【番外編#2/問題編】寒い国から帰ってきたうどん

※この小説は「魔王サスペンス劇場」Twitterアカウント(@mss_20160401)で3月8日(火)21時に公開された短編小説を加筆・修正したものです。


「ハッハッハッ! 再び俺様が降臨してやったぜ!」


「これは、4月1日にスニーカー文庫から発売される《魔王サスペンス劇場》のTwitter出張版をちょこっと修正したものよ。

で、あたしはヒロインのミア」

「あー、このテンション、しんどい」

「こら、魔王。あんたも自己紹介を早くしなさい!」


「え? ああ、おれはルート。

《魔王サスペンス劇場》の主人公で、魔王だ。

そして、《魔サス》番外編も、第2話! 

なんと、今回は雪山からお送りします! オール・ロケ!」

「残念だけど、魔王。あたしたちがいまいるのは、変わりばえがしない『魔王の間』よ」

「え、雪山は?」

「雪山に行ったはいいけど、担当さんが『どうして雪山なんか行っちゃったんですか? 調子に乗っているんですか? 逆さ吊りにされたいんですか?』と言うので、あえなく没になったじゃないの」

「フォロワーの皆さん、これ、ネタじゃなくてガチですからね!」

(※ネタですよ!by担当)


「じゃ、魔王。さっそく第2話のゲストを呼びましょう。

今回こそ豪華なゲストに来ていただいたわよ。

では皆さん、拍手でお迎えください! 

元プロ野球選手の<自主規制>ピーさんです! 

本日は、麻薬の恐ろしさについて語っていただきます!」

「呼べるかぁぁ! なんで、まったく縁も所縁もない人を呼ぼうとしちゃったかな!」

「さっきニュースサイトで名前を見たものだから」

「安直にも程があった!」


「じゃ、いいわよ。つまらないパターンのゲストで」

「つまらないって、なんだ!」

「どうせ《魔サス》の主要キャラの1人をゲストに呼んだんでしょ。

《魔サス》の作者が有名作家で、色んなシリーズを持っていたら、あの作品の○×さんが来てくれました、とかで遊べるのにね」

「やめて、作者はそっとしておいてあげて。

せっかく作ったライトノベル作家の名刺、いまだ誰にも渡せていないんだから。

100(作った枚数)―0(渡せた枚数)=100(あれ、作った枚数と同じだぞ?)という方程式に傷付いているんだから」


「はい。本日のゲストはグアンです。

さっそくですが、グアンはどこにいるでしょう。読者の皆さんも探してみてください」

「なに、いきなり『○ォーリーをさがせ』みたいなこと始めているんだ! 」

「なんか面倒くさくなったから、はい、ゲストのグアン、自己紹介よろしく」

「あげく適当に投げた!」


「拙者は勇者グアン! 

勇者撲滅を企む秘密結社と日夜戦い続ける、男の中の男だ!」

「グアンの奴、ミアの暴投を力でねじ伏せた!」


「はい、グアン。最近、調子どう? ようやく暖かくなってきたわよね。もう春ね。そろそろ炬燵を片すころだわ」

「うむ。だが春ともなると花粉症の季節。先手を打って病院に行き、薬をもらうのがよかろう」

「そして、どうでもいい世間話を始めた! お前らやる気あるのか!」

「ありあまって困っているわ!」


「……あそう。ところで、だ。2人とももう気付いていると思う。

いま、『魔王の間』にはある異常事態が起こっていることを──いや、厳密には『起こった』だな」


「なによ、魔王。異常なことなんてなにもないじゃない。

そっちには魔王の玉座、あっちには引っくり返って気絶しているローラ、こっちにはマ○○ナルド『魔王の間』店」


「ひとまず、こちらをツッコむ。マ○○ナルド『魔王の間』店って、なに! 

なんでよりにもよって、おれの『魔王の間』に乗り込んできた!」

「勇者が魔王と戦う前に、腹ごしらえをするからでしょ。ふ、あの女社長、考えたわね」

「それより、もっと注目するべきことがあるだろ! 

ほら、そこに倒れている、お前たちの仲間である勇者の──」

「ああ、ロ○ね」

「そんな有名な勇者が、ここに倒れていてたまるか! 畏れ多いわ!」


「わかっているわよ、魔王。ローラが気絶しているというんでしょ。

ちなみに。ローラというのは、ドリルのようなツインテールをしている、生意気な女勇者のことよ」


「そのローラについて、そろそろ、なにかコメントがあってもいいんじゃないかな! 

たとえば、ローラ(気絶中)の傍にはテーブルがあるよな。

そのテーブルの上にあるものは、なんだ?」

「うどんね」

「おお、これは秘密結社の陰謀か!」


「しかも、ただのうどんじゃない。見てみろ。

うどんにかけられている大量の七味唐辛子を!」

「あれは、人間が体験してよい量ではないわね。

もう、うどんを食べているというよりも、七味唐辛子を食べているという感じだわ」

「おお、これは秘密結社の陰謀か!」


「そうだ。それに、ローラ(気絶中)の右手を見てみろ。

箸をつかんでいる。さらに、ローラの口元には、七味唐辛子が付着している。

このことから導かれる答えは、1つだ」

「おお、これは秘密結社の陰謀か!」


「そうね。これはローラが──というか、グアン、あんたうるさいわよ! 

さっきからバカの1つ覚えみたいに『これは秘密結社の陰謀か』しか言ってないじゃない!」


「すまぬ。拙者、少しでも己を売り出していこうと思ってな。

『これは秘密結社の陰謀か』を拡散し、今年の流行語大賞を狙っていたのだ」

「おい、こいつ凄まじい野心を持っていたよ」


「でも、意外と悪くないかもしれないわね。『これは秘密結社の陰謀か』。

いい言葉だわ。さっそく、さっきの<自主規制>ピーさんに教えてあげましょう。

この言葉だけ繰り返していれば、無罪放免は間違いなし、と」

「おい、このネタは危ないから、もう止めろと担当さんがお怒りだ!」


「しかたないわね。じゃあ魔王、話を戻すけれど……『○ォーリーをさがせ』って、あれ、最初の4秒で見つけられないと、凄く腹が立つわよね?」

「どういう戻りかたしちゃった! というか、4秒しか持たないお前は、忍耐力がなさすぎだ!」


「なによ、○ォーリーでなかったら、なんだというのよ」

「状況を見るに、ローラは七味唐辛子たっぷりのうどんを食べ、そのあまりの辛さに気絶した──という話だろ!」


「あ、そういう話だったのね。

ようは、ローラは自滅したのね。バカみたいに七味唐辛子をふりかけ、よせばいいのに食べてしまったわけですものね」

「本当にそうか? テーブルの上にあるのは、うどんだけだ。足りないものがあるだろ」

「足りないもの、それはローラのオツムね」

「うまい、座布団一枚! じゃなくて」


「魔王、拙者はわかってしまったぞ。足りないものとは──」

「あ、まて、まて。ミアがわかってないようだから、おれの傍に来て小声で答えろ。なに、なに──はい、グアン、正解! 

あとわかってないのは、ミア、お前だけだ」


「くぅ。ムカつくわね」

「ミアの奴、こんな簡単なこともわからないんだってさ。どう思うよ、グアン?」


「拙者としては嘲笑を禁じえないな。グッハッハッハッハッ!」

「いや、それ嘲笑というか、魔王的な悪者笑いだから。やめてくれる、おれのお株を奪うようなこと」


「足りないものですって? 

アホなローラ(気絶中)が転がっていて、テーブルの上には、七味唐辛子たっぷりのうどんがあるわ。

ここに足りないものといえば──あ、わかったわ!」

「じゃ、答えを言っちゃって」

「魔王の耳元に囁けばいいのね?」

「え? あ、お前、なにをしやがる! 近いから、やめろ! 吐息が耳にかかるだろ! こそばゆい!」

「あー、もう逃げるんじゃないわよ! あんたの耳に囁けないでしょ!」

「おお、主人公とヒロインがイチャついている。これぞ、正しきライトノベルの姿か。

なぜ、本編ではこのようなシーンがなかったのか。拙者、涙で視界が霞んできた」


「ふふん。あたしはもう答えがわかったわよ。けれど、あんたはまだ──あら。もう、誰もいないわ」

「そりゃあ、登場人物は『おれ、ミア、グアン+死体役のローラ』だけだからな」

「ちょっと、バカにする相手がいないじゃない! 

あ、いまだに答えがわからない読者をバカにし、痛っ! ヒロインを殴るなんて、どういう神経しているのよ、魔王!」

「読者をバカにしようとするとは、どういう了見だ! 恥を知れ!」


「わかったわよ。じゃ、答えを言うわよ。足らないのは、ダイイング・メッセージね!」

「いや、ぜんぜん違うから。ドヤ顔で放った答え、かすりもしていないから。

足らないのは七味唐辛子の容器だからな」


「え、ダイイング・メッセージではないの? 

普通、この手のパターンは被害者がなにか書き残しておくものでしょ。『犯人はヤス』とか」

「ネタが昭和だな、おい! しかもそれ、ダイイング・メッセージというか、ダイレクト・メッセージじゃないか!」

「いま、うまいこと言った、とか思っているでしょ、魔王。正直、とくにうまくなかったわよ。変に狙いに行った分、外した感が半端ないわ」

「もう一思いにおれを殺せよ!」


「魔王、ミア殿。ローラ殿のドレス・アーマーのポケットから、のぞいているモノがある。なんだろうか?」


グアンがローラのポケットから抜き出し、ミアが受け取った。


「あら、これはローラのスマホじゃない。ちょっと見てみましょう」

「よせよ、人のプライバシーをのぞき見るようなこと」

「まって。スマホの画面は、メモ帳になっているのだけど──なにやら、書かれている。これは、ダイイング・メッセージよ!」

「スマホに打ち込んでいたんかい!」


「けど変ね。よくよく考えてみたのだけど──ダイイング・メッセージがあるということは、この事件には犯人がいるということよ。

けれど、どうして犯人なんか出てくる余地があるわけ?」

「七味唐辛子の容器がここにない、ということは、何者かが持ち去ったんだ。

つまり、その持ち去った者が犯人、ということになる」


「でも、ローラのうどんに七味唐辛子を大量にかけることはできても、そのうどんをローラに食べさせることは不可能よ。無理やり、食べさせられるとは思えないもの。

どうしても、ローラが自主的に、うどんを食べる必要があるわ」

「たしかに。もしかすると、ローラのダイイング・メッセージに、この疑問を解く鍵が隠されているかもしれない」


「メモ帳には、こうあるわ。

『問題です。地球より、月面で重たいものはなんでしょうか?』」


「それ、ただのクイズ!」


「なんと。月面は、地球より重力が六分の一であるはず。

だというのに、地球より重たいものがあるだと!」

「お前も真面目に取り掛からなくていいからな、グアン!」


「クイズのあとにまだ続きがあったわ。読むわね」

「こんなこと長々と打っているヒマがあったら、犯人を名指ししろよ」


『では。皆様、お待ちかねの、わたくしのダイイング・メッセージですわ!』


「いや別に待ってないんだけど。

こいつ、この文章を打っているときは、七味唐辛子の辛さでのた打ち回っているはずだよな? なんなの、この余裕は?」


『ちなみに、わたくしはいま七味唐辛子のせいで死にかけています。

それだというのに、なぜ、この文章を打つことができるのか? 

ふっ、答えるまでもありません。

それこそが、勇者道ですわ!』


「そんなわけがあるかぁ!」

「ローラ、あんた……見直したわよ」

「ローラ殿……貴殿はすでにその領域に達していたのか」

「なんで、ここで感動するんだ、お前らは! 

いいのか、勇者道の終着地が『七味の辛さにのた打ち回りながらダイイング・メッセージを打つ』で!」


「じゃ肝心のダイイング・メッセージを読むわね」

「どうせギャグかなんかだろ」


『PP丹K場 蛾魔A是太 戸GEC 蛾魔A是太 来BB 

※ ヒントは電鍵と麒麟ですわよ!』


「なんか真面目なのがきた! もろに暗号系じゃないか! 

というか、これものた打ち回りながら、頑張って練ったのか?」


『わたくし、のた打ち回りながらも、練りに練りましたわ』


「やっぱりか!」


「この暗号は──」

ミアは4秒きっかり考えこんだのち、ローラのスマホをポイ捨てた。

「解けないわね」

「○ォーリーを探せと同じで、4秒しか持たなかった!」


「だいたい、考えることが多すぎるのよ。

ダイイング・メッセージの解き方とか、

どうやってローラに『七味唐辛子たっぷりうどん』を食べさせたのか、とか」

「いや、それを考えるのが、ミステリだから。

だいたいそれを解き明かさないことには、犯人もわからないだろ」


「もっと手っ取り早く犯人を当てる方法があるじゃないのよ」

「なんだよ」

「動機よ、動機。

犯人は、ローラを七味唐辛子の激辛地獄で苦しめたかったのよ。それほどの恨みを、ローラに抱いていたのよ。その動機から、犯人を導き出せばいいのよ」


「ミア、お前って奴は──」

「なぁに、魔王? あたしの知力に恐れ入ったのかしら?」

「自白するとは! 勇気があるよ、ホント」

「ちょっと、どうしてあたしが犯人ということになるのよ!」


「青いタヌキを見たら、ドラ○○ん。アンパンが空を飛んでいたら、アンパ○○ン。そして、ローラと仲が悪いといったら──ミア、お前だ」

「たしかに、あたしとローラは因縁の仲だけど。魂が転生するたび、あらゆる戦場で殺しあってきたけれど」

「《魔サス》は、そんな壮大な物語じゃない! 

お前とローラの因縁のレベルは──トレーディング・カードを見せっこしていたら、『お前、オレのレア・カード、盗っただろ』『盗ってねぇよ』と言い争いをはじめた小学生レベル」

「魔王、ローラがあたしのレア・カードを盗ったわ!」

「知るか! 喩え話にまで便乗して、打倒ローラに燃えるな!」


「魔王よ、これはもうミア殿で決まりのようだな」

「ああ、まったくだ。これほどまでに動機のわかりやすい事件も珍しい。

あとは、どうやってローラに『七味唐辛子たっぷりうどん』を食べさせたのか、白状させるだけだな」


「まって。あたし、実はローラと仲直りしていたのよ」

「信じられないな。お前とローラが仲直りするより、まだ、桃太郎と鬼がカラオケに行くほうが現実味はある」

「まあ、聞きなさい。あれは──あたしが高級洋菓子店の前で、『ケーキの値下げをしろ』デモを行っていたときのことよ」

「この子、どんどんヒロインとして身を堕としていくんだけど!」


「そこに現れたのがローラだったわ。

ローラは、あたしの『ケーキの値下げをしろ』デモに同調してくれたのよ」

「え、お嬢様が売りのローラが?」


「そこの高級洋菓子店の娘、ローラとは初等学院時代の同級生だったのよ」

「へえ」

「それでローラのツインテに、餡子をなすりつけたのよ」

「……」

「そう、ローラにとっては生涯の宿敵だったのね! だから、あたしとローラは協力して、くだんの高級洋菓子店に戦いを挑んだのよ! 

こうして、あたしとローラに戦友としての絆が生まれたわけね」


「胡散臭いなぁ。ちなみに、くだんの高級洋菓子店への戦いの結末はどうなったんだ?」


ミアは『明後日』の方角を向いた。


「あの日は乾燥していたから。だから、あんな悲劇が起ってしまったのよね」


「いったい、なにがあったぁぁぁ!」

「『─・─・・ ─・─・ ──・─・ ─・ ・・・ ─・・─ ─・──』(キニシタラマケ)」

「なんで、モールス符号で答えた! 結局、答えになってないし!」



「それより魔王、動機ということでなら、グアンのほうが怪しいわよ」

「グアンだって? グアンとローラって、本編でもほとんど絡んでいなかったよな。どうして、グアンがローラを恨むんだ」

「左様だぞ、ミア殿。拙者がなぜ、ローラ殿に七味唐辛子で攻撃する必要があるのだ?」


「あたし、見てしまったのよ。あれは高級洋菓子店へのデモが、そう八日ほど続いたときのことだったわね」

「勇者が2人揃ってなにをやっているんだ。仕事しろ。ダンジョン行ってモンスターをちゃんと血祭りに上げろ」

「うるさいわね。とにかく八日目に、グアンがやってきたのよ」

「え、グアンまでデモに参加したのか。というか、これデモというより、単なる店への嫌がらせだよな」

「違うわよ、グアンはあろうことか高級洋菓子店へ入ったのよ。グアンったら、あんな高いケーキを五個も買って──羨ましい、じゅるり」

「よだれ足らすな。ヒロインの品格というものを考えろ」


「グアンは、あたしとローラに気付いていない様子だったわ。そこであたしたち2人は、グアンを尾行したの」

「お前ら、マジでヒマだな」

「するとね、驚いたことにグアンったら、とある豪邸に入っていったのよ。

さすがに、くだんの豪邸の敷地内へは、そのままでは追えない。

そこであたしとローラは、庭師に化けて、入り込むことにしたの。まったく怪しまれなかったわ」

「お前ら、エネルギー使うところ、絶対違うから!」

「無許可で庭にカブを植えながら、あたしとローラは監視を続けたわ」

「なに余所のお宅の庭を、カブの園に改造しようとしているんだ!」

「そして、あたしたちは見たの。そう──家政婦ならぬ、庭師は見た!」

「それがやりたかったんかい!」


「で、なにを見たかといえば、グアンがそこの豪邸の娘とイチャついているところ」

「なぁんだとぉぉ! グアン! お前、本編じゃ『女などいらん』とか言っておきながら、実際は、あれか! あのう、なんだ……プレイ・ボール! だっけ?」

「野球の試合が始まったわ! もしかして、死語たるプレイ・ボーイと言いたかったの?」

「それ、それ。この野郎、グアン、勇者のくせに女遊びとは良いご身分だな」


「まて、魔王。それは誤解だ」

「そうなのよね。じつはその豪邸の娘さんは、グアンの従妹だったのよ」

「なんだ、そういうことか。従妹とイチャついていたのか……いや、それはそれでどうかと思うけどな!」

「イチャついてなどいない。拙者は、彼女に勉強を教えていただけだ」


「けどね、ここからが重要なところなのよね。その豪邸の娘さんは、ローラとは初等学院時代の同級生だったのよ」

「あれ、このパターンって、たしか……」

「それでローラのツインテに、イカ墨をなすりつけたのよ」

「ローラのツインテの仇、多すぎじゃないか!」


「ローラは宿敵(その2)を見つけたことで、怒り心頭に発したわ。

あたしが傍にいなかったら、殴りこみにいくところだったわね。

でも、あたしがちゃんと阻止したわ。あたしはどんなときでも冷静な勇者だもの」


「で、その豪邸から、無事にローラを連れ出したんだな?」


ミアは『明後日』の方角を見た。


「あの日は乾燥していたから。だから、あんな悲劇が起ってしまったのよね」

「だから、いったい、なにがあったぁぁ!」


「これでわかったわね、魔王。グアンこそ、最重要容疑者よ。

グアンは自分の従妹が、ローラの宿敵(その2)ということを知ってしまった。

そしてローラから従妹を守るためには、ローラに消えてもらうしかなかった」


「なるほど。動機は恨みではなく、従妹を守るためか。

だとすると情状酌量の余地はある。良かったな、グアン」

「まて、魔王! ミア殿の話を鵜呑みにするのか? 

実は、拙者はローラ殿と話しているのだ。ローラ殿が、拙者の従妹のことを知ったあとで」

「え、そうなのか?」


「たしかに従妹とローラ殿は、同級生だった。

だが従妹はローラ殿のツインテを賛美こそしたものの、イカ墨まみれになどしていないぞ」

「グアンの話が本当なら、ローラはグアンの従妹を恨む必要がない。

よって、グアンが従妹を守るため、ローラを七味唐辛子の毒牙にかける必要もない」

「そのとおりだ、魔王」


ルートは一考した。なにか引っかかることがある。

何気なく、視線がローラ(気絶中)へと向けられた。

そのとき、閃くものがあった。


「ミア、グアン、お前たち2人の話は興味深かった。だが、片方は確実に嘘をついているな!」

「なんですって! それなら嘘つきはグアンよ!」

「なんと! ならば嘘つきはミア殿だ!」


「嘘つきは──ここで、お前だ、と指差したいのも山々だが。

まだ、どうやってローラに『七味唐辛子たっぷりのうどん』を食べさせたのか、それがわからない」


「ダイイング・メッセージの暗号も、まだ解けてないでしょ、魔王」

「え? ああ、そっちはとっくに解けた。

あれはな、ダイイング・メッセージの内容に目を向けても意味がない。

それより、なんだ、あれ──」


ルートは、ローラ(気絶中)の傍に屈みこんで、あるモノを拾った。

それは四辺が5センチほどの銀紙の包みだった。


「この包み、ほのかにチョコの匂いがするな。チョコを包んでいたものか」


そのとき、ルートは1つの推論に行きついた。


刹那、ルートの背景が暗転した。

暗闇にミアもグアンも包まれ、ルートの姿だけが視認可能であった。


「読者の皆さんには、今回の謎が解けただろうか? 

謎は四つある。

①回想で嘘をついていたのは、ミアとグアンの、どちらなのか? 

②ローラの残したダイイング・メッセージはどう解くのか? 

③犯人はどうやって、ローラに大量の七味唐辛子を食べさせたのか? 

そして、④犯人の正体は?」


「魔王が生意気にも古○○三郎の真似をしているわ!」

「最大のヒントは──ローラのツインテール。では魔王ルートでした」


#解決編に続く

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