四支目*白虎(寅)

「はぁ……」

下校途中、雪は白夜の背中に乗りながら、ため息を吐いていた。


「如何致した。主よ」


「どうしましたぁ? ご主人様ぁ」


「どうしてわらわの背中に乗らないのです? 君主様」


そう。白夜だけではなく、残りの2支も常に一緒に行動しているのだ。疲れない訳がない。


授業中も、白夜は雪を見守りながら、先生の話を面白そうに一緒に聞いているので、まだいい。問題は残りの2支だ。


白玉は学校の探検が楽しいらしく、色んな場所で遊んでいるらしい。

この間は体育館のボールが面白かったらしく、ありとあらゆるボールを体育館にぶち撒け、後日先生達が生徒の仕業かもしれないと、全校集会で注意をする程だった。

いつ公共物を壊してもおかしくないので、冷や冷やしている。

そして、最近増えた仲間の白鳳はといと……。


「君主様。わらわは退屈で仕方がありませぬ。わらわは貴女と一緒に美の追求が出来れば、この上ない幸せなのに。折角お互い女に産まれてきたのに、何もしないのは勿体のうございます。しかし、この学校とやらは男子おのこ女子おなごが勉学を共にする場所とは驚きでしたわ。昔では考えられません」


こうして毎日雪の側から離れず、ずーっと喋り続けている。


封印を解いてから数日が経ち、白夜はともかく、後の2人も付いて来るようになった。しかも雪が疲れた理由は他にもある。それは、白粉婆を倒した翌日の事だった。



『ねぇねぇ、雪! 学校のすぐ近くにある本屋のお婆さん、突然いなくなっちゃったんだって!! なんでかな?!』


早速噂を聞き付けたらしい香澄が、話し掛けて来た。


『え……。あ、そ、そうなんだぁ。なんだろうね。ぐ、具合でも悪いんじゃない?』



『それにしたって、突然すぎじゃない? 今まで玄関で道行く人を不気味なくらい、ジーっと見てたのに、それが無いと逆に不気味っていうかぁ』



『そ、そう? そういうときも、あるんじゃない?き、きっと入院したんじゃないかな?』




『そうかなぁ? この間まで元気そうだったのにね。体育の先生も、骨折で入院しちゃうし、最近よくないことばっかりだよねー』


そう。あの体育教師、金本も、実は骨折して入院中だったのだ。

それを見計らった鬼が金本になりすまし、先生・生徒の記憶を改ざんしていたのだった。

今は鬼がいなくなったので、皆金本は最近入院したと思い込んでいる。


こうして何処にいても、気が休まることがなく、帰る頃になるとぐったりなのだ。


白玉も少し前までは、家で留守番出来ていたのに、白鳳が行くと言い始めてから行動を共にするようになってしまった。


「あ、あのさ。何も三人揃って学校来ることないんじゃないかな? 白夜一人だけでも充分だとおも……」


「何を仰しゃるのです!! こんな力の全くない白夜なんて、ただの空だけ飛べる白蛇ですわ!! わらわなら全てを兼ね備えているから、いつ何があっても大丈夫ですのよ」


「ぼ、僕だって、ご主人様が怪我をしたとき、いつでも治療出来るのですぅ!!」


前にも似たような事を言って、来てほしくないオーラを出したのだが、2支には全く通用しなかった。

今もこうしてやんわりと断ってみるが、どうやらこの2支は鈍いらしかった。

雪はこれ以上何を話しても無駄だと判断し、家に着くまで、白夜の背中に身体を預けた。


「ただいまー」


「おう。おかえり、雪よ」


家に帰ると、権蔵が出迎える。何やらまた頼みたい事があるようで、モジモジするのが権蔵の癖だ。

「あのなぁ、雪よ」


「なぁに? おじいちゃん」


「儂は、婆さんが亡くなってから、本当に何もやる事が無くなってしもうたんじゃ」


「……はぁ?」


只でさえ白夜達と行動を共にして、十二支集めで疲れているのに、おじいちゃんまで頼み事とは、さすがにやめて欲しかった。


「おじいちゃん、悪いけど、今は頼み事……」


「一緒に大阪に行ってくれんか?」


「……はっ?! お、大阪?!」


あまりに突然のお誘いに、雪はあんぐりと口を開ける。そして白玉、白鳳と続いて人の話を聞かない爺さんだ。


「実はもう、新幹線のティケットも予約しといたんじゃ」


「ぇえ?! そんなものおじいちゃんどうやって取り寄せたのよ!!」


ちなみに、権蔵の言うティケットとは、チケットの事である。入れ歯の関係で滑舌がたまに良くなる事があり、家族でもわからない時があるが、雪は理解出来ている。


「世の中には、インターネットというものがあるじゃろうが。お前、高校生にもなって、そんな事も知らんのか?」


「私だって、それくらい知ってるわ!! おじいちゃんがネット使えた事がビックリだよ!! でも、なんで突然大阪なの?」


「儂と婆さんの最初のデートは、大阪だったんじゃ。ええ思い出ばかりで、無性に行きたくなってのぉ。一人で行ってもつまらんし、お前を誘おうと思っての」


権蔵は昔を思い出したように、目を輝かせていた。

「主よ。もしかしたら、我らの仲間がいるかもしれませぬ。行きましょう」


白夜もこころなしか浮かれているようだった。



「……う、うん。まあ、大阪って中学の修学旅行以来、行ったことなかったし、気分転換になるかもね! 私も一緒に行くよ!」



「うむ。来週の金曜日は、お前も学校が午前中で終わりだと聞いておったから、準備が出来次第出発じゃ。楽しみじゃのう」



それだけ言うと、権蔵は笑いながら自室へと戻って行った。

何故来週の予定まで知っているのか、不思議に思ったが、とりあえず久しぶりの旅行という楽しみが出来たので、良しとしよう。



---あっという間に金曜日になった。

雪は学校から帰ると、着替えを済ませ、準備してあった荷物を抱える。



「雪よ。支度が出来たなら、行くぞい。タクシーを呼んでおったから、そろそろ着くはずじゃ」


「はーい! じゃあ、行ってきまーす!」


「行ってらっしゃい。気を付けてね」



母に挨拶を済ませ、二人揃って玄関を出ると、タクシーがタイミングよく到着した。


東京駅に着くと、大阪行きの予約していた切符を購入し、時間通り指定の新幹線に乗り込んだ。

もちろん白夜達も一緒だが、普通の人達には見えないし、透けているので、ぶつかる事もない。しかし、物に触れたり、人に触ろうと思えば触れるので、雪は少しヒヤリとする。


(あれだけ口を酸っぱくして言ったんだから、さすがにイタズラはしないと思うけど、白玉は心配だな……)


「ご主人様ぁ!! この、新幹線という乗り物は、凄いですねぇ!! 早いですねぇ!! どうやって動かしているんですかぁ?!」


「白玉よ。少し静かにしておれ。それにしても、大阪に着いたらまず何処に行きましょうね。大阪城は絶対行きたいですね」


「わらわは美しい場所に行きたいですわ!」


雪よりもこの三支の方がはしゃいでいる気がする。人型の姿で三支が揃うと、コスプレ集団に見えなくもない。


白鳳の人型は女性だった。豪華な中国衣装の様な着物に身を包み、真っ白い髪は綺麗に結わえており、少し残した髪は腰まで伸びている。顔立ちは全てが整っていて、自分で美しいと言っているのも、納得がいく。おまけにスタイルも抜群だ。羨ましい……。



白夜に至っては、昨日権蔵の部屋から大阪マップを持ち出してきて、色々な観光名所を調べていた。

(本当に、大丈夫かな……)


一抹の不安を抱えながら、雪は大阪に着くまで外の景色を眺めていた。




「雪や。こっちだぞい」



「ちょ、ちょっと待ってよ〜!」



目的のホテルがどこか分かっているかのように、権蔵はすいすいと先に行ってしまう。とても90歳の爺さんとは思えない。


雪は権蔵の分の荷物も抱えているので、更に歩き辛い状況だ。


ようやく目的のホテルに着いた時には、クタクタだった。



「部屋は別々に取っといたから、お前は好きな様に行動して構わんよ。儂は夕飯食べに行くまで、部屋でゆっくりさしてもらうでの」



「わかった。ご飯食べに行くの、6時だったよね?じゃあ、私も少し休むよ」



部屋の鍵を受け取ると、雪は部屋の中へと入った。室内はシンプルな造りで、落ち着きのある内装だった。

ぼふんとベッドに身を投げると、雪は伸びをした。


「ふぁー! やっと休めたぁ! ずっと移動しっぱなしだったから、疲れた」



「主は体力が無いですね。これから仲間探しに行くというのに」



「ちょっと! まさかこれから探しに行くとか言わないよね?! もう今日は疲れたから、明日にするよ!」



「え? 勿論、そのまさかですが。我らの仲間が、今も魔の手に及んでいる可能性があるのに、貴方は見捨てるのですか?」


「ご主人様ぁ! 僕も早く仲間に会いたいですぅ!」



「わらわは君主様がいれば、それでいいですわ。一緒にお風呂に入りません? お背中お流し致しますわよ。なんなら違う所も」



「それなら僕がやりたいですぅ!!」



「あ゛ーーー!! もう!! わかった!! 出かけるから!! 夕飯までには戻るからね?!」


結局気が休まらぬまま、雪は出かける羽目になったのだった。



「で? 何処に行くの?」


権蔵に夕飯までに戻ると言い、ホテルをあとにして、大阪の街を目的もなく歩いていた。


「そうですね。まだ仲間の気配が感じられないので、なんとも言えないですが、お城が怪しいかと思われます」


「お城って言ったら、やっぱり大阪城しかないよね……。これで間違ってたら、今日はもう探さないからね!」


「なんと……」


雪の言葉にショックを受けた様で、白夜は少し悲しい顔をした様に見えた。爬虫類の性質なのか、基本的に無表情なので、感情が読めないが、最近では少しだけわかるようにはなってきている。


「それでは念の為、白鳳に見てきて貰いましょうか。白鳳、仲間の気配があるかどうか、城へ向かって来てくれ」



「あ! そうか! その手があったんじゃん!! 白鳳、お願いしていい?」


「君主様からの命ならば、是非行かせて頂きますわ。では様子を見て参ります。少々お待ちくださいね」



そう言うと、白鳳は大きな白い鳳凰の姿になると、瞬く間に何処かへ飛び立ち、しばらくすると舞い戻って来た。


「お待たせ致しました。やはり白夜の読み通り、仲間の気配が城の中から感じられました。さぁ、わらわの背に乗って下さいまし」



雪は人気の無い路地裏へと移動すると、白鳳の背中に乗る。白夜が面白く無さそうな顔をしていたが、白鳳も乗らなければ、後々面倒なので、素直に従っておく。


初めて白鳳の背に乗ったが、滑らかな羽の触り心地が気持ちよく、快適な乗り心地だった。


「我の背の方が乗り心地が良いのに・・・」


「白夜よ。たまには良いではないですか。君主様を独り占めなさらないで下さい」


「僕だって抱き締めて貰うだけで我慢してるんですよぅ!! 羨ましいですぅ!! 今度は僕の背中に乗って下さいぃ!!」


「ふ、二人共乗り心地がいいよ! 白玉もいつかは乗せてね?」


移動中やはり白夜は文句を言ってきた。いつもは白夜の背中に乗っているから、主人を盗られたと思っているようだ。白玉まで文句を言っている。そうこうしている内に、大阪城へと到着した。


人気の無い所へ降りると、城の入り口に向かい、入場券を購入する。夕方ということもあり、人は疎らだった。


階段を登り、二階の展示コーナーを順々に回っていると、ある巻物が目に留まった。


それは一頭の白い虎の絵が描かれていた。たった一頭だけだったが、妙な重厚感があり、射る様な目付きで此方を見ている。


「びゃ、白夜これ!!」



「うむ。間違いない。我らの仲間、白虎びゃっこですね。どうやらまだ、悪霊には毒されていない様です」



「久しぶりに見たわね。相変わらず目付きの悪いこと」



「白虎ですぅ! 仲間が増えましたねぇ!!」




「じゃあ、早速封印を解かなきゃね。でも今は人目が多いから、なかなか姿を見えなくするのって、難しいかも……」



「わらわの力を使えば、少しの間、時を止めることが出来ます。その間に封印を解けばよろしいですわ」



なるほど、便利だと思いながら、白鳳が印を結ぶと、周りの人達が動かなくなった。


「後は、このガラスケースだよね。皆、お願いします」


「「「承知!」」」


三支は揃って印を結び、ガラスケースに不思議な空間が出来る。雪はそーっと巻物を取り出すと、途端に眩い光が辺りを包んだ。


すると、大きな虎が現れ、今にも雪を食らいそうな勢いで、睨みつけてきた。あまりの形相に、雪は怯む。


「なんや!! 一体どない主人や思ったら、こんなちんくしゃねーちゃんが、新しい主かい。大体もっと早く封印解かんかい!」


「んなっ……!!!」


あまりの言われように、言葉を失う。


「白虎よ。主に対して失礼ですよ。きちんとお礼を言いなさい。大体なんです? その言葉遣いは」


「うっさいわ!! ここに住んどったら、この喋り方になったんや。ずーっとここにいて、人間達しか目に入らんかったしなぁ」


白虎は猫の様にぐーんと伸びをする。やはりネコ科の一種なので、パッと見大きな猫にも見える。


「で、でも、無事巻物から出られて良かったよね! 悪霊に乗り移られなくて良かったよ」


「ぁあ゛っ?! なんやねーちゃん! このワイが悪霊なんかに乗り移られる訳あるかい!! ワイは西の白虎と言う異名を持つ十二支やで? バカにすんなや!!!」


「ひぃい!! す、すいません! すいません!」


身近に虎と接触したことなど無いので、流石に牙を向けられ怒鳴られると、恐ろしかった。


「主よ。何も謝ることなどないのですよ? 偶々保管されていた場所が、安全な場所だったってだけですから」



「お城が安全な場所なの? なんで?」



「ここは煌びやかな建物が多い。悪霊はあまり光の多い場所を好まないのです。白虎は拾われた場所がここだったので、狙われにくかったという訳です」



「はっ! ねーちゃん、陰陽師の血を受け継いでる割には、そういう知識ないんかい。益々不安やな。白夜も、さっきからいちいちうるさいで!」


(……うっ。確かに陰陽師の事、何にも知らないけどさ。最近知ったばかりだもん、仕方ないじゃない!)


反論すると、襲いかかられそうなので、心の中に留めておく。


「君主様。そろそろ時を戻さなければなりませんわ。わらわはそんなに長く時を止められませんの」



「あ、そうなんだ。ありがとう! 助かったよ!」


「ぁあ! 君主様に感謝されるなんて、畏れ多い! わらわは幸せ者ですわ!」

白鳳は異様に喜んでいたが、雪はスルーする。周りを見渡すと、お城を見学する人々が元通りに動いていた。


唯一変わった事と言えば、白虎が描かれていた巻物がガラスケースから無くなり、皆気付かずに、重要文化財を見ている事だった。きっと、毎度の事ながら、記憶がすり替えられているのだろう。



「白虎よ。我らと共に仲間探しを手伝ってくれ」


「ワイは、今封印から解放されたばかりやで! ちぃと自由にさしてくれや!」


「別にご主人様と一緒に居ても、自由に行動出来ますよ? 一緒に行きましょうよぉ!」


「なんや、白玉。暫く見んうちに、またちっさくなってへんか? そこまで言うなら、しゃあないわ。ねーちゃん、よろしゅうたのんます」




「は、はい。よろしくお願いします」



「ぼ、僕は変わってないですぅ〜!」



白玉の抗議も虚しく、白虎はカッカッと笑っていた。こうしてまた一支仲間が増えたのだった。



約束の時間ギリギリにホテルに着くと、雪は権蔵と再びホテルを出た。


「うー。折角休めると思ってたのに、また出かける事になるなんて」



「何を言っとるんじゃ。お前が勝手に出掛けてたんじゃろうが」



「それはそうだけど! こっちだって好きで出掛けてたわけじゃないし!」



「何を訳の分からん事言うとるんじゃ。最近お前変だぞい」



十二支の仲間を探していたとは言えないので、あやふやな言い訳をすると、権蔵に不審に思われてしまった。



「ほれ、着いたぞ。儂が行きたかった居酒屋じゃ」



「居酒屋って、私お酒飲めないんだけど。普通のご飯もあるの?」



「未成年のお前に酒を飲ませる気なんぞサラサラないわい。普通の飯もあるから、安心せい」



そう言うと、権蔵はガラガラと店の扉を開けた。中はカウンターと、座敷に分かれており、雪達は2人だけなので、カウンターに座る事になった。


花の金曜日という事もあり、中はサラリーマンが結構いて、混雑している。



「なぁなぁ、ねーちゃん、美味そうな匂いするけど、これ、何や?」



突然声を掛けられた方を向くと、見たことのない青年がそこにいた。しかし、見た目からして、十二支の仲間に間違いないだろう。


短めで、白いサラサラしていそうな髪に、肌は少し日焼けしたように黒っぽい。強気な眉毛に、猫っぽい目。にっと笑うと、八重歯が見えるのが特徴的だなと思った。きっと、白虎で間違いないだろう。白い神主が着ていそうな着物を着ている。



「えーっと。多分、白虎で間違いないよね?」



「当たり前やん! こんなイケメン何処探してもおらんっちゅーねん!」



「白虎よ。いけめんとは、何です?」



「あ? そんな事も知らんのかいな。遅れとるなぁ。要は顔がええっちゅうことや!」



「なるほど。主は我に初めて会った時、我の風貌を気に入って下さったのですね。ありがたき幸せ」



「そ、そんな事言ったけ?? お、覚えてないなー。あ、て言うか、十二支って、食べ物食べれるの?!」



白虎が余計な事を言ってしまったせいで、白夜に意味を知られてしまった。雪は慌てて話題を逸らす。



「まあ、食べれん事あらへんなぁ。食べた物は、力に変わってくれるし。ま、食べなくても全然かまへんけど、ちょっとそれ、気になったからな」



白虎が指差したのは、串カツだった。大阪名物の一つだが、白虎のいた時代には無かったのだろう。興味津々でソースを付けて食べている人達を見ている。


「あ、ああ。串カツね? 美味しいよ。そうだ、今食べさせてあげる訳にはいかないけど、持ち帰りにしてあげる!」



「雪や。さっきから誰と喋っとるんじゃ? 大丈夫か?」


「な、なんでもない! 食べよう!」


そうして美味しい夕飯を食べ、夜お腹が空くと理由をつけ、串カツを四支分お持ち帰りで注文した。


ホテルに着くと、早速串カツを渡す。どうやら皆気に入ってくれたようだ。


「美味いなぁ!! 生まれて初めて、こんな美味いの食べたわぁ。ねーちゃん、おおきに!」


「主よ。ありがたき幸せ」


「僕もこんなに美味しいの初めて食べましたぁ。ありがとうです」


「わらわも、こんな珍妙な食べ物、初めてですわ。でも、なかなか美味しいですわね」



「ありがとう。気に入ってくれたなら、良かった」


「ところで、白夜! なんで、お前そんなに力が弱まってるん?まだねーちゃんと契約してないんか?」



「え? 契約?」



「せや。ワイらが封印された時、下界の様子を見るために皆の力を使ったんやけどな」



「ああ、その話なら、聞いてたけど」



「問題はその後や。ワイらが力を全力で出そうとしたら、白夜が殆どの力を使ってしもうたんや。おかげでワイらの力は残ったんやけどな。こいつ、情に厚いとこあるからなぁ」



白虎がニヤニヤしながら、白夜を見ると、不貞腐れたように、白夜は白虎を睨みつける。



「そ、そうだったの? でも、白夜は力を戻す方法があるって!!」



「あるには、あるで? ねーちゃんの協力が必要やけどな?」


「私に出来ることがあるなら言ってよ! これでも、あなた達の主人……なんでしょ? 何すればいいの?」



「簡単な事や。ねーちゃんと白夜が性交渉すれば、力が復活するんや」



「え゛っ……?」



白虎はにっと、妖しげな笑みを浮かべたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る