第3話
遺跡の中に入ると、中は意外と現代風な造りをしていた。
その中を見渡していると、中央に石造りの文字が書かれている柱があった。
「……フム。これは多分足文字だな。さすがに分からんぞ、お前ら分かるか?」
「……かか、わり……なきもの。たちいり……きんずる。むだんで……たちい……もの、いのち……。これ以上は読めないな。途中途中が血で隠れてやがる」
すげー、難なく訳しやがった。やっぱ、こういう文字系の知識って重要だな。
「予想だけど『関わりの無き者、立ち入りを禁ずる。無断で立ち入る者、命無きと思え』かな。まあ、命が危なくなったら逃げればいいでしょ」
「逃げられればな。拘束されたらさよならー、だからな」
あはは、と苦笑しながら歩き始める。歩き始めたのは良いが、どこに行けばいいのかなど誰も知らない。どうするかと迷った三人は、とりあえず上の方に進もうという事になった。
歩いていると、あちらこちらに血の乾いた痕や足文字があった。
足文字を解読していくと分かったことがある。
足文字には、
・1日目、暗闇がある中、神は光をつくったよ。昼と夜が生まれたんだ。
・2日目、神は天をつくったんだ。
・3日目、神は大地をつくったの。海が生まれて、植物もつくった。
・4日目、神は太陽と月と星をつくりました。
・5日目、神は魚と鳥をつくったとさ。
・6日目、神は獣と家畜をつくり、神に似せた人間をつくった。
と書いてある。
「旧約聖書。創世記にある最初の最初、天地創造の文だな」
「ああ、じゃあこの遺跡はさしずめバベルの塔あたりかな?」
「断言は出来ない。けど、多分違う」
「ええー……っと、二人ともどうしたの?旧約聖書、そーせーき、てんちそーぞー?ってなに?」
いきなり始まった二人の議論に、春香は困惑しながら質問する。
二人ともため息をつき、アイコンタクトでなにかを決める。そして、ごほんっ!とわざとらしく龍孤が咳き込み、話し始める。
「え……っと、旧約聖書ってのはキリ○ト教の聖書の一つだ。そして創世記ってのは旧約聖書の中の書の一つで、天地創造ってのは物語の一つだ。天地創造は簡単に言うと神様が世界をつくる1週間のお話だ」
「あー……」っと口が無意識に開いていて、首を傾げている。たぶん分からなかったのだろう。いや、絶対そうだ。
「理解はしなくていい。後で覚えさせるから「え!?待って!?」それで、話を戻そう」
春香の言うことを無視し、話を戻そうと試みる。春香に腕を掴まれ、寄りかかられてる状態である。
「さっきバベルの塔っていったよな?」
「うん、言ったよ。だって、この遺跡は塔の形だ。それ以外で塔は出てこなかったはずだろう?」
「うん。そうだね。でも、これは目で見える範囲に塔が収まっていた。ということは天に届くはずのバベルの塔とは別物となるはずだ」
「だけど……そしたらこれは何なんだ?」
「ただの遺跡。話とは全く関係ないもの。というのじゃダメか?」
「ダメだ、それじゃ辻褄が合わない」
「辻褄?なんのだ」
「ここに塔がある理由と足文字の文、そして創世記とのだ」
「はっ、関係無いね。そしたら塔の9割を登っているのに1章の天地創造しか無いのは何故だ?」
「ッ……!それは……」
質問をすると、こちらを睨みつけてきたが、喋るうちに覇気がなくなり、下を向いて黙ってしまった。
「だろ?だから一旦考えるのはやめにしよう。まだ7日目が出てきてないし、登り切ったらで良いだろう」
「……ああ、了解した」
「……お、おお、オッケー!なんかわからないけど先に進むんだね!いましゅぐ行こう!うん、そうしよう!」
大事な所で噛んだ。そして超可愛い噛み方だし。GJだ。
「……っっ///バカッ!……ぅぅぅ///」
「あれ、俺なんか言った?」
心の中では言ったけど……。
「言ってたよぉ、大事な所で噛んだ。から最後までね」
春香は顔を赤らめて、息を切らし、目に涙を溜めながら言ってきた。
文だけ見ると危ねぇなオイ。
龍孤は呆れた表情でこちらを見てくる。解せぬ。
「ああ、はいはい。すみませんでしたー。これでいいだろ?」
「……許す」
許しを得た。やったぜ!危うく
「《……私を可愛いって言ってくれた。嬉しいなぁ!》」
次に春香を見ると明るい表情に戻ってた。なにかあったのか?
春香の呟きを聞いたのは一人であった。
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