蜃気楼の国
冬籠咲紅
旅の始まり
1
年齢も性別もバラバラの3人が砂漠の真ん中で立ち尽くしていた。3人は人生で初めて落ちている人を見ていた。倒れている人、だったら覚えがある。だが、彼女は落ちている人と形容するのが正しいというくらいに太陽の照り付ける砂漠で丸くなって眠っていた。
「えーっと。この人、倒れてる?のかな?」
長い沈黙の後に口を開いた少女に2人が曖昧に同意する。それを受けて少女はそっと女に近付いた。
「…………凪、あまり変なモノを拾うのはどうかと思う」
女に近付く少女、
「私も変な人だろうと思うけど、でもさ。るーくん、こんな砂漠のど真ん中で寝てたら死んじゃいそうだから」
「凪がそう言うならいいんじゃない?」
るーくん、と呼ばれた少年は呆れたように肩を竦めてどこかへ姿を消す。それを見届けてから凪帆は女の肩を揺らした。
「もしもーし、こんなとこで寝てて大丈夫ですかー?」
「んん…………、むにゃむにゃ」
ごろり、と寝返りをうち砂に顔を突っ込んでしまいそうになった女を慌てて支えつつ凪帆は遠くで傍観する2人を見つめ
「ね、誰か手伝ってくれません?」
その言葉に対する2人の反応は似たようなものだった。
背の低い短髪の少年は無言で一歩退いて顔を背け。すらりと背の高い大人びた青年は困ったように笑うだけ。
そんな2人に苛立ったのか凪帆が呼び付けたのは短髪の少年だった。
「
「はぁ?何で俺がそんな見知らぬ女のために。お前が勝手に拾うって決めたんだろ。責任持てよ」
そんな風に声を荒らげながらも煉都は凪帆に近付いて少し乱暴に肩を揺り動かした。
「………………?」
それが功を奏したか。はたまた煩かったからか。女の瞳がゆっくりと開いていく。凪帆が支えていた体もちゃんと意思を持ち起き上がり、風がフードを捲り開ききった瞳と同じ銀髪を顕にした。
白髪ともまた違う艶を持つ珍しい銀髪に3人が息を呑む中、開いた瞳は不機嫌そうに細められる。
「あの、ごめんなさい。こんな所で寝ていたら危ないと思って」
その凶暴な瞳に見つめられた凪帆がか細い声でそう言う。それを聞くと女の瞳から暴力的な色が抜け落ちていき、寝惚けたような色合いへと移り変わる。そして女がようやく口を開く。
「……………どうなさいましたか?おはようございます、皆さん」
間抜けとも言えるその挨拶に3人は顔を見合わせて揃って言った。
「…………おはよう、ございます」
蜃気楼の国 冬籠咲紅 @huyugomori
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