第10話 言葉の壁その3のつもりで

「全員、集合だ」

 宇宙探検隊八名は再び新たな未知の惑星に着陸しようとしていた。

「まったく貴様らはたるんでおる。最近の貴様らの成果といったら、それはひどいものだ。これが栄誉ある宇宙探検隊のものだとはとても信じられない。嘆かわしいかぎりである」

 隊長はつばを飛ばしながら、着陸前の気合入れをしていた。

「しかし、それでもまだ我々は貴様たちに期待しておる。我々は一度や二度の失敗であきらめることなど決してない。ひとつでも多くの異星種族の文明と交信すべく、努力を怠ってはいけないのだ。いいか。同じ失敗をくりかえしてはいけない。翻訳機械をもっていったのに手話だったんだとか、錯覚で会話しているからよく分からなかっただとか、そんなことは二度とあってはならないのだ。どんな手段を使ってでも、彼らと交信するのだ」

「はい、隊長」

 七人の隊員は声をそろえて返事をする。

「そこで今度は新型の翻訳機械を用意した。これは視覚、聴覚の両方に対応して意志の伝達が可能であり、錯覚補正機能までついている」

「おお、これがあれば、もう万全ですね」

「そうだ。もう何があっても安心なのだ。よし、それではいくぞ。交信が成功するまで、決して引き返してはならんのだ」

 こうして、宇宙探検隊は新たな惑星、マゼララン星に着陸したのだ。


 マゼララン星の平原には、知的生命体とおぼしきものが数体うごめいていた。

「こんにちは。我々は地球からやってきました」

 隊員が翻訳機械を使って話しかけた。しかし、何の反応もない。

「我々はあなたがたと友好を結び、お互いの平和に貢献したいと思っています。どうか、返事をしてください」

 しかし、やはり反応がない。なぜだ。宇宙探検隊の機械ではマゼララン星人のことばを翻訳できないのだろうか。

 よく見ると、マゼララン星人はそのぶよぶよした頭をぱかっと開いて、なかから神経を飛び出したりしている。

 マゼララン星人はお互いの脳の神経を直接つなぎ合わせて、直接神経伝達によって会話をする種族だったのだ。

 非常に友好的だったマゼララン星人は、宇宙探検隊と会話するために、その頭蓋骨を次々と叩き割っていった。

「ぎゃー」

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