第3話 MAYBE BULEを聞きながら

 作家になるのが夢だった。でも、デビューできないまま、歳をとってしまった。

 小説の賞は、何が面白いのかもわからない駄作が受賞していく。おれのネットの知人たちは、その駄作よりおれの作品がつまらないのだと貶してくる。おれはやるせない。

 久しぶりに、ユニコーンの「MAYBE BLUE」をくり返して聞く。ユニコーンの歌の中で、このデビュー曲だけが浮いた大衆迎合なポップソングである。おれは好きな歌なのだが、この歌を聞くのが今の自分にはふさわしいのではいかと考えて、ひたる。

 奥田民生は、デビューするために、信念を曲げて大衆迎合な歌「MAYBE BLUE」を作ったのだろうか。その時、どれほど、屈辱を感じたか。どれだけ世界を恨んだか。どれだけ絶望したか。

 その努力は。その信念は。その技術は。

 おれは「MAYBE BLUE」をくり返し聞き、欝なので涙を流す。

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