9 連繋
「『確かに』ってどういう事よ葵!?」
伊藤聖子は葵に向かって不満げな表情で呼びかけた。
高さ5センチほどのミュールを履き、目の粗い網タイツに膝上20センチのミニスカートと、へそが見えるほどの丈の短いキャミソール姿で仁王立ちしている、身長170センチ近くある、B93?、W60、H88というナイスバディを惜しげもなく露出した、モデル張りの女性(?)である。
「ちょっと聖子!あなた何で男のくせに私なんかよりずっと女っぽい恰好してるのよ!ホントの名前は聖(さとし)のくせに!!」
「うるさいわね!私はトランスジェンダーなの!中身が女なんだから、外見が女でも何も問題ないじゃないの!!」
金髪セミロングのソバージュを振り乱しながら、聖子=聖は葵に反論した。
「まあまあ2人とも、同僚なんだから仲良くしなさい」
神門が口論を制した。
「あら課長、私達仲良しですわよ!」
聖はこう返した。
「ええ、聖子の言う通りですよ、課長!」
葵も同じく返した。
「うーん、全く仲がいい様には見えんのだが……」
神門は怪訝そうな顔で2人を見つめた。
「それより田浦は何か話したか?」
「ええ、あの女、『私は正当防衛よ!逮捕される意味が解んないわよ!』の一点張りで、全く取り調べが進まないんです。どうしたらいいのかしら……」
困った表情を浮かべる聖。
その様子を見た葵は、
「ねえ聖子、田浦奈緒子の出身地ってどこ?」
と訊ねた。
「えっ?……確かガイシャと一緒だった筈よ」
「まさか、M県M市?」
「そ、そうよ!何であなたが知ってるのよ!?」
驚いた聖はまん丸い目で葵を見た。
「苗字よ」
葵は冷静に答えた。
「あ、あなたそういえば九州の出身だったわよね」
「ええ、祖父の家が福岡にあって、高校まで住んでたからね」
「そっか、『上園』とか『田浦』って、九州に多いのよね」
「うん、南部に特に多いのよ。それと本牧の事件でも、同じM県M市出身の人間が殺されてるのよ」
葵の話に更に驚いた様子で
「そうだったの?何で横浜でM県の人間が立て続けに殺されてんのよ!?」
と聖は葵に訊ねた。
「それが解れば苦労しないわよ」
葵は歯がみながら答えた。
「そうか、M県M市……。ガイシャの年齢も同じだったよな」
神門は葵と聖にこう尋ねた。
「えっと、本牧の宮川登は39歳でした。参考人として身柄確保している鈴村純も39歳です」
葵はこう答えた。
「えっ?上園和昌は38歳だわ!田浦奈緒子は39歳だけど」
一方聖はこう答えた。
「上園は年齢が違う様だな」
神門はそう言った後、黙ってしまった。
「ちょっと、上園って誕生日はいつなの?」
葵は聖に訊ねた。
「えっとぉ……確か昭和52年2月26日だったわ」
聖は記憶を頼りに答えた。
「田浦は?」
「昭和51年7月22日……」
「早生まれなのよ上園!!同級生じゃない、他のメンバーと!!」
「何で?」
「宮川も鈴村も昭和51年8月の生まれなのよ!」
「えっ?そうなの?」
2人の会話を聴いていた神門は、
「まずは横浜に住むM県M市の出身で、昭和51年4月から52年3月までの誕生日の人間を探すんだ!」
と2人に指示を出した。
「はい!」
「了解です!」
葵と聖は神門に敬礼した。
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