第四話 スペクトラムマンよ!永遠に!! その1
最終話 スペクトラムマンよ!永遠に!! 第1章 -----------------
薄暗い部屋にモニターが並ぶ。居並ぶ者達は、身じろぎひとつせずモニターを凝視している。
続々と世界中から入ってくる情報は、すべてついに「その時」が来たことを示していた。
「バイブル指令。侵略者の目標地点の特定終わりました! 」
オペレータが分析結果を報告する。
「報告したまえ!」
国連の秘密機関……今や世界最大、史上最強の軍事力を持つ組織となったが……『対外宇宙侵略機構』の司令にしてアメリカ国防長官、バイブル将軍はモニターを凝視しながら低い声で命令する。
「アジアに3箇所、ヨーロッパに2箇所、アフリカに2箇所、北米に2箇所、南米に1箇所……そして日本に1箇所。以上11箇所です」
バイブル将軍「よろしい。迎撃準備用意……。各ミサイル基地は戦闘態勢に入れ!」
オペレーターが一斉に各基地に指令を伝達する中、将軍はゆっくりと後ろのモニターを振り返った。
「どう思うかね?Dr.田所」
モニターには、だるまのようないかめしい風貌の日本人が写っている……。対外宇宙侵略機構の日本支部代表代行、地球物理学者 田所博士である。
実は機構の正式な日本支部代表は内閣官房長官、副代表は国土交通大臣であるが、彼らには荷が重過ぎるらしく、めったにでてこない。
田所博士が事実上の日本支部代表となっていた。
田所博士がうなるように話し出す。
「リラ博士の作戦だが……」
「アジアの1隊は北京から中央アジア、ロシア方向、1隊は上海から海沿いをインドシナから海路をインドネシア、オーストラリア、ニュージーランド……さらにもう1隊はタイからインドを通り中東方面……」
博士の声がだんだん大きくなっていく。
「ヨーロッパはイギリスに1隊、ヨーロッパ大陸の北を回って西からロシア方向……1隊はスペインから南を回ってトルコ、中東方面。アフリカはカイロに1隊、南アメリカに1隊、時計周りに海岸ぞいに制圧……」
博士は眼鏡をはずし、目しばたたかせる。
「北米はカリフォルニアに1隊、カナダ方面に北上……ワシントンに1隊、メキシコに南下。南米はブラジルに1隊……メキシコから南下してくる隊と合わせてやはり海岸線から制圧」
バイブル将軍があいづちをうつ。
「そんなところだろうな。」
「……そして、日本か。なぜ日本にわざわざ1隊を? 」
その時、オペレータの緊張した声が割り込んだ。
「指令、大変です!トラブル発生です。北米基地につなぎます!! 」
身を乗り出す将軍に北米基地からの報告が入る。
「降下中のプリティ獣よりディープパープルのビームが発射され……はい、地下300mのミサイル格納庫まで壁をすり抜けて…… ロケット燃料がのこらず水に……。」
愕然とする司令室の面々……。と、すべてのモニターの画像が一斉にきりかわり、ピンク色の衣服に身を包んだリラ博士の姿が移しだされた。
「だめよ!おいたしちゃ……(はーと)」
リラ博士はいつものようにボディランゲージたっぷりに話つづける。
「プリティ獣を大気圏外で破壊しようなんてムダよ! 核爆弾の直撃でもへいちゃらなんだから……。だけど、下手すると地球が汚染されるでしょ?ロケット燃料と……」
ウインクしながら恐ろしいことを言い出した。
「核弾頭は無力化したわ!」
あわてて点検するミサイル基地要員から呆然とした声で報告が入る。
「プルトニウムが鉛にかわっています……」
田所博士「ゲームオーバーだな」
呆然とするバイブル将軍に田所博士がつぶやく。
「同じ一撃でノックアウトされるにしても、KISSする事さえできんとは……」
バイブル将軍が格闘技ファンであったとしても、このジョークが通じたかどうかはわからない。
…………………………………………
国土交通省には来るべき大災害に備え、緊急指令室が設置されている。
いわば日本全体の司令室と言っても過言ではないだろう……。
その片隅で通信モニタのスイッチを切った田所博士は、ゆっくりと立ち上がった。
この3日間寝ていない。体は鉛のように重く引きずるようにしか動かないが、彼には代表代行としての最後の勤めがあった。
これから、各マスコミを集めた侵略者とプリティ獣の侵攻についての緊急記者会見があるのだ。
彼は一人つぶやいた。
「残る最後の希望は……彼、だけだ」
最終話 スペクトラムマンよ!永遠に!! 第2章 -----------------
……話は前日にさかのぼる。
すがすがしい朝。部屋にはキンモクセイのさわやかな香りが立ち込めている。
今どきめずらしいちゃぶ台風の食卓の上には納豆とコップ。
「…………」
若い男は先ほどから黙々と納豆をこねていたが、突然作業を停止し、一気に口の中にかきこむ。
続いて、コップをとりあげ一息に飲み込む。コップの中の液体は……
おおっ!なんということかドンペリのロゼ ……ピンドン(=ピンクのドンペリ)というやつである!!
王者の酒、ドンペリのさらに数倍の価格……高級なクラブなんか行っちゃうと、コップ一杯、数万円であろうそれを無造作に飲み干すと、男はちゃぶ台に突っ伏して今度はなにやら泣き始めた……。
浜田省吾は「MONEY」で勝者の4つの条件を歌う。
純白のベンツ、プール付きのマンション、最高の女、そしてベットでドンペリニョン。
(注:マンション=mansion:邸宅の事です。日本ではなぜか?コンクリートの箱を指しますが……)
その1/4をすでに若干20歳で果たしているというのに、この男は何を嘆くことがあるのだろう?
「うおおおおおおーーーー!!やってられんわ!!」
「………この一週間、納豆とドンペリばっか じゃああ」
男はわれらがヒーロー……蒲生博二であった。
彼は宇宙からの侵略者 リラ博士(=リラ姐さん)との闘いにより、プリティ獣のビームを浴びたため脇の下からはキンモクセイの香り、そして体内でドンペリ(しかもサービスでロゼ(爆))と結構うまい納豆を生産するようになってしまったのである。
地球を救う死闘の末、彼が得たものは「食費が浮いたことくらい」であった。
そのとき、突然、窓の外が強烈な光に包まれた。
「な、なんだと!?」
なんと、窓の外には巨大なアダムスキー型UFOが!!
そして、切れていたTV(もちろん中古のブラウン管TV)のスイッチがいきなり入り、画面にリラ姐さんとゴーが映し出された。
リラ姐さん「おーーほっほっほっほほほほ!見つけたわよ……スペクトラムマン!!」
博二 「くっ……いったいなぜ俺がスペクトラムマンだとわかったんだ? 」
リラ姐さん「おーほほほ。簡単なことよ。へとろん、ねおへとろん、ヨンダーゲイの3つのナノマシンの反応を持つ人間……それこそすなわちスペクトラムマン!!」
「だてに、離れた地域を攻撃していたわけじゃないのよ。こんな回りくどいことせずにもっと簡単にマーカー用のナノマシンを使ってもよかったんだけど……ネピラ警察が感づいちゃうでしょ?」
リラ姐さんがパチンと指を鳴らすと巨大UFOからマリンブルーのビームが発射され博二を直撃した。
すると、体が窓をぶち破りそのままぐんぐんUFOに引き寄せられる。
博二 「よくSF小説なんかに出てくるトラクタービームというやつか……」
マンガなんかでUFOが人間や牛(爆)を誘拐するときに使う「アレ」である。
博二の体はUFOに吸い込まれ、そのままマシンハンドに捕まり、壁に大の字に貼り付けられた。
博二 「くそっ……ネピラ警察からの変身許可信号がないとスペクトラムマンになれないし……一体、どうすればいいんだ」
そのとき、壁が開き、リラ姐さんとゴーが入ってきた。
博二 「この野郎!!離せ!この、猿の惑星が!!」
リラ姐さん「ほほほ。この口の悪さは本物に間違いないようね!(何のことかしら猿の惑星って??)……とにかく、あなたという邪魔者がいなくなってやっと本腰をいれて地球改造作戦にとりかかれるわ!」
リラ姐さんはいつになく上機嫌である。
「気分いいから、ちょっと私の計画を説明してあげるわ!」
壁の一面が光りだし、巨大なモニターとなる。そこには巨大な月といくつかのピンクの塊が映し出された。
リラ姐さん「これは月の裏側に集結中のプリティ獣部隊よ!」
「ヨンダーゲイ1機にへとろん、ねおへとろんそれぞれ10機ずつで、1部隊……それを11部隊で地球を(正確には人類をだけど)改造するの!!」
「へとろん と ねおへとろんのビームも透過型に改良済み。地球人類がどこへ逃げてもムダよ。この作戦が終了すると人間はかなり地球環境にやさしい生き物になっているはずよ! 何しろ食料自給自足(納豆だけど)なんだから……おーほっほほほ!!」
博二 「てめー!!ぶっ殺す!!」
リラ姐さん「ま!やあねえ……未開動物は。でも、おとなしくしておいたほうが身のためよ!!これをみなさい」
画面が切り替わると、女性の姿が映し出された。何やら壁をたたいて助けを求めている。
博二 「玲子さん!き、貴様あああ!! 」
リラ姐さん「ほほほほっ。あなたの身辺調査をして、このメスが人質に有効なのは確認済みよ。あなたが作戦中、おとなしくしていればこのメス人類もあなたも無事返してあげるわ。妙な考えを起こさないことね!」
さって行くリラ博士。
博二 「玲子さん…………」
…………………………………………
UFOのコントロールルームに戻ったリラ姐さんは高らかに宣言した。
「ゴー!ノヴァ…テラフォーミングオペレーション(=新地球改造大作戦)発動よ!!」
ゴー 「ムッホ!! 」
つづく
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