第2話「枕草子」

冬の終わりの朝日がゆっくりと登り、地面と空気を温める。

目の覚めたわたしは布団から出るのをためらいつつ、ゆっくりと枕元に手を伸ばし、使い慣れた眼鏡を探り当て、顔にかける。

金属のフレームの冷たさに少し驚くが、しばらくするとそれも体温に包まれ、ゆっくり温まっていく。

清少納言も、冬はつとめて。と言っていたが、わたしもこの時間が好きだ。

目が覚めてから、起きるまでの。

布団のぬくもり、部屋の静けさ、窓からの冷気。1日の始まりを予感させるようなこの時間は、忙しい冬において最も世間の蟠りから遠い時間なのかもしれない。

窓から梅の花が見えた。春は近い。

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本とフォント 南北磁石 @zerofighter_sn

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