恵理香 07-父の顔
10歳も年下の女と、どっちが年上か分からなくなって来た。
「寒いしお風呂沸かしていい?」
俺のシャツを体に掛けると風呂場に行った。
ぶかぶかに見えるシャツは、尻まで隠れている。
「ビール飲む?」
「あぁ」
「お湯溢れるよ」
俺がまた始め様とするとそう言って来る。
「そんなのいい」
「ダメ!! 勿体無い。見て来るからちょっとタイム」
経済観念は俺より確かだ。
ベッドがギシギシと煩く、きっと隣に聞こえていると思ったが、俺にはそんな事どうでも良かった。
さっきより少し声が大きかった。
出し終わった俺のを見ている。
「もういいの?」
「ああ、収まった」
「じゃお風呂に入ろ」
有り難いことに体を洗ってくれた。
デートクラブの結衣や、天使の真理さんが一瞬頭を過ぎる。
「いつ家を出て来た?」
またジロッと睨んで来る。
「半年・・・」
そう、半年前の寒くなって来た時だった。
「おとうさんもう止めて」
恵理香はお父さんとは呼んでも、本心では無かった。
中学入学の時に知った母の再婚。
「あたしの本当のとうさんじゃないんだ」
その時から父さんとは思えなくなった。
小さい時に死んでしまった本当の父の思い出は、恵理香には全く無い。
顔を覚えられる時まで生きていて欲しかった。
しかし、一歳の時ではどうしようも無かった。
恵理香の一番古い記憶、それは母にいつも叱られ打たれていた思い出。
毎日泣いていた思い出。
可愛がられた記憶は一度も無かった。
いつも可愛がられるのは弟。
今の父と母の子。
第3話 @shino_kyosuke
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。第3話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます