第9話予想外の展開(前編)
最後にミルを1階にあるお風呂場に案内する。
1階は他の階とは違い天井までの高さが5m近くある。やっぱり風呂場の天井は高くないと!っという父親のこだわりだった。
2階から階段を使って1階に降りると、目の前には木製のスライドドアが現れる。ドアに近づくと自動でガラガラっとドアが開いた。
中に入ると奥行き7m、幅2mくらいの部屋になっている。
更衣室だ。この更衣室は全体的にレトロチックに作られており、ここにいるだけで不思議と落ち着ける雰囲気がある。
入り口は玄関になっていて、ここで外履きやらスリッパやらを脱いでから中に入る。
中に入ると床は木目調の絨毯が敷かれていて、外履きを脱いでからこの上を歩くとちょっと気持ちがいい。
入り口近くには洗面台があり、お風呂から上がった後にドライヤーとかが使えるようになっている。
その向こう側には棚があり、手前にバスタオルなどの備品、その横に服等を入れるカゴが並んでいる。
更に向こう側には椅子やら扇風機やら体重計やら飲み物が買える自動販売機やらが置いてあり、その向かい側がお風呂の入り口になっていた。
自動販売機はもちろん無料であり、定期的にアサンドが補充をしてくれているらしい。
そして向かい側のドアに近づくと、こちらも自動でガラガラっとドアが開いた。
「ここがお風呂場だよ。部屋にも一応ユニットバスがついてるけど、絶対にこっちの方がおすすめだから、遠慮せずに使ってね」
入り口から風呂場を覗く感じでお風呂を眺めながらミルに声を掛けた。ミルはコクリと頷く。
「それじゃあ、せっかくだしお風呂に入ってみる?」
ミルはもう一度コクリと頷いた。
「わかった。じゃあ僕はリビングに戻っているから、好きなだけゆっくりしてね。着替えはアサンドに頼んでおくから」
そう言うと、シュウトは更衣室から出ようとした。すると、クイッと服の裾を引っ張られる。
「ん?どうかした?」
ミルは特に答えない。こういう時にしゃべれないのって辛いなぁと思っていると、少し上目遣いでシュウトを見ながら、今度はクイックイッっと二回引っ張られる。
…………。
シュウトはまさかとは思ったが、
「あのぉ~……もしかしてだけど。……え~と、一緒に入りたいとかそういう話?」
恐る恐る聞いてみる。
するとミルはコクリ「なんでやねん!!」……と心のなかで全力で叫んでしまった。……心の中でね。
「え~っとぉ~……なんでかな?」
ミルは寂しそうにうつむいてしまう。
「いやっ、決して一緒に入るのがいやだ、とかいうんじゃないんだけど……」
シュウトは慌ててフォローを入れる。まだうつむいたままである。
…………。
「……うん。わかった!一緒に入ろう!僕もミルと一緒にお風呂に入りたいし!」
純度100%の本音をぶちまけた。
するとミルはまだ不安そうな顔をしながらではあるが、コクリとうなずいた。
――う”~ん、なんだか大変な事になってしまった。でもまぁ一緒にお風呂っていってもバスタオルとか巻けば良いんだし、案外大丈夫かな?
……とかそんな考えが甘すぎた事に気が付くのに、大して時間はかからなかった。
シュウトとミルは、着替えを取りに行くために一旦部屋に戻る途中、二階の階段付近でアサンドと出会った。
「アッ、シュウト様。先程はとりみだしてシマイ大変失礼いたしマシタ」
出会い頭にいきなり謝られてしまう。
「いやっ、僕もちょっと説明が足りなかった気がするからお互い様だよ。後でちゃんと説明するから今はちょっと待ってね」
そう言って部屋に戻ろうとするが、
「シュウト様、ドチラへ行かれるのデスカ?」
止められてしまった。
「これからお風呂に入ろうと思ってるから、着替えを取りに部屋にね」
「ソレでしたら、ワタクシがお持ち致しまスノデ」
「あっ、ほんとに?助かるよ。じゃあミルの着替えも一緒に用意してもらってもいいかな?」
アサンドの動きが一瞬止まる。
「……ミル様のお着替えも一緒に、でございマスカ?」
そして自ら答えを導き出したのだろう。両手で頭を握りしめものすごい速さで上下にカクカク動かしながら、
「ハァァァーーーシュウト様がソンナ!フケツ、フケツ……」
と言い残すと、またどこかへ旅立ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます