看板

「ただ夜に寝て、起きたらまた夜だった訳だ。何の問題もない」

 少年は現実を目の当たりにして、突拍子もない行動に駆り立てる。目の前に居た「微笑みの死」そのものを思い切り蹴飛ばした。

 数メートル先に倒れた、もはや古くなった女の笑顔の正体。顧みられる義務から解放され、古臭い笑顔の主は大きな悲鳴を夜の町に響かせ、また静かになった。

 何故そんなことを? 淋しかったからだ。

 殺人者の精神。それは全く空しい光景だった。もはや只の塊、粗大ゴミ。明日になったら清掃作業員が何の疑いもなくどこかへ片付けてしまうだろうか? あの地響きを轟かせるトラックに載せられて? それとも、規定に外れている、という理由で放置されるだろうか? 作業員はようやく警察の存在に気付くかもしれない。

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