Answer05

■結果説明■


 設問は、会話文(セリフ)についてと地の文からと、二方向から読み解こうとしています。


 【《問01》描写力があると思う】は意味ないです。単に読んでくださってる作者さんの意識を、ご自分で確認して頂きたかったからです。

 

 【《問02》セリフのみしか書かれていない小説でも問題ないと思う】【《問03》セリフでキャラクターの感情を表せると思う】も個人の考え方ですので、作品を作る上ではどう考えておられようと、大して問題ないのです。

 しかし双方ともYESであり、さらに【《問04》あなたの書いた作品は、会話率が低いと思う】で会話率が高い場合、その作品は描写力が弱い可能性が高いです。


 地の文とセリフを別物として考える方は、少なくないのではないかと思います。

 これは断言できます。違います。


 かなり乱暴な考え方ですが、小説文を『描写』と『説明』に分けるとします。

 この場合、セリフはどちらになるでしょう?

 地の文とセリフを別物と考えている方は、これを描写、それも心理の描写と考えているでしょう。

 しかし説明でもあるわけです。だって『誰々は~と言った』という客観的事実を述べているだけですよね? カギカッコをつけなくても、地の文でそのまま書いても問題ないですよね? 『誰々は~と言った』をカギカッコという記号で省略しているだけですよね?


 ここで【《問03》セリフでキャラクターの感情を表せると思う】の回答です。

 『誰々は~と言った』だけの説明文から、感情が読み取れると思いますか?

 答えはNOです。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例1)

①「今日はありがとう」

 彼女は控えめな笑顔で、別れの言葉を口にした。


②「今日はありがとう」

 彼女はいまにも泣きそうな顔で、別れの言葉を口にした。


 ○ ○ ○ ○ ○


 脳内ボイスをONにして、上記例文を読み比べてください。セリフの印象が全然違うものになるはずです。

 「今日はありがとう」という言葉の印象からすれば、①の場面はセリフのみでも想像できますが、②は無理ですよね? セリフから泣き顔は絶対に想像できません。

 このように、ある程度はセリフのみでも感情を盛り込めるのですが、記号で強弱をつけるのが限界で、セリフのみの感情表現は不可能と思っていいです。

 こう言ってなお可能と言い張る人は、「楽しかったか?」「泣くなよ」など、直接説明するセリフが続くのを想定しているはずです。


 なのでさかのぼって【《問02》セリフのみしか書かれていない小説でも問題ないと思う】は、NO――会話文のみでは小説は表現不可能です。

 可・不可だけを見れば、可能です。

 ですが、説明も全てカギカッコでくくらなければ、なにも表すことができません。キャラクター――架空世界に実在する人間の言動としては、ひどく不自然で不可解で不愉快になります。レコーダー片手にレポーターが潜入取材しているようなセリフを、常に虚空を見ながらいつもつぶやいている人が現実にいたとして、話しかけられますか?

 それを避けようと思えば、動きも感情の揺れも移動もない、非常に限られた状況しか作れません。

 極端なMAX-MINを比べれば、カギカッコでくくった文章のみの文章と、カギカッコが一度も使われない文章。どちらがより小説らしいかといえば、自然な表現が可能な後者になります。


 セリフからの読み取りはここまでです。

 【《問05》『情景描写』とはどういった文章か、説明できる】は、作者さんがどう認識しているかの確認で、意味は弱いです。


 情景描写とはなにか?

 『描写』と『説明』の違いだけでも難しいのに、情景描写となるとさらに難しいです。詳細な状況説明のことだと認識している人もいれば、キャラの感『情』と風『景』が両方合わさった文章と言う人もいます。後者の例を見ても、ストーリーテラーの感情が理解できる……と呼ぶには、かなり贔屓ひいき目な場合もあります。

 キャラクターの心理を窺い知ることができる状況の説明、くらいの理由に収まることが多いように思います。感情は直接的な説明ではなく、雰囲気で掴み取るとか、そういうレベルです。


 同意が得られないかもしれない、完全な個人的見解ですが、これがYES――説明できると言う人は、正直アテにならないな、と感じます。

 ふたつ理由があります。

 まず、上記したように説明が難しいことなので、『本当に理解してる?』という疑問です。


 続いて問題になるのが、判断能力です。これが【《問06》地の文が心理描写と説明文がはっきり分かれていると思う】に当たる――正確に言えばその実行性を見ています。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例2)

①頭上で咲き誇る桜のような顔で、彼女は通学路を足早に歩く。


②朝から陰鬱いんうつだった空も泣き始めた。


 ○ ○ ○ ○ ○


 後に説明する比喩と擬人法使っていますが、この文章、心理描写と状況説明が一体化していると言って、ご理解いただけるでしょうか?

 『咲き誇る桜』なんですから、『彼女』が怒っているとは思いませんよね?

 『空』なんですから、誰かが泣いているわけですよね?

 まぁ、こんな例文を作らなくても、()丸カッコでくくられたセリフで説明は充分なんですが。

 この書き方は、キャラクターが心の中で思ったこと――つまり心理・心情を描写しています。

 しかしセリフと同様『誰々は~と思った』という、神の目で見た客観的事実を述べただけの説明と違うと、誰か証明できますか?

 こんなことを考えていけば、《問05》を簡単にYES――説明できるとは言えないでしょう。



 【《問07》一人称形式文章と三人称形式文章が混じっている】については、描写力の使い方についてです。


 たとえば詩的な描写をする作家がいたとしましょう。

 ところが作中途中で詩的ではなく、えらく直截的な描写を行うようになれば?

 ゴーストライター使ったんじゃないか? と疑うほど、文体が変わることになります。

 なにか明確な理由があるなら話が別ですが、原則として描写方法は同じ作中では変化してはいけないのです。


 ただ《問07》の場合、逆に変わっていないとならないのです。

 ストーリーテラーが変化するなら、その人物の考え方に沿った描写が必要ですよね? なのに変わってないなら、なんのために変化させたの? という疑問が生まれることになります。



 【《問08》あなたの書いた作品には、味の描写をしていない】【《問09》あなたの書いた作品には、匂いの描写をしていない】は、NO――味や匂いの描写があれば、もしかして描写が上手いかも? という内容です。


 情景描写はキャラクターの五感を通します。

 ほとんどは視覚情報です。街の様子、部屋の様子、空の様子が、なにがあり、色がどうであるかといった内容になります。

 次いで聴覚と触覚です。どんな音がしたか。暑いか冷たいか硬いか柔らかいか。意識せずに小説に盛り込んでいるはずです。

 ですが、味覚と嗅覚は、盛り込まれていないことが多いのです。

 味覚はなにかを口にしないと発揮されないので、全体から見た頻度はどうしても下がるため、仕方ない部分はあります。

 ですが匂いを描写されることは、少ないです。頻度しては高くないとならないのですが。

 よくファンタジー作品のザコ敵として出現するスライム。物を溶かすなんて設定が珍しくありませんが。

 すっぱい匂いや刺激臭がする、と描写された作品をご存知ですか? 自分は見たことがありません。

 ダンジョンや地下通路ならば、土の匂い、水の匂い、えた臭いがして不思議ありません。というか普通に入っていくけど、空気よどんでるだろ。

 満開の花が咲いている野原ならば、むせるほど甘い匂いが充満していも不思議ありません。

 描写されていても、せいぜい獣の獣臭、火山や温泉の硫黄臭、死体やアンデッドモンスターの腐臭くらいではないかと思います。

 他に嗅覚を通じた描写がされていたら、上手いかもしれません。



 【《問10》『まるで』『~のような』という書き方が多いと思う】は、状況説明を描写の延長として考えた場合です。正直ちょっと微妙ですが。

 これまた個人的感覚ですが、これを強化しようと思えば、比喩ひゆ表現を使おうとする傾向を感じます。

 そのためになぜ『まるで』『~のような』を質問したかというと。

 比喩には直喩ちょくゆ暗喩あんゆ換喩かんゆ提喩ていゆと種類があります。

 この中で換喩・提喩は、日常的に使っているので、意識しないと気付きません。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例3)換喩(省略表現)

①風呂が沸く ⇒厳密には『風呂桶に溜められた水が温まる』

芥川あくたがわ龍之介を読む ⇒厳密には『芥川龍之介の作品を読む』


(例4)提喩(意味の部分化・全体化)

①花見に行こう ⇒『花』は桜のみを指す。

②手が足りない ⇒『手』は作業を手伝う人間を指す。


 ○ ○ ○ ○ ○


 これらは自覚なく使っている場合がほとんどでしょう。

 なので意識して比喩表現を使おうと思えば、多くは直喩になります。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例4)直喩

銀杏いちょう並木の足元は、まるで黄色いカーペットを敷いたようだった。

はやきこと風のごとく。


 ○ ○ ○ ○ ○


 言葉どおり、直接的なたとえです。

 しかし直喩ばかりだと、語彙に貧弱さを感じるわけでして。

 そういう時に使われるのが暗喩――例えていることが読者に理解できる前提の言い方です。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例5)暗喩

①黄色いカーペットを踏みしめて、銀杏いちょう並木を歩いていく。

②彼は風になった。


 ○ ○ ○ ○ ○


 気取ってるとも取られるので、多用は好ましくないですが、直喩ばかりを使って幼稚に見られるよりは、暗喩も使えるほうがいいでしょう。



■改善■


 改善はどうしようもないのですが……

 描写力は、なければつまらない作品になります。

 しかし、あればあるほどいい、というものではありません。よく言えば詩的な、悪く言えば気取った文章になるのです。

 丁度いい塩梅あんばいは、読者個人個人の好みで変わりますし、作者さんが試行錯誤と妥協で見定めるしかありません。


 ただ、他の能力同様、描写力はないよりも、持っていたほうがいいです。

 持っていれば使わない書き方もできますが、ないならその選択ができません。



 それと、作品の会話率に関してですが。

 信頼できるであろうデータを外部サイトから引用しておきますと、大体30%くらいだそうです。

 

 ライトノベルファンパーティー ライトノベルに会話が多いか (東雲長閑)※敬称略

 http://lanopa.sakura.ne.jp/project/kaiwaritu.html


 ご自分の作品の会話率も、フリーで測定できます。


 小説形態素解析CGI(β) (E.N.Nach) ※敬称略

  http://www.ennach.sakura.ne.jp/


 地の文の文字数と会話文の文字数とにわけてくれるので、これで算出できるかと。

 ただし、「」でくくられた会話のみしか認識できません。『』や()の場合は地の文扱いされます。

 またセリフ内で改行がある場合も確かめていませんので、参考程度に。

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