第26話 クリスマスの楽しみ方

 わたしにはクリスマスの楽しみ方がある。

 駅前に行って、トナカイに馬車を引かせることだ。赤い服に身を包み、馬車に乗り、移動する。とても楽しい。

「ああ、サンタさんだよ、サンタさん」

 と歓声があがると、腹の底から興奮する。そうだ、わたしは人気者なのだ。みんなに歓迎されているのだ。

「けっ、いちいちサンタの格好しやがってよ。見せつけてるつもりか」

 などと悪態をつく者もいるが、気にしない。正直いって、腹立たしいのだが、気にしないふりをする。あんなやつら、ぶち殺してやりたいが、気にしないことにする。

 だが、世の中には、身の程を知らない連中が大勢いる。

 なぜか、子供たちがわたしのところへやって来て、

「プレゼント頂戴。プレゼント頂戴」

 とねだるのだ。けしからん! まったく、節度をわきまえないにも程がある。てめえら、子供だからって、みんなプレゼントもらえると思ってるんじゃねえよ。なんで、おれがおまえらにおごらなければいけないんだよ! ふざけるな。

 あんまりにもムカつく子供たちなので、無視して、トナカイを鞭で急かす。

 なぜか、毎年、子供どもは、わたしにプレゼントをせがむのだ。いったいどういう教育を受けてきたきたのか、悩ましいものだ。

 わたしのクリスマスの楽しみを何だと思っているのだ。わたしは、おまえたちにプレゼントをやるためこんな恰好をしているんじゃねえ。ふざけるなっていうんだ。

 まったく、世も末だ。

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