第18話 廃車置場
暑い。八月三十日である。夏休みも終わろうという児童、生徒にとっては一大事件である今日この頃。廃車置場で、幼女が捨てられた自動車の中に入って、暑さに耐えている。
「暑い」
日中の日照りの中、壊れた自動車の中に入っていれば、汗が滝のように垂れるのもいたしかたないのが現実である。幼女は、廃車の中でたたずんでいた。
「この秘密基地は、暑い」
この廃車置場は、幼女が見つけた二番目の秘密基地なのだけれど、あまり、夏休みを快適にすごすには向いていないようだ。最初の秘密基地、もう誰も使わない電話ボックスの中というのも最悪で、秘密基地のくせに、中が丸見えで目立ってしかたないし、同じく、暑いので、蒸し暑くて死にそうに暑いので、他の場所を探してみたのだが、新しい秘密基地であるこの廃車の中も、あまりいい基地とはいえなかった。
幼女はそのまま、廃車の中に籠城し、雨露をすすって生きながらえ、老婆になるまで隠れ住んだ。老婆は死に際してひとこと、
「どうせ秘密基地をつくるなら、涼しいところがよい。廃車の中など最悪じゃ」
といったと伝えられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます