4話

俺達は周りを注視しながら歩いていった。が、結局は何もなく、フェイクの部屋と罠の部屋に翻弄されただけであった。

「ああ、クソ!なんもねぇー。さっきから上に行ってる感じがねぇし」

少しフェイク部屋で休むことにしたとたん、俺はそう言った。

二人とも、苦笑いをしたが結局はまた暗い表情に戻った。

「……上に行くにはどうすればいいのかな?」

「ああー、まあそうだよな。うん、怒っても意味ないな」

「どうしたの、急に冷静になって……気持ち悪いよ」

「酷いなこの野郎」

「私は女の子だから野郎じゃありませーん」

「正論言いやがって」

「ふふん♪」

ほんとテンションが高いな。俺達は迷ってるってのによ。

「はいはい、イチャつくのも終了。今はどうするか考えるよ」

龍孤りゅうこがパンパンと手を叩き、空気を変える。

だが少し引っかかることがある。

「「イチャついてない」」

声が揃った。

「はいはい、そうですねー。僕が悪かったよ」

口角が自然に上がり、目を瞑っている。これっぽっちも信憑性がない。

反省してないだろこいつ。

「まあ、いいや。とりあえず状況整理だ。

一、何かしらの遺跡の中にいる。

二、俺達は罠により下の階に戻れない。

三、上の階にも進めない。

四、この遺跡は壊せない。

五、罠はあるが敵がいない。

六、分かっていることはない。……ぐらいか?」

すげぇ、圧倒的に詰みフラグが勝ってんじゃん。

「あのさ……変な部分があるよね。この遺跡」

「……どこだ?」

「さっき君が言ったことさ。というのさ」

暗い雰囲気の空間が龍孤の一言で軽く、明るくなった。

一人は理解していないようだが。

「ッ……!?そういうことか!分かったぞ」

「ああ、多分君の想像通りだ。これで攻略完了だ」

「……へ?ええ、え??……へ?どいううこと?」

龍孤と俺は興奮状態で話を進める。それに対し春香はるかは頭に?を浮かばせている。比喩ではない。本当に浮いているのだ。

「まあ、春香。行きながら説明してあげるよ」

「え……あ、りょうかい。しまー……した?」

俺達は立ち、ある場所に向かうことにした。

足文字や血の痕にも目をくれずにガツガツと進んでいく。

その間に、少しペースを落とした龍孤が春香に話しかける。

「よし、説明を始めるよ。いい、春香?」

「うん。お願い」

龍孤は空中に絵と遺跡の全体図を描いていく。

「まず、僕たちの現在位置はここだ」

「塔の一番上?まだ上はあるんじゃないの?」

「いいや、ない。もうこれ以上は上に進めないのはコレが原因だ。目の錯覚と思いこみで上があると勘違いをしていたらしい。確認したら周りは全て絵だったし、天井に触れたからね」

「……?そしたら塔の遺跡にゴールがないことにならない?」

春香は未だに分からないらしい。勉強不足が酷いな。

「うん、そうだね。ゴールがないんだ。コレは元から迷路ではなく迷宮だったわけだ。だから、今からゴールを作ればいい」

一瞬納得しかけた春香は、すぐに表情を変えた。

「そのゴールは7日目って事だよね。じゃあ何で下に行こうとしてるの?罠が展開されてるんだよ」

「ああ、7日目だ。神は休んだ。じゃあ完成させるには何をするのか。どこに

行けばいいのか。これは一つだけだよ。そうだよね」

いきなり振られた俺は一瞬ビクッとしてしまう。しかし、すぐに答えた。

「ああ、この世界の昔からの伝承。神の安息地サード・ブックスがある、聖図書館マイスルーム。だけだな。ついでに罠は解除済だ」

春香の表情が驚いたものに変わった。いちいち変わるのは面白いな。

そう思いつつ、俺達は少し歩みを早めた。

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