第2話

「は?」


(通れねえ)


何故か。

4階の人1人通れるスペースしかない狭い通路のフロアは、ぼくがいる階段を挟んでその向かいにエレベーターがある構図。

だが、ぼくが立つ階段はそれ以上先に進めない。看板らしきが、背面を向いて置いてあり、要塞のごとく通せんぼしておるからだ。


「あれ、この配置、もしや…」


それは「エレベーターを降りた人に向けて」見えるようにセッティングしたディスプレーらしかった。


ということは。


(なんだこれ。階段でくるんじゃなかった!)


これは紛れもなく、階段じゃなくてエレベーター使いやがれと言われてるフラグ!

どうやら、一人で恥ずかしい思いをしてるのはぼくだけらしい(まあ普通はエレベーターですよ、ええ)


(うわ、どうすんだよ)


迷いながらそのフロアをキョロキョロやってたら。


(あった、不動産屋!)


フロア奥に、目的地があった。

だがそこに行くには、看板含める諸々のアイテムを動かさなくては通れない!


「くっそー」


気づいてくれる気配もないから、とりあえず必死こいてどかそうか、と四苦八苦してたら(置き方がドミノだったから、下手すると自爆してた件)


「あの」


「!」


店側の人間が、ぼくに気づいた。


「あ、どうも…」


その瞬間の恥ずかしさといったら。


(このタイミングで発見されるとか、気まず過ぎますけど)


どうやらスタッフらしいその女性は、「お客様ですよね」と、確認するように、怪しい侵入者、ことぼく、飛鷹治李(ひだかなおり)に向けて問うか否か、ぼくの目の前の要塞を手際よくどけてくれた。


「大丈夫でしたか?」


凛とした瞳が印象的な人だった。








これが。

ぼくと、不動産屋のキレキレキャリアウーマン、滝本伊織(たきもといおり)との出会いであった。

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