恵理香 04-掃除

以前から頼まれていた支店の一つに寄り、俺の姪と言うことで即採用になった。

9時から5時までで、真面目に働けば15・6万にはなる筈だ。


「贅沢は出来ないけど、3分の1の家賃と光熱費を払って、食費と少しの小遣い位にはなる」

「ううん、今までより遥に多い」

「なら良かった」

支店から会社に電話して、直帰の旨を伝えて切ると同時に聞かれた。


「紫野さん結婚してる?」



結婚?

こんなもてない俺がしてる訳が無いだろう。

金を払わないで遣ったのが、二人目だとは到底言えません。


「いや、独り者」

「一人で住んでる?」

「そうだけど」

「家に行っちゃダメ?」


また変な事を言っている、そう恵理香が考えた。

「別にいいよ」

「よかった」


恵理香にとって友達二人との共同生活は、初めの考えと違い楽しいものでは無かった。

昼間の仕事をする恵理香と違い、二人は初めから風俗で働き、帰る時間は深夜だった。

二人が帰ってくる度に起きてしまう。

夜は少しの音でも目が覚めてしまった。



アパートの部屋に入ると、またジロッと俺は睨まれた。

「掃除してるの?汚いし男の匂いで臭い」

「・・・仕方ないだろう?男の俺が一人で住んでいるんだから」

「男だったら掃除しなくていい?」

「いや、それは・・・」


そんな事は確かに無い。

この娘と喋っていると負けてしまう、と考えたので話題を変えた。


「何か飲む?冷蔵庫を開けて好きなものを飲めばいい」

ドアを開け覗いた途端にまた睨まれた。

「何よこれ、お酒とビールとまつみばかりじゃない」

「コーラとジュースと牛乳も入っているぞ」


また睨まれた。

「紫野さん何にする?」

ビールを出してくれ、自分はジュースをコップに注いだ。

「酒は飲まないのか?」

「あたし歳言ったわよね?」


ほー、20歳まで飲まないってか?

「あたしを飲ませて何かしたい?」

「そんなことは・・・」

「考えてることくらい分かる」

「別に、そんな・・・」


「困った顔して・・・心配しなくても後でいっぱい遣らせてあげる」

「はぁ、有り難う」

「紫野さんって面白いね」

「ご飯作ってあげるから買い物に行う」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る