第17話

 凛はリズムゲームの筐体の前に立っていた。

 どうやらプレイは始まっているようなので、僕は声をかけずに後ろから見守ることにする。

「スタート!」

 筐体から曲が流れ始める。

 僕はこのゲームを知らないが、どうやら画面奥から流れてくるバーが手前に来た時に、ボタンを押すというシンプルなゲームのようだ。

 バーが奥から流れてくる。数は多くない。おそらくは低級レベルなのだろう。あれなら、誰でも余裕で――

 しかし、凛。意外にもこれをスルー。

(なん……だと……?)

 いや、スルーではない。奴は確かにボタンを押していた……!

 だが……筐体は、反応していない……!

 なぜだ……!

 その答えは、すぐに判明することとなる……!

(こいつ、反応遅えええ!)

 凛はバーが完全に流れきってしまった後にボタンを押している。普通、リズムゲームは、完璧なタイミングならば『perfect』、少しずれていれば『good』、タイミングが悪ければ『bad』や『miss』と表示されることが多い。

 だが、凛は確かにボタンを押しているのに、画面に何も表示されない。ボタンが壊れているわけではない。凛が押すタイミングが的外れ過ぎて、『miss』すら表示されないのだ。

(すげえぞ、一個も掠りもしねえ)

 僕は謎の緊張感で凛のプレイを見守る。

 そして、その結果は――

「れ、0点……!」

 スコア0点。それはつまり、一度も適切なタイミングでボタンを押せなかったということ。

「逆にすげえ……」

 ボタンを押していたことは間違いないので、普通どんなに下手くそでも点数は入るものなのだが……。

 凛はプレイを終えて、後ろにいた僕を振り返る。

「いやあ、充実した時を過ごせました」

「あれで充実してたの!?」

 まあ、本人がいいならいいんですが。

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