第9話
色んな出会いサイトを調べている内に、多くの事が分かって来た。
無料、有料に拘わらずサクラが必ず居て、そのサクラの殆どが同じ人間。
当時は今の様に会員数が何万、何十万と居る大きなサイトでは無かった。
サクラを雇うほどの規模では無く、一人で遣っていた。
然も女では無く男だという事実に気付くのに、そう時間は掛からなかった。
メールを比べると、何人もの喋り口がそっくりなのだ。
別人に見せようとし、そして無理をして遣う女言葉、しかし慣れていないと絶対に分からない。
里奈と歩美の言葉遣いが似ていて当たり前、同じ人間だったのだ。
俺はターゲットをどうするか考えた。
その当時に流行り出した熟女ブーム。
よし、これだと考え掲示板を一新する。
「私は28歳で結婚2年目の会社員。40代の年上の主婦の方に色んな事を教わり・・・」
若い女の言葉遣いは易しい。
しかし、40代の主婦となると難しい筈と考えた。
この考えは的中し、メールの数が半減する。
掲示板を見ていないのか、それとも無視しているのか?
「あたし21歳の大学・・・」
「19歳になったばかりの看護学校に通う・・・」
「29歳の専業主婦です。京介さんと・・・」
メールを出さなくなると、40代の主婦という人達からのメールが増え出した。
「43歳の主婦してます・・・」
「48歳の普通の主婦ですが、こんな・・・」
注意深く徹底的にメールを調べた。
このサイトはメールを開くのに100円、しかし送らないのでそんなに金は掛からなかった。
そんな多くのメールの中から、俺は一人に的を絞った。
真理と名乗るその女は、41歳のパートをする主婦とある。
どこから読んでも今までのメールとは違っていた。
先ず女おんなしていない。
どちらかと言うと男っぽいその言い方・書き方で、サクラらしくない文面だった。
もしこれがサクラだったら俺の考えが甘く、そして手に負えないと諦める事に決めた。
俺は10ヶ月振りにメールを送った。
そして何回かの後・・・
「会えますか・・・」
「会ってもいいけど、すぐに帰るかも知れないわよ。それでもいい?」
この女との出会いが、俺にとって人生を一変するとはその時は知る由もない。
10年が経った今でもはっきりと覚えている。
スーパーに買い物に来た感じの、どこにでもいる普通のおばさん。
ひかり物一つ身に着けず、メークもほんの少し。
ふっくらとはしているその身体は、決してデブでは無い。
顔は十人並みで、目立つ所は一つとして無かった。
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