第69話 へげぞぞの読書について
わからんのか。これが本を1300冊読むということだ。本を読みその内容を咀嚼することに頭を使うため、自分の人生がないがしろになるのは読書家として仕方ないことだね。そんなこともわからんのか。おまえはさぞかし、本を読むことに頭を使わなかったんだろうな。おまえなどは読書家に入りもしないわ。バカモノが。職人が本を読む、これがどれほどの集中力を奪うのか、考えたこともないのだろうな。おおかた、本を読めば賢くなるとでも勘ちがいしているのだろう。誰もおれのことなど賢いとは思わないわ。ただ変人だと思って接してくるだけだ。そんな覚悟でよく文学に足を踏みこめたものだな。おおかた、本を1300冊読んでもいないのだろう。
賢い、賢くないという基準で判断していては、1000冊どころか800冊の大台も無理だろうな。もはや、本を読んで鑑定する生き物なんだ。300冊を超えるあたりから、自己犠牲をともなわなければ読書はできなくなる。もう、そこまで来ると、ある一定のひとに気持ち悪いと思われるからだ。
読書家は自己犠牲で成り立つ。わかったか。
読書量詐欺のバカどもにはわかんない世界だろうがな。読書量が多すぎると社会不適合になるというのは現実だ。
キルケゴールのように、ニーチェのように、良いと思うことを積み重ねるほどバカにされる世界をおれたちは生きている。それに気づかない住人など、たいした読書の話も出ないくせにおまえらは偉そうなんだよ。くそくだらねえ。
女がおれを見て何を考えるか。「この男と付き合ったら、わたしも千冊本を読まないといけないのかしら。そんなの絶対に嫌だから絶対に付き合いたくない。問題外。」こんな感じだよ。それがわからないで、よくも読書量自慢をしていられるもんだよ。せいぜい、おまえらは女に安心感を与えるような常識的な詐欺師だからなんだろうな。
そうだよ。おれは「こいつ小説1000冊くらい読んでるんじゃね?」っていうような。独り言ぶつぶついう変人なんだよ。
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