第20話 コカコーラ
目の前に、コカコーラのペットボトルがある。泡立っているが、実は中身は、コカコーラに見えて、コカコーラではない。醤油なのである。まちがって、コップに注いで、ごくりと飲もうものなら、それは上も下もとりつかない大惨事になるはずである。
この、わざわざ、コカコーラと醤油を買ってきて、いたずらをしかける僕も僕なのだが、ひっかかる八重三やえぞうも八重三なのである。
僕らの友情とはこのようなしのぎ合いの上に成り立っており、本当に健康を害したらどうするんだ、などと考えていると、この世界観に酔うところがある。醤油を飲まされる方はたまったものではないが、飲む前に気づけば、八重三の勝ちであり、僕はコカコーラ代と醤油代をみすみす損した間抜けになるのである。
これが、僕らの青春であり、人生であった。わかるものにしかわからない。このコカコーラの仕かけが僕の青春の最大重要事であったことは、証拠として残しておかなければならない。何やってるんだって。遊んでるんだよ。真剣に。生きているんだよ。真剣に。
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