人生の終わりに

作家は悩んでいた。もうすぐ60だ。書きかけの大作がある。しかし、構想が固まらない。電話で叔父に言われた。60を過ぎたら衰えるだけだと。大作だけではない。ショートショートも書けない。何も書けないのだ。

もう、作家の看板をおろそうか。人生の収束を考えようか。意欲があっても能力がないとダメだ。

そうだ、俺は精神障害者だ。時給100円で働いている。労働基準法の外側なのだ。ブラックだ。私はブラックで働いてはいけない。ふと、そう思った。

関係者はたくさんいる。障害者センター、区役所、訪問看護、ヘルパー、友達。

ただ、家族がいない。5年前に離婚してもらった。父と母は離婚。私はどちらの家にも入れない。誰が先に死ぬ。多分、父、俺、母、弟。父は86だ。母は81だ。俺は59だ。弟は56だ。

葬儀にはこだわりがあったが、今はそれもない。友達。本当の友達は一人か、二人。

華やかな時代もあった。それも今は恥ずかしい思い出。

医療と福祉で生きている。金がない。それでも生きている。

社会で活躍するから、社会の中で生きるへ。シフトチェンジできない。

しかし、見た目は浮浪者だ。顔じゅう毛むくじゃらだ。散髪する金もないのだ。

美学が欲しい。俺には美学がなかった。ただの放縦。うぬぼれワルツだ。

もう1本行きますか。誘惑に弱い私だった。

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