をかけて来た。
「雪ー。さっきから、何ブツブツ喋ってるの? 大丈夫?」
「え?! あ、ご、ごめん! 考え事!! あ、先週大阪に行ってきたの! これお土産!!」
誤魔化す様に、咄嗟にお土産を渡すと、香澄は怪訝な顔をしつつも、受け取ってくれた。
「ありがとう。そっか、お爺さんと大阪に行くって言ってたものね。楽しかった?」
「うん! でも、目まぐるしくて、ゆっくり観光出来なかったよ〜」
「あはは。ドンマイ。あのね、今週の土曜日暇?」
「えーと……。今週かぁ。ごめん!! 今回も予定入ってるんだぁ。また今度誘って!?」
両手を合わせて謝ると、香澄は残念そうに頬を膨らませる。
「またかぁ……。次は絶対予定空けといてね?!」
にこやかに笑うと、ポンと頭を軽く叩かれる。やっぱり綺麗だなと雪は思いながら、香澄に約束するといい、笑い返した。
*
土曜日になり、雪は目的地を白夜に告げた。行く先は、北海道だ。
「やっぱり上から攻めて行こうと思って」
「良い選択かと。少し飛ばしますので、しっかり掴まっていて下さい」
「ちょっと、白夜。わらわや白虎はまだしも、貴方ほどの力を持ち合わせていない白玉は、半日かかりますわよ?」
「僕も白夜に乗って行きますぅ!!」
「わかった。早く乗れ。しっかり掴まっていろ」
白玉は雪の後ろに乗ると、腰を掴んで来た。人型になっているので、何だか恥ずかしい。
「ご主人様、柔らかーい!」
「へ、変なとこ触らないでよ?!」
「わかっていますぅ!」
白夜は勢いよく起き上がると、物凄いスピードで、北海道へと向かった。今までの移動の速さとは違う。例えるなら、登り下りコースのない、ジェットコースターに乗っている気分だ。雪は必死にしがみ付いて目を閉じていた。
「主よ。着きましたよ」
どれ位目を瞑っていただろう。それ程経っていない気がする。スマホを取り出し時刻を確認すると、15分程経過していた。信じられない。
「ほ、本当に着いちゃったの?」
辺りを見渡すと、北海道と書かれている看板があった。どうやら本当に着いたらしい。更に近くの建物をよく見てみると、『競馬場』と書かれてあった。
「ねぇ、白夜。なんで競馬場なの?」
「何と言われましても。ここから我らの仲間の気配がするからですよ?」
「うーん。とりあえず、行ってみるか」
何故ここから仲間の気配がするのか、不思議に思いながら、意を決して中へと入ってみる。
(うわー! 競馬場って初めて入ったけど、結構人多い!!)
馬券売り場の側で皆、馬を当てる為に、必死に新聞を読んだり、マークシートを塗りつぶしたりしている。ふと、雪の側にいた男が何やらブツブツと文句を言っているのが聞こえて来た。
「最近の競馬はつまらねぇなぁ。毎回あの馬が勝っちまうんだから、賭け事の意味ねぇや」
雪はあの馬というワードが気になったので、聞いてみることにした。
「あ、あの。すいません! あの馬って、どんな馬ですか?!」
「あん? なんだ、ねぇちゃん。あの馬ってのはな、最近出てきた馬なんだが、毎回レースで1位なんだ。皆そいつばっかり当てやがるから、他の馬を当てる奴が少なくてなぁ。俺は他の馬を当てたいんだが、その馬が異様に速くて、勝負にならねぇんだよな」
「異様に……速い」
「ねーちゃん、その馬怪しいで。やっぱり十二支の仲間かもしれん。それに、上から怪しい妖気が漂っとる」
白虎も何かを嗅ぎ付けたらしい。上からとは、一体どこら辺なのだろう。しかし、上の階からは、有料なので、簡単に入る訳にはいかない。
雪は隅の方へ行くと、白夜達に相談する。
「ちょっと、不法侵入のようで、申し訳ないんだけど、いつものように姿を見えなくして欲しいんだよね。お願いできる?」
「勿論です。では、白鳳に時を止めて頂きましょう」
「わらわ、君主様直々に命令して頂きたかったわ! 君主様はいつも白夜にばかり頼りすぎですわよ!」
「え! ご、ごめん。じゃあ、白鳳お願い」
「承知致しましたわぁ!!」
白鳳は嬉しそうに印を結ぶと、時を止めた。すかさず白夜が術をかける。
「さあ、行きましょう。5階から敵の匂いがします」
「そ、そんな事もわかるの?!」
「ええ。貴方から頂いたこの力は、一生大切に使わせて頂きます」
「そ、そう。ところで、どうして私が封印を解く前に、仲間が出てきちゃってるの??」
「我も驚きました。敵の力も強くなってきている。恐らく、我らの仲間を封印から解いたのも、敵の仕業でしょう。それも、最悪の状態となって解放されているに違いない」
「そ、そんなぁ。また戦わなくちゃいけないのね」
雪はガックリと肩を落としながら、重い足取りで、階段をかけていった。
5階に辿り着くと、馬主席の扉の所で白夜は立ち止まる。
「ここです。ここから、強い妖気を感じる」
四支達は印を結ぶと、扉に空間が出来上がり、次々と中へ進入する。
室内は競馬場がよく見えるように作られてあった。そして、何人かの馬主が座っている。
「はん! あれで変装したつもりかいな! ワイにはわかるで。あいつは
「げっげっげ。お前達の前で変装は効かんか。でももう遅い。お前の仲間はオラが捕まえた」
白虎に呼ばれ、一人の中年男が振り向いた。すると、見る見るうちに、二本の角を生やした鬼の姿に変わっていく。
「お前見たいな小鬼、僕が退治してやりますぅ!!」
白玉は羊の姿に変わると、体毛を毟り、投げつける。
「げっげっげ。そんなもんでオラが倒せると思ったら、大間違いだで。出でよ
夜行がそう叫ぶと、競馬場がよく見えるガラス窓から、勢いよく真っ黒な馬が駆け出して来た。
馬は窓をすり抜け、夜行の前まで来ると、鞍に乗せる。
「びゃ、白夜!! なんか、この馬凄い嫌なオーラが出てるんだけど!!」
「さすが主だ。白鳳が憑かれていた悪霊とは、比べものにならない、強い殺気を感じます。主は離れていて下さい」
「ぼ、僕もこんな白帝倒せません〜!!」
「白玉! 弱気になんなや! ワイがあっという間に倒すで!! 覚悟せいや」
白虎はそう言うと、大きな虎の姿になり、身体から、凄まじい雷を放った。しかし、白帝はピクリともしない。
「なに!? ワイの落雷が効かへんなんて!!」
「げっげっげ。だから言ったじゃろうが。お前らには、この白帝は倒せん。一から出直せい」
夜行はニタニタと笑いながら、白帝に乗ったまま攻撃してきた。どうやら、意のままに操っているようだ。
「白帝の身体が、悪霊の呪縛で堅くなっているようですね。進化した我の力を見るがいい」
白夜はそう言うと、大きな白蛇になり、尾っぽで地面を叩きつけた。すると、大きな地割れが起こり、そこから清らかな水が噴き出てきた。
夜行と白帝にも水がかかり、突然苦しそうに暴れだす。そして徐々に身体が墨を洗うように、滲んできたではないか。
「な、なに?」
「身体に纏っていた悪霊が清水を浴びて、苦しみだしたのです。しかし、まだしぶといようですね」
夜行も苦しみながら、必死に清水がかからないように、白帝と馬主席から外へと逃げ出した。雪達も急いで追いかける。
白帝の身体は斑らに白い部分が見えるが、完全には悪霊を落としきれていない。夜行は最後の力を振り絞るように、自ら白帝の身体に乗り移った。
白帝はもがき苦しみ、のたうち回ると、真っ黒な身体となり、再び悪霊に身を包まれてしまった。
「あーあ。また振り出しに戻りましたわ!! わらわの地獄の業火で焼き払ってくれるわ!」
白鳳は、白帝に向かって炎を吐き出した。すると、白帝の身体はたちまち炎に包まれる。しかし、身体を震わせ炎を弾き飛ばされてしまった。
「わ、わらわの業火が!!! 夜行如きに弾かれるなんて!!」
「げっげっげ。ワシの力はあの方によって更に強くなったんじゃ。お前らがここに来ることも知っていたからな」
馬の姿になっても、夜行はまだ話す余裕があるようだ。
「知っていた?」
雪は問いかける。
「そうじゃ。あの方はお前らの様子をしっかり監視しているんじゃ。お前らに勝ち目はない。ワシら悪霊の自由な世界が待っているんじゃ。げっげっげ」
「減らず口はそこまでだ。お前にはここで消滅してもらう。白帝よ。主から頂いた血をお前も受け取るがいい」
そう言うと、白夜は白帝に絡まり、首筋に噛み付いた。
白帝は暴れまくり、とても苦しそうだったが、次第に眩い光が真っ黒な身体から、漏れ出し、暴れるのをやめた。
「な、なんじゃ、コレは!! ワシはこんな力は知らん! どうなっとるんじゃ!! 身体が言うことをきかんぞぉお!!!」
「さぁ、主よ。最後の仕上げです。我らの仲間を解放してあげて下さい。心の底から願うのです」
「小癪なァアァアあぁああ!!! ワシはまだ終わらん!! 終わらせん!!」
もがき苦しみながら、白帝から離れた夜行は、もはや本来の姿を失った、黒い炎になっていた。
そして物凄い勢いで雪に向かってきた。
「主!」
「ご主人様!」
「君主様!」
「ねーちゃん!!」
四支が声を揃えて逃げろと言おうとしたが、遅かった。雪の腕に黒い炎が絡み付いてくる。
「い、いや!! 嫌だ!! 熱い! 熱いよ!!」
炎が雪を焼け尽くすかのような勢いで燃え盛る。
(私は、結局何も出来ないの? 結局いつまでも逃げてばかりなの? あの時みたいに……)
「……っ! そんなの……。そんなの嫌だァアァアァアァアァアァアァア!!!!!」
雪は頭の中が真っ白になっていた。
苦しい。
炎の熱さからくる苦しさなのか、感情からくる苦しさなのか。自分のこの感情をなんと言ってよいのかわからなかった。
憤怒? 憎悪? 悲しみ? 切なさ? わからない。
一つわかっていることは、ただ、祈るだけ。
「私は祈る!!! 私の僕が無事であることを!! 私は願う!!! 私の元に戻ってくる事を!!!」
雪は叫んでいた。口が勝手に言葉を紡いでいた。同時に雪の手に絡まっていた悪霊は消滅した。
白帝は眩い光が続き、やがて一頭の麒麟のような馬が現れた。
雪は力なくその場に膝を着いた。仲間が皆駆け寄ってくる。
「主よ。よくやってくれました。おかげでまた一人の仲間が増えた。貴方は触れずに封印を解く事が出来たのですよ」
「あの……」
「私……。自分で何やってるのか、全然わからなかった」
「なんや、ねーちゃん。間抜けやなぁ」
「君主様! 腕が!! 火傷を負っていますわ! 白玉、早く毛を!!」
「は、はい!! ご主人様!! いっぱい食べて下さいね!!」
白玉は泣きながら、自分の毛をせっせと毟っている。この姿を見ると、どうにも食べにくいのだが、仕方なく頂く。
「あの……」
「しっかし、今回の敵は腹立つなぁ!! ネチネチしつこい奴やった!!」
「あの……」
「同感ですわ。悪霊なら悪霊らしく、正々堂々と戦って頂きたいですわ!!」
「あの〜〜」
「僕は自分の不甲斐無さが垣間見えて悲しかったですぅ」
「し、白玉は私の怪我を治してくれたじゃない」
「ご主人様ぁ!! 大好きですぅう!!」
「あーーのぉーーー!!!
突然の怒鳴り声に皆シンと静まり返る。声の主の方を見ると、白帝が近くまで来ていた。
「なんや、白帝。相変わらず存在感うっすいなぁ!! いつからそこにいたんや」
「最初からいましたよ!! 貴方方は私が話しかけても聞こえていなかったようで。もういいです」
プィっとそっぽを向かれると、四支達は必死になって白帝を宥めている。どうやら白帝は、意外とナイーブな心の持ち主のようだ。
「あ、あの! 白帝……でいいのかな? 気付いてあげられなくて、ごめんね? 改めて、これからよろしくね?」
雪は自分から近付いてみた。白帝は嬉しそうに鼻面を雪の顔にすり寄せてくる。
「お嬢様。これからは貴女が私の主です。夜行に無理矢理封印を解かれ、悪霊に侵食されながら、私は嘆き悲しんでおりました」
「そっか。もっと早く気付いてあげられればよかったんだけど、敵の方も封印解けるなんて思わなかったよ」
「どうやら敵も、昔のままではないと言う事ですね。我らも力を付けなくては。特に、力のある十二支がまだ見つかっていないですしね」
「え?そうなの?」
「ええ。それから、ここまで来る途中の国にも、仲間の気配をチラホラ感じられました。主よ。貴方が調べる必要は無くなりましたよ」
「まじ?! よかった! とりあえず、家帰ろう! 疲れた!!」
雪はヘトヘトになりながら、ようやく自宅へ帰る事が出来たのだった。
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