第5話

まあ、結論から言えば。

家探しは、楽じゃない。


ほんと、楽じゃない。


楽じゃない。


何が楽じゃないかって。


「…いかがですか、こちら。ご希望の広さで、バストイレ別ですね」


「あー、いや、別のを…」


「あれ」がね。


「では、こちらは…」


「あれ」が、いるとね。

ネットに掲載される写真すら見てられないといいますか。

とにかく…。


「!だ、だめです、それ!しまっていいです!」


「……え」


「!!」


自分でもハッとするくらい、大きな声が出たのは。

その写真が、ぼくのシックスセンスを多大に揺るがすものだったから。


(しま、た)


「あの、飛鷹さん?」


「あ、えーと」


不動産屋の彼女、滝本さんの顔が怪訝そうに変わっていくのを見て、ぼくは不覚にも言い淀んだ。


「い、今の写真、ちょおおっと好きじゃないかなって」


(どーすんだよ。はああああ)


ぼくは、非常に面倒な体質をしている。


何が面倒かというと。


シックスセンスが。

マックス要らん方向で感度が高すぎるという体質である。


おわかりだろうか。

一般人にはおおよそ見えないであろうヒトが、いたら。

姿は見えないけど、声はきこえないけど。


なんか、違和感。

なんか、寒い。

なんか、気持ち悪い。


そんな感じの感覚にプラス。


背負ってるみたい。背中、肩、重い。

わお、腕に変な電流。トリハダ立っちゃう。

吐き気するんで胃薬お願いします!

今足首掴まれてますよね!なんか巻きついてるのくらいわかるううう!

あ、それ殺気ですよね!敵意だけ無駄に感じます!

今つねりました?イタイんですけど!


こんな感覚が加わった感じだ。


ざっと並べておわかりいただけたかもしれないが、見ての通り、ぶっちゃけ、しょうもないほど役に立たない感覚である。

むしろ、あると迷惑なシックスセンス。


絶賛売却したい毎日である。


物件の写真も、この手の感覚で見ているぼくは、一見何の変哲もない写真に、妙な違和感を覚える。


部屋きれいだけどね。

直視したくない。

見てられない、となる部屋は。


「いる」。


見るヒトが見れば、たぶんわかるんだろう。

どんなに小さいものでも、それが映り込んでいれば、ぼくは違和感を感じるようで、以前、自分の写真を撮って、和津さんというヒトに「見て」もらったら、「何かが」映り込んでたらしい。

それが映り込んでる部分を拡大したものを見せられたぼくは、溶解度のひどい、色素もぐっちゃのよくわからないその写真を見て、音をあげた。

吐き気と違和感がマックスになったことで、「何か」がきたす異変に気づいたのだ。

といっても、ファーストインプレッションが特にひどいだけで、次に見たら、違和感は軽減されてしまうのだが。

動画も同じこと。

何かが映る直前に、その場所に強烈な違和感を感じる。

現れた後はそうでもない、んだけどさ。

「あ、でた」くらいの感じ。


ぼくは、見えないけど、「感じる」体質みたいだ。



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