第8話 [青鬼] 麗牙《れいが》 前編

エリーヌがいつものように縁側で寝転がり、珍しくスケベな妄想に耽っていると、何度か聞いた覚えがあるデカイ爆発音が聞こえてきた。エリーヌはびっくりして少しお漏らしした。

エリーヌ「きゃぁッ!わっ!わわ!ト、トイレ〜〜!」

エリーヌが真っ赤な顔をして、トイレから戻り魔法陣転送室に入ってみると、転送機の上に焦った顔をした男が立っていた。

エリーヌ「あ♪♪おかえり?3号♪(*´ω`*)」

[青鬼 《あおおに》]麗牙れいが「えっ?…あ、マジかー俺……死んだのか…」

エリーヌ「うん(。´Д⊂)善行値かなり上がってるよ?お疲れ様…ね(*´∀`)」

麗牙「あっと……そんな場合じゃない!!早く戻らないと!」

かなり焦った様子の麗牙。

エリーヌ「ずいぶん急いでるんだね♪麗くん♪」

麗牙「早く戻らないと、[ゆうちゃん]が……俺なんかより、よっぽど大変な思いをしてるゆうちゃんがヤバいんだ(つд;*)」


この[ゆうちゃん]とは、ご存知赤音の友達だったゆうちゃんである。


エリーヌ「……麗君の好きな女の子なの?」

麗牙「え!!Σ( ̄□ ̄;)違うよ?まだゆうちゃんは10歳の女の子なんだよ?」

エリーヌ「……ふぅん(ノ´∀`*)」「麗君はいくつだっけ?(ノ´∀`*)」

麗牙「え?だから違うって!」「じゃぁ、もう行くからね!!!」

麗牙はかなり先を急いでいる。

エリーヌ「あっ!ちょっと待って?また鬼の力、抑えて行く?」

麗牙「うん!善行値上がりやすいしね♪」

エリーヌ「じゃぁ、また10%に抑えるね♪じゃ、行ってらっしゃい♪」

麗牙「またね(*≧∀≦*)」


エリーヌは転送機のスイッチを押した。


3号……麗牙、人間界にて妖怪[青鬼]として、日々善行値を貯めるために生活している。そのままの能力では、[鬼]の力は強力過ぎるため、力を10%まで抑えている。10%とはいえ並みの妖怪より、圧倒的に強いのだ。


麗牙が住む場所は埼玉県戸田市……何故、麗牙が死に至ったのか。それは麗牙がセノウと並ぶほど優しい男だからである。


人間界に戻った麗牙が急いでゆうちゃんの家に向かうと、ゆうちゃんが倒れていた。

ゆんちゃんはご飯を食べていなかった……。

何故なら、ゆうちゃんには現在、両親がいない。突然、四ヶ月前にお金も残さずに二人とも失踪してしまった。さらに幼い三人の妹がいる。とても貧しく日々の食事にも困窮しているため、自分はご飯を食べずに妹達に食べさせているのだ。

ゆうちゃんは近所の大人達に助けを求めなかった。なぜなら以前、近所のおじさんに痴漢に遭い、その時に回りの大人達によってたかってうやむやにされた事があり、大人を信用していない。まあ、ゆうちゃんも子供ながらに露出の多めな格好をしていたのだが。

ゆうちゃんは他に身寄りがない為、10歳ながらもなんとかして生計を立てなければならない。2ヶ月前にもゆうちゃんは道端で倒れていて、それを麗牙が見つけ介抱したのがきっかけで、この幼い姉妹と麗牙は関わりを持つに至った。親の失踪、親友であるみっちゃんの死……ゆうちゃんは身も心もボロボロだった。


麗牙はゆうちゃんのおかれている状況を知り、なんとか「力になるよ(*´ω`*)ほっとけないもん」と、ゆうちゃん達の為に働き始めた。だが、たかがアルバイト一つでゆうちゃんとゆうちゃんの妹達に充分な食事を与える事などできるわけがない。困った麗牙は、アルバイトを増やす事にした。

朝は5時起きで夕方の17時まで働き、そのまま夜の仕事に向かう。夜の仕事が終わるのが夜中の3時。鬼の力なのか麗牙はタフである。それでも計5人分の生活費や光熱費はなかなかまかなえず、10%に抑えられたなけなしの妖力で姿と顔を変え、休日も働き始めた。


そんなペースで仕事をしては、いくら[鬼]の力があるとはいえ、身体がもつわけがなく、2ヶ月経つ頃に過労死してしまったのだ。


場面は現在の麗牙へ。

麗牙はゆうちゃんの家にいた。ゆうちゃんの妹達は麗牙にかなりなついている。妹達の名前は上から、[ココ]8歳、[ナナ]7歳、[モモ]6歳という。

ゆうちゃんは布団に寝かされている。だいぶ顔色が悪く、うなさている。

無理もない、まだ10歳の女の子が味わう苦労にしてはかなりハードだ。

麗牙がゆうちゃんの両親の足取りに関する手がかりが何か無いかと、ゆうちゃんの家を散策していると、新聞広告の束の中に一枚のA4用紙のサラ金の広告が目に止まった。

なにやら赤マジックで丸がつけられている。

[巨万きょまんファイナンス]という店名。

麗牙は直感で妖怪が絡んでいる事を感じた。

麗牙「(………サラ金?いや、闇金か?ゆうちゃんの両親もお金に困っていたのか……?)」「(とりあえず行ってみるか)」

麗牙「………じゃ、ちょっと俺出かけてくるから(*´ω`*)ゆうちゃん起きたらお粥が冷蔵庫に入ってるからね♪ココ、ナナ、モモのご飯もそっちの部屋に作ってあるから食べてね(*≧∀≦*)」

そう聞いて三人の妹達は満面の笑顔になり喜んだ。

ココ「麗お兄ちゃん有り難う♪ヽ(´▽`)/」

モモ「私達も行きたい(*´∀`)」

ナナ「うん♪ヽ(´▽`)/麗兄ちゃんについてく♪ヽ(´▽`)/」

そう言われて、麗牙は焦りながら言う。

麗牙「だ、駄目だよ!Σ( ̄□ ̄;)ちゃんとゆうちゃんの側にいてあげて( ; ゜Д゜)」

ナナ「…そ、そうだよね(。>д<)お姉ちゃん置いてく訳には……」

ココ「うん(。´Д⊂)麗お兄ちゃん、すぐ帰って来てね!」

モモ「麗兄ちゃん、ここに住もうよ(ノ´∀`*)」

麗牙はドキッとした。麗牙はあまり人に優しくされた事がない。

麗牙「!!…い、いや俺は……(。>д<)」

麗牙は動揺を隠すためにそそくさと、ゆうちゃんの家を出た。


[巨万ファイナンス]

埼玉県戸田市にある戸田公園駅の駅前にそのサラ金業者はあった。

麗牙は駅前の喫煙スペースから[巨万ファイナンス]が入っているビルを見上げる。8階建てビルの8階部分にその業者は入っていた。

窓には[いつでも助太刀♪現金貸し出し]の垂れ幕がある。その下には電話番号が記されている。麗牙はその番号に電話を掛ける事にした。ちなみに麗牙は携帯電話を所持している。連絡先がなければ働けないからである。

麗牙「………電話は苦手だ(。>д<)なんかゲームで言えばMPを使う感じがする(笑)」

麗牙はしぶしぶ電話を掛けた。


電話の相手「はい。巨万ファイナンスです。本日はどういったご用件ですか?」

麗牙「えっとですね、ちょっとお尋ねしますが、そちらのお客さんで[的場 佑介まとばゆうすけ]さんって、いますよね?」

的場佑介とはゆうちゃんの父親である。

電話の相手「………当店のお客様に関する個人情報はお教え出来ません。…」

麗牙「あ、いや、そういうんじゃなくて…」

電話の相手「………もしかして、同業者の方ですか?」

麗牙「ん〜…ま、そんなところかな(笑)」

電話の相手「なおさら、質問にはお答えできません」そう言って電話は切られた。

麗牙「あ、ちょっと……あちゃー」

立ち尽くす麗牙の後方、少し離れたところに黙ってついてきた[モモ]の姿があった。

モモ「(麗牙兄ちゃん(///ω///)♪優しくて格好いい(///ω///)♪)」


麗牙は巨万ファイナンスに直接行ってみる事にした。

麗牙がビルに入っていくその後ろを、モモが気づかれないようについていく。麗牙がエレベーターの8階のボタンを押したのを確認したモモは階段で8階を目指した。ビルのは8階まで階段で行くのは、6歳のモモにはなかなかキツイものがあった。


麗牙は巨万ファイナンスに入店した。

入り口の受付の女性が明るく「いらっしゃいませ♪」と言ってきた。麗牙はすぐさま、この女性が人間では無い事が解った。店の奥からも数体の妖気を感じる。

笑顔で「どうも♪」と言い奥へ進もうとした途端、店の奥から怒鳴り声が聞こえてくる。

「お前ら〜ノルマ解ってんだろうなぁ!とっとと回収!回収!!」

巨万ファイナンスの社長であるトミーの怒鳴り声だ。麗牙が部屋に入ると、その部屋の人(妖怪)全員が一斉に麗牙を見る。

従業員 [淫乱妖怪 和製サキュバス]だん ぱいん(以下ぱいん)

「いらっしゃいませ♪って………あら、あなた人間じゃ無いわね( ゜o゜)。」

巨万のトミー(以下トミー)「ん…?妖怪のお客さんか……」

麗牙「……いや、さっき電話したものだけど、ちょっと人捜ししてます。」

トミー「あ?客じゃねえのかよ(# ゜Д゜)」

麗牙「あ、迷惑は掛けません。ちょっと知りたいだけです(*´ω`*)」

トミー「何を知りてぇんだ?こっちゃ忙しいんだ!」


階段を登ってきたモモがやっと店舗の前までたどり着いた。



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