Answer01

■結果説明■


 【《問01》ご自分が考える『上手い小説』を、誰かに説明できる】【《問02》ご自分が考える『下手な小説』を、誰かに説明できる】

 これは直接は関係なく、前書きに書いた誤解の明確化です。

 『上手い小説』=面白い小説、『下手な小説』=面白くない小説、と考える人は意外といます。

 ですが違います。別の評価基準です。

 でなければ『文章は下手だけど面白い』『文章はすごいけどなに語ってるのかわからない』という評価はありえないわけですから。

 あと、面白い・つまらないは見る人によって違いますが、上手い・下手は大抵の人が理解できます。しかも基準はおおよそ変わりません。


 ここからが本題です。

 悪い文章例としてよく挙げられるものについて、認識しているか否かの判断です。


 【《問03》ご自分で書いた作品では、長い一文よりも短い一文が読みやすいと思って書いた】

 長文は嫌われる傾向にあるのは、説明しなくてもおわかりになるでしょう。

 説明過多になりやすく、読みにくくなるからです。

 あくまで基本原則であり、どうしても長い文章が必要となる場合もあります。ですがちゃんと理解している人は工夫できますし、時々書く程度で済みます。



 【《問04》ご自分で書いた作品では、同じ言葉が続かないよう意識して書いた】のように、一文内や前後の文で、同じ言葉や言い回しが出てくる『重複』は、悪文の代名詞として扱われます。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例1)

①某通販サイトの小説の『架空の本のタイトル』のレビューの内容は偏っている。

②彼はとても背が高くて、とても度量が深く、とても優しい人物だ。


 ○ ○ ○ ○ ○


 同じ副詞(この場合は『の』)を続くと幼稚に見られます。

 小学生が主人公の一人称小説の地や、子供のセリフとしてならアリでしょうが、作者さんやキャラクターはアタマが弱いと捉えられるでしょう。


 ちなみに例外もあります。同じであることを強調する場合や、印象的な文章にしたい場合、わざと同じ文字を置くやり方もあります。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例2)(※滅多刺し)

 刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す――


 ○ ○ ○ ○ ○


 時々使う分にはともかく、多用すると『ポエマーw』などと呼ばれますが。



 以降は文章の接続、流れといったものを、どれだけ意識しているかの判断です。

 リズムがなく、読むのに考え込んだり引っかかる作品は、下手な作品とされる傾向がありますから。

 実際のところ、作家さんの癖もあるので、YES・NOの二択で一概に上手い・下手を判断することはできません。短所が気にならないほどの長所があるかどうかは、これだけでは判断できません。ひとつの内容だけで判断するのも危険で、一要素でしかありませんが、YESがある方は要注意と思ったほうがいいでしょう。

 少なくともそれは、あなたの弱点なのですから。



 【《問05》セリフが多い】について。

 小説は文字だけでしか表現できないので、セリフは誰の発言か説明する必要があります。

 いちいち誰が言ったセリフかを説明するのは、正直面倒です。

 セリフが多くなると、そういった無意識の真理が働きやすくなります。

 そんな作者さんが三人以上同時に登場するシーンを書いたら、どうなるでしょう?

 とても読みにくくなります。

 しかし、それでも『読みやすい』と評価されている作品もあります。


 ハッキリ言います。

 それは流し読みされているのです。

 『読まれていない』と捉えたほうが正しい。

 『なんとなくでも頭に入るから問題ない』とおっしゃる方もいるかもしれません。読者さんが言うのであれば構いませんが、作者さんが言うのは論外ですが。読まれてナンボの小説に対し、『自分の書いた文章を読んでくれなくていい』などという発言をする作者は、モノ書きとして終わってるとしか思えません。



 続いて【《問06》擬音語のみの行が多い】。

 擬音語を使えば幼稚という問題ではありません。実際に幼稚と思うかは、読者さんの主観なので。

 注目したいのは、作中・文中でどのように置いているかです。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例3) 

 なにか飛んできた!

 ヒュン! ガキィン!

 振った剣で弾き飛ばすことができた!


 ○ ○ ○ ○ ○


 さて、この文章の擬音語ふたつ、『ヒュン』と『ガキィン』の違いがわかるでしょうか? 風切り音と金属音の違いを聞きたいのではありません。構文上の違いです。

 『ヒュン』が『飛んできたなにか』の音ならば、この文章はおかしい。

 『ヒュン』が剣を振った音ならば、この文章は問題ない。

 そう言って理解していただけるでしょうか?


 問題としているのは、時間の流れです。

 『なにかが飛んできた』後に『ヒュン』と音が聞こえるのは、誰がどう考えても変です。

 時間の流れを意識していない作者さんは、伏線を使うことができずに後付け設定をポンポン入れたり、話の流れをぶった切って回想を入れたりするなど、往々にしてリズムの悪い作品を作ることが多いのです。



 二人以上のキャラクターが出る場面は、技巧の判断でよく見る部分です。

 【《問07》二人以上のキャラクターが登場するシーンにて。セリフとセリフが連結されている部分で、キャラ双方とも三文以上のセリフを使って会話している】は、長文の問題も含んでいる構文能力です。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例4) 

「こんにちは。ここは冒険者ギルドですか? 登録したいのですが、どうすればいいですか?」

「こんにちは。はい、そうですよ。新規のご登録でしたら、こちらの用紙にご記入ください」


 ○ ○ ○ ○ ○


 こういう会話文をよく見かけますが、不自然さを感じない人はハッキリ言ってまずいです。

 ひとつのセリフに『挨拶』『質問1』『質問2』という、違う話題を詰め込んでいるのですから。こういう語り口をする人は、実生活だと『いっぺんに言うな』と言われること確実です。

 それをごく当たり前のことのように、しかも全てに返事すれば、不自然です。

 会話のキャッチボールができていません。キャラAの言葉にキャラBが返答、というのを繰り返すのが普通です。

 二文連続ならありえますが、三文以上はありえないです。一度に三球投げて、受け止めて、まだ三球投げ返すという離れ業をしています。

 主人公と、新たに物語りに登場した冒険者ギルド受付嬢との会話を、自然にしようと思えばこうなります。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例5)

「こんにちは」

「こんにちは」

「ここは冒険者ギルドですか?」

「はい、そうですよ」

「登録したいのですが、どうすればいいですか?」

「新規のご登録でしたら、こちらの用紙にご記入ください」


 ○ ○ ○ ○ ○


 一文一文は短いですが、全体で言えばまだ長い文章です。

 それに、まだ英語の教科書に載っているような不自然さを感じるので、加工する余地があります。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例6)

「こんにちは。ここは冒険者ギルドですか?」

「はい、そうですよ。新規のご登録でしたら、こちらの用紙にご記入ください」


 ○ ○ ○ ○ ○


 元から二文減らしただけでも充分内容は伝わりますし、自然な会話と呼べるでしょう。主人公が新規登録しに来たか理由が判然としないのに、受付嬢が登録手段を教えたのが不自然と思うなら、この後に状況説明やセリフでその理由を追加すればいいだけです。

 こういった編集作業ができていない作品は、下手と見なされます。



 【《問08》二人以上のキャラクターが登場するシーンにて。同じ言葉が続けざまに使われている】は、重複の問題を含んだ構文能力の判断です。

 二人以上のキャラクターが同時に行動する場面を書ける人は、それまでが上手く書けていた人でも、グンと減ります。


 ○ ○ ○ ○ ○


(例7)(※同じ行動をする場合)

①俺たちは駆け出して、家まで走って戻った。

②主人公とAは駆け出して、家まで走って戻った。


 ○ ○ ○ ○ ○


 一人称にしても三人称にしても、誰だって書ける文章でしょう。

 ですが、走り始めは同じでも、別々の経路や行動をするようになったら?


 ○ ○ ○ ○ ○


(例8)(※違う行動をする場合)

①俺たちは一緒に駆け出したけれど、俺はそのまま真っ直ぐに家まで戻り、Aは商店街へ遠回りして歩いて戻った。

②主人公とAは同時に駆け出したが、主人公は家まで真っ直ぐに走って、Aは商店街へ遠回りして歩いて戻った。


 ○ ○ ○ ○ ○


 これは多分、意識しながら実際にやってみないと理解しにくいと思います。

 とにかく『違う行動をする』というだけで、たった一行の文章が、複雑化するのです。一〇〇文字もないのに、『俺』『主人公』といった主語、『戻る』といった述語を重複させず、さらに短い文章を作ろうと思うと、なかなか難しいです。

 これをスンナリ書ける人は、プロ作家でもなかなかいません。こんな話題を持ち出している自分は到底無理です。


 たとえば、仲間と協力して、強大な敵と戦うという展開。

 当然、キャラクターたちはバラバラの行動を行うでしょう。

 別々の行動を上手く書けない人は、ひとりひとり、一手一手の行動を順に書こうとする傾向が強いので、長文化します。

 これを短くしようとすれば、今度は主人公のみをクローズアップして、仲間たちの行動は描かない傾向が強くなります。空気化するのです。

 キャラクターたちを全員活躍させるのは、イコール文章を増やすことです。なのでキャラを空気化させることなく、短い文章でまとめようとするのは、矛盾しているのです。

 この丁度いいバランスを見極めることができる人は、文章が上手いと言っていいでしょう。



 【《問09》移動中の会話シーンで、状況説明が二回以上存在している】は、ちょっと微妙なところです。

 これがないからダメという話ではなく、もしこういうシーンがあり、使いこなすことができている作者さんは上手いかも? という話です。

 移動手段は問いません。徒歩でも馬でも自動車でも電車でも構いません。

 ただし最初の場所⇒(途中の場所)⇒最後の場所と、場所の変化が説明されていることが条件です。


 アドベンチャー形式・ビジュアルノベル形式の、読むタイプのゲームを思い浮かべていただければ、わかりやすいかと思います。

 たとえば自動車の中での会話シーンがあったとしても、使われている背景グラフィックは『車内』ひとつです。

 

 逆を言えば、『車内』でなければならない理由が必要なのです。

 自動車だったら、運転中のドライバーの行動描写と合わせたキャラ説明だったり、風景の変化と一緒にストーリーテラーが目的地への心情を吐露したり、バスジャックされて車内が人間模様の舞台となったり、接触事故しかけた車に乗っていたキャラクターが後々出てくる伏線であるなど、そういうものです。

 これができている作者さんは、スムーズな場面転換や時系列、全体の構成を意識されていると見ていいでしょう。


 付け加えますと、設問が意図するところですが。

 おおよそ乗り物に乗った時(あるいはその場面の冒頭)で、状況を描写するでしょう。いわば平時の説明です。

 加えて、ドライバーがハンドルを指で叩き出したり、都会から田舎へ風景が変わったり、バスジャック犯たちの様子を説明したり、事故起こしかけた車や乗っていたキャラの説明――変化の描写が必要となります。

 だから『二回以上』で問いました。


 二回以上描写があれば、必ずしも上手いというわけでもありません。

 しかし並の作者だと、移動手段(背景グラフィック)を変えても、なにも問題ない書き方をしています。手段どころか出発前・休憩中・目的地到着後の停止状態でも問題がない場合があります。

 移動中に山賊襲撃イベントが必要? 休憩中ではいけない理由があるのですか?

 同乗した人々と親睦を深める必要がある? やはり休憩中ではいけない理由があるのですか?

 小説は過不足なく説明されている、という原則が存在するなら、『なんとなく』で書いてある文章は不要なのです。とっとと場面転換テレポートしてもらったほうが、不要な内容が削られて読みやすくなるかもしれません。



■改善■



 特に改善しろとか、そういうことを述べる気はありません。

 この項で語っているのは巧拙――つまり、上手・下手です。

 小説の『面白い・つまらない』を語る気はありませんし、語ることはできません。違う基準の話ですから。

 『面白ければ下手でもいい』とおっしゃる方は、それでいいと思います。『上手だけどつまらない』作品を作る作者さんは、もっと面白くする努力が必要でしょうが。


 ただ、付け加えますと。

 『面白い小説』や『売れる小説』は、努力で作れるとは限りません。

 しかし『上手い小説』は、努力次第で作れます。


 あと、『面白いけど下手』という評価でも、作者さんは満足できるものなのでしょうか?


 思い付く限り、ド下手な文章をワザと作ってみて、普段と大差ないと危険ですよ。

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