第2話 日常の附票(2)
次に目を覚ますと、僕は保健室に居た。
「大丈夫?」【疑問】
保健の先生がこちらの顔をのぞき込んできた。
「……すみません」【回復】
天井に意識をやると【石膏ボード:取替え後10年】【LED管:取替え後3年】。窓に意識をやると【強化樹脂窓:取替え後10年】【アルミ枠:取替え後10年】。その先に意識を移すと、それらの
空を見た。窓の外の空には、附票は付いていない。いつも通りの、何も紐付けられていない青い空だ。
あれは、気のせいだったのだろうか。
気のせいで
「朝練の直後にブッ倒れたんですって? どうせ朝御飯抜いたんでしょ。パンでも食べて行きなさい」【処方】
「あっ……はい。いや、抜いたんじゃないんですけど」【気のない返答】
「だったら足りなかったんでしょ」【ツッコミ】
保健の先生に言われるまま手に取ったパンにも、読みとろうとすれば附票が満載。【菓子パン::製造年月日:21xx年3月1日1500;100gあたり熱量:203kcal;原材料:小麦粉:遺伝子組み換え;シーズニング・砂糖・イーストフードミックス;特記:官納品】 食べても特に美味くも不味くもない、そんな普通のパンにも附票付き。
「もう大体大丈夫そうね。食べ終わったら授業に戻りなさい」【指示】
僕は黙って頷いた。【肯定】附票は付けなくても伝わるだろう。
二時間目の授業は社会だ。
昔は、中高の社会といえば暗記科目だったという。何がいつ起きたか暗記して正しく答えるのが社会の試験だったそうだ。今は違う。人間の頭で覚えられる程度のことは、
だから、事実を自分はどう考えるか、その考えに至る
「……おい。
すみません、先生の話を
とはいえ、その質問もほとんど「検索すれば出てくる知識」を聞いてるだけのような気もするのだけど。検索小道具に質問を
「RDF、Resource Description Framework。インターネット上のリソース同士の関係をメタデータとして記述するための記法で、W3Cが……やがて本来の目的を外れてリソースの便概を配信するために使用され」
「そっちじゃねえ。俺が今聞いたのは、昔のゴミ燃料の方だ」【強調】【怒気】
……やっちまった【落胆】。
「全く、考えず聞きもせずに検索に頼るからそんな間違いするんだよ。そもそもその答え自体検索の引き写しの棒読みじゃねえか」【呆れ】
「すみません」【謝罪】
それにしても、さっきまで『落ちて』いたのに考えろ、まともに授業を聞けというのも無茶な話だ。というのも言い訳にしかならないんだろうけど。
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