第22話 宇宙検索機

 宇宙を検索する検索機があった。

 ぼくは、それを動かして、友だちを検索した。誰一人、検索されなかった。みんな、ぼくの友だちじゃないんだ。

 それで、ぼくは友だち候補を検索した。数えきれないぐらいたくさんの人たちが検索されて、いろんな生命体の名前が並んだ。みんな、ぼくに友好的なやつらにちがいない。ぼくはその中で、いちばん上に検索されたやつを抽出してみた。パラジクロという名前の地球人だ。

 ぼくはパラジクロと手紙をやりとりしたけど、なぜ、彼がいちばん上位に検索されたかというと、それは彼がぼくに彼女を紹介してくれる友人だからだった。これは、この検索機ではいちばん友情が高いと計算されるらしい。ぼくは、パラジクロが紹介してくれた女の子と連絡をとり、付き合い始めたけど、これは本当に愛と呼べるのだろうか悩んだ。

 それで、ぼくは愛を検索してみた。たくさんの愛が検索された。ぼくの彼女が、検索機で悪戯をして、愛を削除してしまった。ぼくは、

「そんなことをしてはいけないよ。この検索機は宇宙の存在すべてを検索できて、操作できるんだから、危険なことをするなら、きみとは絶交だ」

 とぼくはまくしたて、彼女を殴って追い払った。愛がなくなったので当然だ。新しく、愛を作り出さなければならない。でも、どう検索すれば、それができるのかわからない。ぼくは、愛の生成で検索してみたが、愛がすべて削除されているので、一件も検索されない。

 しかたないので、慈しみを検索してみたら、また、たくさんの慈しみが検索された。ぼくは、慈しみのある人に、「愛を複成する方法」を聞いてまわったが、ある人が「神さまの中にはすべてがある」と教えてくれた。

 ぼくは神を検索した。たくさんの神さまが検索されたけど、ぼくはその最上位に検索された神さまに、愛を複成する方法を手紙を送って聞いてみた。そしたら、神さまが「検索機の履歴から復元できるよ」と教えてくれた。おかげで、ぼくは愛を復元できた。愛が復元されたので、また彼女に会った。そしたら、彼女は、

「わたし、とってもとっても冷たい毎日を最近、すごしていたの。あなたが会いに来てくれて、心がきゅんきゅんする」

 といっていた。ぼくは、彼女に二度と検索機をいじらないことを約束させたが、彼女は、

「この検索機で黄金を検索して、ドラッグすればむっちゃ大金持ちになれるやん」

 とかいっていたけど、

「本当に大切なのはお金じゃないよ。もっと大切なものを探すためにこの検索機は使うんだ」

 とぼくがいったら、彼女が、

「命を検索して削除すれば、この宇宙から生き物がいなくなるん?」

 というから、ぼくはなぜそんな悲観的なことばかりにこの検索機を使いたがるのか不思議でしょうがなかった。

 それで、ぼくは、悲観を検索して削除した。

 そしたら、彼女が、思い出を検索した。たくさんの思い出が検索された。検索された思い出は、未来から見た思い出も含まれており、彼女はそれを閲覧しながら、涙を流していた。

「死を検索して削除したら、みんな不死になるん?」

「そうだよ」

「それじゃ、やろうよ」

「でも、不死って幸せなのかな?」

「老いも検索して削除したらええねん。老いと病いと死と苦を検索して削除したらええねん」

「試しにやってみるか」

 ぼくは、老いと病と死と苦を検索して削除した。

「これで、みんな無敵やん」

「なんだか、いいことをした気分だ」

「あと、欲しいものは何かなあ」

「ときめきが欲しいよ」

「それいってみよう」

 ぼくはときめきを検索した。たくさんのときめきが検索された。ときめきをコピーして、彼女にペーストする。彼女がきゅんきゅんしている。

「この検索機があったら、宇宙を好きなように編集できるやん」

「ある程度はね」

「ほな、エロエロにしてやろう。ぐふふふふ」

 と彼女がいって、エロを検索したが、この検索機は十八禁はフィルターがかかっているみたいで、一件も検索されなかった。

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