011
入れ違いにクロードが帰って来る。
「ただいま、スゥ」
スゥを呼ぶクロードの声も虚しく返事は無かった。
「おーい、スゥ?」
呼び掛けても、呼び掛けても、スゥからの返事は無かった。スゥに何かあったのかと心配になったが、テーブルの上に置かれた一枚のメモを見つけ、クロードは取り敢えず安心することが出来た。
そこには。
ニナさんの家に行ってます――そう、一行だけ書かれていた。
そのメモを見たクロードは、スゥの安否のこともそうだったが、他にも安心出来ることがあった。
それは。
スゥがここで本当に皆と上手くやっていけるのかどうか、自分がこの街に無理やり連れて来てしまっていなかっただろうか――そう心配だったからだ。
けれど。
このメモを見る限り、街の人とも何とか上手くやってる様子が伺うことが出来る。それに、街の人との交流を少しづつながらも、自分から努力をしようとするスゥが伺うことが出来る。
それだけでも、クロードは安心だった。
安心したクロードは、葉巻を吸おうとポケットから出しそれを咥えるが、火を点けようとしたところで、その手を止めた。
これから。
スゥと一緒に暮らすと言うことは、この葉巻も吸わない方が良いのだろう――そう思ったからだ。咥えていた葉巻を手に取り、暫し見つめながらも、決心したかのようにそっとテーブルの上に置いた。
「しょうがない。今日から禁煙するか」
それは。
誰も居ないところで一人心に決めた――小さくとも、大きな一歩だったに違いない。
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