第25話Another story 05 とある作者の反省

 これはとある太陽系第三惑星に住む一般人の話である。

 彼は最近WEB小説を書くことにはまっていた。

 なので以後この一般人の事を作者と表現することにする。異論は認めない。

 作者は思うようにアクセス数を稼げない日々が続いているが、それに対して残念に思うことはあっても文句は特になかった。なぜならば力不足を痛感しているからだ。

 物語を考えることは出来る。アイディアもいくらでも出てくる。

 だがいざそれを言葉にしようとすると、すごく難しいのだ。


 まずはものを知らなすぎる。もちろん今まで生きてきたのだ。社会生活を送るのに問題の無い程度の知識はもっているつもりだが、それでは足りなすぎる。

 例えば空港があり、そこに行けば飛行機に乗って遠くに行けることは分かる。では空港にはどんな施設が何のためにどれだけあって、その施設を運営するためにはどんな技能を持った人がどんなシフトで何人くらい必要か?などといったことを詳しく知っている人は少ないのではないだろうか?当然私もよくわからない。でもそれだと空港の描写を細かく書くことは絶対に出来ないのだ。なぜならば作者がわからないのだから。そういった意味で、自分はものを知らなすぎる。本やドキュメンタリー番組などで勉強をするしか無いだろう。


 次に言葉が出てこない。あれなんて言えばいいんだ?これをどう表現するんだ?あれっ、さっきから同じ表現を何回も使ってる……などなど。

 あと文章を作るのが難しい。どうしても言葉が足りなかったり、野暮ったくなってしまったりするのだ。

 これらを解決するために人の小説を読むことが多くなった。……申し訳ないがプロの作家さんのだ。……まぁてにをはすらあやしい作者はまず国語の教科書の方が先かもしれないが、それは……今度ね!

 今まで本を読むときには物語を重視して流すように読んできたが、最近は物語より文章を重視して読むことが多くなった。あぁ、こういう表現方法あったんだ。あっ、このセリフセンスいいなぁ……とか。

 まぁこればっかりは、書いて読んで徐々に改善をしていくしか無いと思っている。

 ちなみに自分には才能が無いから……などと寝ぼけたことを言う気はない。この世に才能などといったものは無く、ただの努力不足だ。才能という言葉は、今まで努力をしてきた人に対する最大限の侮辱であると思っている。ちゃんと物事を考えて経験を積んでいけばそれなりのものは書けるようになるはずだ。いつになるかは分からないが、反省などは特に無い。

 そう……ここまでの話しは全て余談である。

 タイトルにある反省とは一切関わりがない!

 

 ではそんな作者が最近反省したこととは?

 あなたはベ○ーメタルという音楽グループをご存知だろうか?作者はWEBサイトなどで一年くらい前から名前だけは知っていた。海外で人気が出てきた日本のアイドルグループだと。

 そのニュースを見た当時の作者の反応は「あぁ、海外にはこういうグループが無いから物珍しいのかな?」というものであったが、とりあえず某サイトをクリックしてプロモーションビデオを観てみた。

 女の子たちがメタルの音楽に合わせて踊っていた。そして混じりっけなしのアイドル声で歌い出した。

 ……作者はそっとページを閉じた。そして――世界もヒマだな……そう思った。


 そして最近またそのグループの話題がWEB上に載っていた。またかとは思ったが、これだけ何回もその名前を聞くとやはり気になってくる。作者はまた某サイトでプロモーションビデオを観てみる。前回と同じやつだ。

 やはり女の子たちがメタルの音楽に合わせて踊っていた。そしてやっぱり混じりっけなしのアイドル声で歌っている。だが今度は最後まで聴いてみた。……そしてもう一度再生してみる。……あれ?思ったより悪くないぞ……。

 頭に残るキャッチーな歌とパワフルでインパクトのあるダンス。アイドル声にメタルの音楽が妙に噛み合って面白いものになっている。

 気がつくといくつものプロモーションビデオや実際のライブ映像を観ていた。基本は上と同じ印象だ。だがもうひとつ感じたことがある。うしろのバンドが妙にうまくね?

 WEBで検索すると、やっぱり後ろの人達うまいらしい。

 そしてさらに調べると、その後ろのベースの人はこんな雰囲気のコメントをしたとのこと。

 ――彼女たちが頑張っているから、自分たちも頑張らないとと思った。


 ここからは作者の勝手な想像になるのだが、フロントの女の子たちが頑張ることにより、バックバンドも頑張る。多分そのすごいバックバンドが頑張ることにより、フロントの女の子たちも負けないように頑張っているのではないだろうか?


 そこまできて作者は自分の誤りに気がついた。

 実際にちゃんと聴いてみるとみんなが努力をしていて作品として素晴らしい物に仕上げている。もちろん人それぞれ聴きたい音楽は違うのだから、必ずしも良いと思う必要はない。でも作者は悪くないと思う。

 しかし前回は所詮アイドルというレッテルを貼ってまともに聴こうともしなかったのだ。


 偏見からは何も生み出さないし、プライドや変なこだわりは逆に自分の可能性を狭めてしまう。そんなのは当たり前のことだし、今まで生きてきた中で十分に理解をしていたつもりだったのだが……。

 いつしか忘れてしまっていたのか、はじめから理解を出来ていなかったのか……。

 どこかのケンジ君もこう言っていた。

『実直に作っている人がいる。その事を認め率直に触れてみれば、なんであれ新鮮で楽しく受け入れられる』

 ……こんな感じのことは昔からみんなが言っている。

 そう、言葉としては知っていた……。


 人生って難しいよね……。


 ……とりあえずアルバム買ぉ……。


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