第4話
ネットで発見した不動産屋は。
思いの外ふるーいビルで。
(内装だけか、写真でキレイだったの)
ぼくは、ものっそ不安になった。
「ここでいいのか」と、真剣に感じたから。
ナナミとにゃんたろう(冒頭でちょいと出てきた、ナナミと同類だが、より正体不明の香りがする見えない存在である)は、この店舗をネットで見つけた瞬間、揃って太鼓判を押していた気がするが。
(まあ、絶対じゃないしな)
あいつらの話も。
と、ぼくは自分にそう言い聞かせながら、ビルに踏み込もうとしたが。
「う!!」
エレベーターホールに進む前。
いや、入り口前で、ぼくの足は動かなくなった。
(やばい。ここ、ほんと平気かよ)
入りたくないのだ、とにかく。
とにかく、入れない、のだ。
足が進まない。
この現象は、ぼくには日常茶飯事の、「居る、居やがる」警報である。
早い話が、単に妖怪レーダーならぬ第六感が働いたのだ。
「おい、ここ、やばくね?」
ナナミに問えば、ナナミも緊張した声で応じた。
『ちょっとここ、ですね。でも、たぶんここでいいんじゃないかと…』
「なんだよそれ。はっきり言えよ」
ビルを前にボソボソ問答の後。
気が進まない気が進まないと、止まる足を無理矢理進めたぼく。
ようやく、エレベーターでなく階段で上に上がる決意をしたのだった。
後の展開は、冒頭にあったとおりである。
そこでぼくは「偶然に」彼女に出会ったのだ。
そしてぼくはここで、もう一つ重大な事実を知るのだ。
「あれ、ここ…」
看板をどけて もらった彼女に、入店後席を勧めてもらって座りつつ、ぼくは気付いた。
(なんか内装、ネットの写真と違くね?)
「ここ、◯◯◯さんですか?」
「え?あ、その会社なら、一階上の会社ですけど」
「…」
(わあおおおおおお)
胸中でマイケルジャクソ◯が思い切り叫んだ一瞬の間があって。
「あの、もしかして◯◯◯(上の会社)さんに御用でしたか?」
彼女の冷静なツッコミに、ぼくは「いえ、ぜんっぜん」と、イタイヒト全開な笑顔で応えたのである。
でもこれは…。
と、今だからこそ思うこと。
それは、ぼくと彼女が互いを呼んでいたからこその出会いだったのではなかったのか、ということ。
そしてここから。
新たな物語は始まった。
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